2-7.精神看護学領域 Feed

2022年8月25日 (木)

8月20日(土)「夏のオープンキャンパス」が開催されました。

こんにちは、看護学部の精神看護学(こころのケア)領域です。

「夏のオープンキャンパス」では、『自分らしさを活かし人とつながる~人と関わる時の自分のクセを知ろう~』という内容で、高校生のみなさんに20分の模擬授業をしました。

看護というのは、こころのケアでなくてもケア者と患者さんという人間同士の交流によって発生してくる現象です。ロボットに看護はできません。そのため、私という人間が相手に対しどのように関わるのか・存在するのか?という私自身が、癒しの道具となることを探求する学問でもあります。それには自分がどのような人間なのか知っておく必要があります。私はいるだけで相手を癒す花のような人間ですか?知らない間に相手を傷つけやすい刃物のような人間ですか?(しかし、つかいどころを知っていれば刃物はとても有意義な道具です)。

そこで、今回は自分の情動に関する傾向を探るためにEQS(エクス)という、対人関係の力・自分自身を見る力・状況に対する力を測定する試験紙を用いました。

 

模擬授業のスケジュールは以下の通りです。

・こころのケアについて

・EQSに回答

・点数を計算する

・自分の情動に関する強み・弱みの傾向を知る

 

私も、今回の模擬授業にあたってEQSを回答しましたが、対人関係力が一番低い点数になりました。こころのケアの専門家なのに、対人関係能力が低いとは面白い結果です。いや、それだからこそ「対人関係って難しいなあ」という思いがあり、人間対人間で行う癒しの関係を追及しているのかもしれません。

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精神看護学領域 清水隆裕

2022年6月28日 (火)

6月16日 浜松湖東高校で模擬授業をさせていただきました

6月16日、精神看護学領域の松本助教と私が、浜松湖東高校へ模擬授業に行ってきました。

松本助教は、浜松湖東高校の卒業生ですので、母校に戻って後輩に語るというありがたいシチュエーションになりました。

模擬授業の大まかな内容は以下になります。

1.看護系の職業のなりかた

2.大学と専門学校の違い、特徴

3.看護師の1日の仕事の流れ

4.大学生になったら学ぶこと

5.4年間の思い出

6.模擬授業「発熱時の看護」

7.学校選びのポイント

8.聖隷クリストファー大学の特徴

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看護系の職業は看護師だけではありません。保健師や助産師、養護教諭などもふくまれます。特に、この保健師や助産師、養護教諭になる方法は、進学する学校によって進路コースが変わりますので、高校生の皆さんは、その学校で得られる国家試験受験資格をきちんと調べておきたいところですね。聖隷クリストファー大学は保健師、養護教諭課程は選択制になっています(ただし一緒にはとれません)。助産師課程は卒業後、助産学専攻科に入学(受験が必要)し、1年の修業年数を経て助産師国家試験の受験資格が得られます。

看護系の学校の選択は、立地条件、偏差値、学費、ブランドだけでなく、自分が得たい国家試験受験資格が取得できるかも大切な視点になってきます。学校選びの際はぜひ注目してみてください。

 

  精神看護学領域 清水隆裕

2022年3月 7日 (月)

精神看護学実習の学内演習:教員とのセッション

精神看護とは、疲れた・もしくは病になったこころを癒すという技術、テクニックを想像しがちです。しかし、その根本にあるのは同じ人間としての人格的交流です。聖隷クリストファー大学の精神看護学領域では、学生にその点を大切に伝えています。下の図でいえば、階段を上りテクニックを習得した立派な看護師を目指すのではなく、階段を下りて同じ人間として出会える場をめざすのです。この「私も、病人も同じ弱さを抱えた人間だ(同じ人間)」という感覚が育っていないと、ただのケア者が病人に与えるテクニックの押し付けになってしまいます。

学生のうちは、教員を専門的な科学的知識を持った強者として体験しやすいです。その教員(強者)-学生(弱者)関係ですが、その感覚のまま実習に出るとケア者(強者)-病人(弱者)として再現されやすくなります。そのため精神看護学実習では、たとえ教員であっても学生と同じ人間だよというメッセージを込めて屈託のない意見交換をします。その中で、学生は次のような質問を教員にします

「なんで教員になったんですか?」「看護師で働いたときの一番の失敗を聞かせてください」「趣味は何ですか?」「家庭円満の秘訣を教えてください」などです。

教員は、人間として取り繕うことなく、一つ一つ答えていきます。

すると学生は「先生ってのはもっと偉い人だと思っていました」とか「もっと勉強ばっかりしてきた人かと思っていました」と語るようになり、教員=強者だ、という幻想から少しずつ解放されます。その時、「私も教員もただの弱さを抱えた人間だ」という感覚の醸成、すなわち、同じ弱さを抱えた人間と出会うために階段を下りる体験を養っているのです。

この感覚、体験をしっかり養っておくと、実習に出たときに「患者さんを救わなくてはならない」という考えから、「同じ人間としてまず共にいる」という自然体の行動がとれるようになっていきます。

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精神看護学 清水隆裕

 

                  

2021年11月 8日 (月)

オンラインオープンキャンパスで心理に関わる専門職に関する講義をしました。

11月6日(土)に、心理に関する専門職について高校生に向けて講義をしました。今回はコロナ禍ということもあり、残念ながらZoomを用いてオンラインでの講義になりました。下の写真は、大教室に教員3名(看護学部1名、社会福祉学部1名、リハビリテーション学部1名)と事務職員が1名集まってオンライン中継しているところです。

精神看護学領域に所属している私は、精神科の看護師が仕事として実際に何をやっているのか、という内容と、こころのケアに関する専門職に共通する心構えのことについて高校生にお伝えしました。

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こころのケア・精神科看護師というと、こころが苦しんでいる人がいて、その人に支持・受容的に関わる、というイメージがあると思います。それは間違いではありませんが、その前提として、自分が相手にとって安心・安全であるのか?という自分の存在の仕方自体が問われているのです。(簡単に言えば、いつも不機嫌・怒っている人が、小手先で支持・受容的に接しても逆に困ってしまいますよね)。病と闘う患者さんにとって、安心安全な存在でいるためには、どのような自分であればよいのでしょうか。そして聖隷クリストファー大学の精神看護学領域では、相手を癒す手技・手法ではなくこの自分がケア者としてどう生きるのか?どのようにそこにあるのか?という問い自体を特に大切にしています。この問いは、高校生や学生だけでなく、今の私自身にとっても常に難しい課題として、常に目の前に立ちそびえています。こころのケア者である限りその課題が解決することはないでしょう。

このような、内向的思考、哲学的問いは、実は聖隷クリストファー大学の建学の精神につながっています(詳しくはこちら)。興味がある方は、聖隷クリストファー大学で一緒に、ケア者の存在の仕方を考えてみませんか。

 

                              精神看護学 清水隆裕

2021年10月29日 (金)

3年次生から領域別看護学実習始まります。

聖隷クリストファー大学看護学部は、3年次生の秋から4年次生の夏にかけて領域別看護学実習に出向きます。写真はその実習オリエンテーションの様子です。みなさん、久しぶりの臨地実習ですので緊張している様子が伝わってきますね。

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領域とは、急性期・慢性・老年・母性・小児・精神・在宅と、選択者には公衆衛生を加えた7~8領域のことです(詳しくはこちらをご覧ください)。それぞれ、2~4週間、看護学生として病院や施設を訪れ、実際の患者さんや利用者さんに対して、看護実践しながら「看護とは何か?」という学びを深めていきます。

実習最初は、みんな不安や緊張でいっぱいです。しかし患者さんや現場の看護師さん、教員、チームの学生との交流では、うれしいこと、楽しいこともたくさんあります。当然、つらいこと、困ったこともたくさんあります。そのような様々な体験を通して看護師のこころを養っていくのですね。

 

ちなみに、精神看護学実習では精神科病院で実習を行います。

一日の流れはおおむね以下の通りです。Image2_2

精神科病院にいくのは初めてという人が多いので、学生は特別緊張していますが、2週間後は「とても楽しかった」とすがすがしく実習を終える人がほとんどです。

 

文責 精神看護学 清水隆裕

2021年5月25日 (火)

精神看護学実習がんばってます

精神看護学実習では精神科に伺い、こころの病を患った人たちに対してこころのケアという視点で看護を思考したり、看護実践する実習です。最初は学生もこころの病をイメージできずに、不安緊張でいっぱいです。しかし、実習でお会いする患者さんたちは、「優しかったからこころの病を患ってしまったのではないか」と思わせてくれるように、学生を歓迎してくれます。むしろ学生がこころのケアを受けて帰ってくるのです。

以下 学生から高校生の皆さんへのメッセージです。

ーー精神看護学実習に関して高校生に向けて一言ーー

A学生「はじめは、どのような方とお会いするのか緊張でいっぱいでしたが、振り返れば非常に楽しい実習でした。」

B学生「病棟看護師さんが、とても丁寧に学生の話を聴いてくれたので、とても安心して実習ができました。」

 

今はコロナ禍ですので、実習に行けない日もあります。

そのため精神疾患にかかわる映画を見たり、臨床経験の長い看護師さんの語りを聴いたりしたうえで、精神看護に関するセッションをして学びを深めています。
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文責 精神看護学領域 清水隆裕

2021年2月 5日 (金)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その3 「地域包括ケアについてのPBL(課題解決型学習)」

「地域包括ケア看護論」では、7回にわたって事例学習を行いました。学習目標は、「健康上のニーズを抱えながら、今後も地域で暮らしていくことを希望する事例について、生活者の視点から地域包括ケアについての理解を深め、その中での看護の役割・機能について考える」です。

地域で困り事を抱えて生活する高齢者、障がい者、母子の事例について、療養者本人とその家族の生活の理解や支援方法を考えるグループ学習を、PBL(Problem-based Learning)で行いました。 PBLは、「課題解決型学習」とよばれる学習方法で、学生自身が課題を見つけて、答えのない課題を解決するためにICTを活用して自ら調べ、調べたことを整理して思考する力を身に付けるためのアクティブラーニングの方法です。授業終了前に各グループで学習における不明点を明確にして、次回に向けての学修内容・方法を決め、次回授業時に各自が学習してきたことをグループ内で報告しあい、自ら学習課題を到達させる形で進めました。

新型コロナウイルス感染症予防のため、PBLは3教室に分かれて、グループ間・メンバー間で距離を確保し、換気を行いながら実施しました。学生は各自が個人用PCを持参し、Googleスライドを用いて画面共有を行いながら話し合い、発表に向けての成果物の作成を行いました。

PBL風景

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PBLによって、「療養者の問題は、1人の問題ではなく、周りの人との人間関係や物理的環境に左右されると分かった」「人の捉え方・強みと感じる部分がメンバーで異なり、捉える人の価値観や経験で変わってくるので、複数で考えることは大切だと思う」「その人の持つ強みは、いかなる状況でも強みではなく、弱みにもなりえると気づいた」などの学びが得られました。そして各々のPBLでの学びを、他の事例を担当したグループメンバーに発表し、発表を通して学びの共有が図られました。

最後は、実際に地域包括ケアを実践されている、川根本町地域包括支援センター保健師の池本祐子さんから、事例に対して実際にはどのような対応を行うかについて、講義していただきました。

池本さん講義風景

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池本保健師さんから、「生活者本人がどんな生活を送っていきたいのかを引き出し、それを前提に支援していく」「対象者に一人ではないことを伝えることが大切」「実生活で地域包括ケアについての問題に直面した際にも、持ち合わせている知識をベースに、一生懸命に対象を理解して、問題を解決する方法をともに見出す力を深めてほしい」とお話しいただきました。

学生は、授業後の感想として「池本さんのお話から自分達では考えもしなかった新たな発見ができた」「できないことなどマイナス面に焦点をあてがちだが、強みを積極的に見つけ出して、想像力を働かせていきたい」「対象者の尊厳ある暮らしを守っていけるように、対象者に寄り添って、押し売りにならない援助が大切だと実感した」など述べていました。

 

3回にわたり「地域包括ケア看護論」について看護学部ブログで紹介してきました。今回の学びを活かして、「地域包括ケア」の視点から看護を実践することを大切に、次年度以降も学び続けて欲しいと思います。

文責:豊島由樹子

2020年12月16日 (水)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その2 「地域包括ケアをつくる“人とのつながり”」

10月に続き、11月の「地域包括ケア看護論」についてのご紹介です。地域包括ケアの基本的な考えや、地域で暮らす障がい者・児や認知症の方の生活について教員から学んだ後、6,7回目の授業では「地域包括ケアの実際」として、障がいをもつ当事者の方、そのご家族から、地域で暮らし続けることについて直接お話をうかがいました。

NPO法人地域支援ネット「ゆう」障害者指定居宅支援事業所の理事長である杉本和美さんから、「傷病を抱えながらの生活・社会活動」についてお話しいただきました。杉本さんは、事故により頸髄損傷となってからの当事者の心理、在宅での生活、障害の受容などについて体験を交えてお話しくださり、人生の先輩として思い悩むことの大切さについても教えていただきました。

ご自分の意志を強く持たれている杉本さんの生き方に感銘を受けて、学生達は誰にでも可能性があり病気や障害が妨げにはならないこと、相手を尊重して寄り添い、相手の立場にたって気持ちを汲み取ることからうまれる人とのつながりや社会とのつながりの大切さについて、学びを得ることができました。

 

授業風景  (杉本さん)

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また、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ/たけし文化センター連尺町の理事長、久保田翠さんは、知的障がい者の息子さんへの自立支援活動から、知的に障がいのある人が自分を表現する力を身につけ、文化的で豊かな人生を送ることの出来る社会的自立と、その一員として参加できる社会の実現を目指す活動についてお話しくださいました。障がい者の存在や行為自体を「文化・芸術」として捉えて、人間が本来もっている「生きる力」「自分を表現する力」を見つめていく場の提供、障害のある人が街中で様々な人とのつながりの中でその人らしく生きていける生活環境づくりについてなど、これまでの障がいの捉え方を揺さぶられるようなお話でした。

久保田さんの「障害はその人についているものではない。私と貴方の関係の間にあるもの。」という言葉に、多くの学生たちは自分が障害という固定概念に囚われていたこと、自分では気づけなかった偏見や価値観に気づき捉え方が変化したと、講義後に述べていました。障がいの有無と関係なく、互いの可能性を認め合い、共生できるまちづくり目指すことも、地域包括ケアであるとの、幅広い学びを得ることができました。

 

授業風景 (久保田さん)

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認定NPO法人クリエイティブサポートレッツのホームページのご紹介

・アルスノヴァHP

http://cslets.net/arsnova

・のヴぁてれび

https://www.youtube.com/channel/UCG-34arDueJ9Yep6vIYg8Mw

 

8回目の授業からは、事例を用いたPBL(Problem-based Learning:課題解決型学習)が始まります。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思います。

(写真掲載については許可を得ています。)

文責:豊島由樹子

2020年11月11日 (水)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その1 「私の生活、暮らしを見つめる」

看護学部では、2019年度入学生から一部の教育課程が改定されています。その目的は、地域包括ケアシステムの推進に基づく社会の変遷にあわせた教育課程へと発展させるためです。

「地域包括ケア」とは、様々な発達段階、健康レベル、生活の場にある人々が、医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしく暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が包括的に確保されるという考え方です。そのしくみを「地域包括ケアシステム」といい、誰もが“自分のこと”“家族のこと”ひいては、そう遠くない“将来の日本のこと”として捉える必要があります。

2019年度入学生は、1年次に「地域看護学実習」で、各自治体における地域包括ケアの取り組みについて、地域のロコモーショントレーニング事業参加団体や高齢者サロン活動を行っている住民組織(グループ)に許可を得て参加し、地域で生活している人々の生活・生活圏をとらえて、高齢者の健康管理「自助」や住民相互の「互助」の効果を学び、健康との関連を考える実習を行いました。

そして2年次生になって、健康な対象だけでなく健康上のニーズを抱えながらも自分らしく地域で暮らし続けるための生活・支援について学び、地域に暮らす生活者の視点から看護の役割について考える科目「地域包括ケア看護論」が始まりました。

地域包括ケアの概念を学んだ後の2回目の授業は、「地域包括ケアの基盤である生活や地域で暮らすことについて、自分の言葉で考えてみる」を単元目的として行われました。

科目担当の先生から、履修生の皆さんに「地域に暮らす一市民として私の生活、暮らしを見つめ、考えてみよう」という課題が出され、近くの席の学生2~3人程度で15分ほど話し合った後、その内容をWebClass(本学が利用しているラーニング・マネジメント・システム)に提出してもらいました。

 

話し合い風景

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その後、提出された意見を、自然言語解析の手法を使って単語分割し、語句の出現頻度や相関関係をソフトを使って解析し、授業内で共有しました。

 

①あなたは今の生活をどのように感じてますか? …やはりコロナが生活の中心ですね。

 

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②今住んでいる地域の暮らしを、どのように思いますか?

…暮らしやすいと感じている人と不便を感じている人がいるようですね。

 

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先生からの講評

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各々の、ものの捉え方や考え方・態度は 家庭、学校、地域社会、文化、制度、経済状況などから学習したり規制を受けながら、自分の価値観を築き、自分なりのライフスタイル(生き方、生活様式)が作られていきます。人は社会との関わりの中で、その人特有のライフスタイルをつくり、習慣化された日常生活を営んでいます。人の生活や暮らし方、大切にしていることは、それぞれ異なっています。その1人1人の考えや価値観を大切にした「地域包括ケア」となっていくことが重要ですね。

 

「地域包括ケア看護論」は、他大学にない新しい科目です。本学の在宅看護学、老年看護学、公衆衛生看護学、精神看護学、成人看護学、小児看護学、母性看護学から教員が集まり、「地域包括ケア」において今後、社会を支えていく学生さんにとって必要な内容を吟味精選して科目を構成しています。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思っています。

 

文責:豊島由樹子

2016年6月 3日 (金)

精神看護学実習について

 精神看護学実習に来る前の、精神看護学のイメージは「よく分からない」とか「とっつききくい」とか、とにかく未知の領域であると学生は体験しているようです。実はそんなに未知の領域ではありません。よく学生は「患者さんのこころに寄り添いたい」と思って看護学部に入ってくるのですが、そのこころに寄り添う姿勢を学ぶ実習だからです。

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 患者さんを目の前にすると、私たち援助者は病的なところを治していく視点や科学的根拠・データ重視の客観的視点に偏っていく傾向があります。科学的根拠重視の考え方はもちろん重要です。しかし患者さんが病と闘いつづける大変さや苦悩などの主観的な体験に寄り添える援助者として存在していることも同じくらい重要なのです。

 その客観的な視点と、患者さんの体験している主観的視点がうまく調和して一人前の看護になるのだと思います。精神看護学実習ではその患者さんが体験している主観的な視点を大切にアプローチします。

 具体的な進行としては、患者さんと語り合ったり、レクリエーションを楽しみながら患者さんの主観的な体験やその人らしい生き方を考えたり、また自分という人間がどういう人間かを考えていきます。それはとても骨の折れる作業なので、「精神の実習はレクをやっていて、楽しくて体は疲れないはずだけど、なぜか疲れている」と感じる人が多いようです。それは、患者さんの主観的な体験やその人らしい生き方という、答えがわからないことに身を置き続ける疲労なのでしょう。しかし、看護とは人間を扱っているので答えはありません。そうやって「なぜか疲れている」ときは、学生の看護が磨かれている証しなのだと思います。  

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                          精神看護学 清水隆裕