ファシリティドッグをご存知ですか? ~アドバイザー企画 卒業生を囲んで~
皆さんファシリティドッグをご存知ですか?
それはストレスを抱えた人々に伴い、愛情と安らぎを与えるように血統をさかのぼり吟味され訓練された犬です。日本には認定NPO法人シャイン・オン・キッズの2頭しかいません。
病院では、苦痛と不安の中でストレスにさらされている子供たちの部屋を訪問し、子供に体を触ったり撫でてもらったり、一緒に添い寝をすることもあるそうです。
写真提供:認定NPO法人シャイン・オン・キッズ
http://sokids.org/ja/programs/facility-dog/
本学卒業後、脳神経外科および精神科病棟にて計8年の臨床経験の後、渡米し訓練を受け、現在は看護師の資格を活かして認定NPO法人シャイン・オン・キッズに所属して、常勤のファシリティドッグのハンドラー(ボランティアではなく臨床経験のある看護師)として県立こども病院で活躍している皆川誠一郎さんが、ファシリティドッグのヨギを伴って来校してくれました。
入院中の子供たちは、「ヨギがいるから頑張る。また会いたいから」と苦痛を伴う検査や手術にヨギを先導して向かい、伴うご両親はそのような子どもとヨギのありよう深く慰められるそうです。皆川さんと暮らしているヨギは自分のことをスタッフだと思っているようで、看護室で看護師がカンファレンスをする際に、当然の様にラウンドテーブルに一緒に座っているそうです。看護師たちも癒されます。
えっ?本当に犬が来てるョ・・・
事前にアナウンスをしていたものの、授業や演習を終え、半信半疑で集まるアドバイザーグループの学生たち。
「えっ?何で?犬が教室にいる・・・」。
通りすがりの学生たちも何事かと教室を覗きこんでびっくり。グループ以外の学生も招き入れ、皆川さんを囲んで講演と懇談の時を持ちました。
学生たちは、ファシリティドッグとその働き、ハンドラーとしての生活、臨床でのエピソードを交えながら、皆川さんの学生時代の思いや悩み、家族を抱えながらの臨床の現実の中での闘いと苦悩、そしてハンドラーをめざし渡米するに至る経過に関する話を興味深く聞いていました。
入学して看護を学び始めたのはよいけれど、実習や演習、次から次へと出される課題で、自分を振りかえるゆとりもなく慌ただしく流れて行く毎日。周りについてゆけなくなるのではないか・・・、本当に自分は看護師に向いているのだろうか?と人知れず不安の中で悩んでいたり、看護の勉強に対する意欲を失いかけている学生にとって皆川さんは、まさに雲の上の先輩。
「目的」と「手段」をはき違えるとしんどくなるよ
「実は僕も全く同じでした。勉強やる気なかったし、やらなかったし・・・。不安であせりながらもやれなかった。配属先も全く希望通りにならなかった。でも、とりあえず辞めないでやっていた。今から思えば全部無駄になっていないし、繋がっている。看護師になることを目標にしすぎるからしんどいんじゃないかな。自分の思いに正直に従うことも大切かなぁ」と皆川さん。
ヨギとの交流も楽しみながら、時に静かに、時に和やかに質疑応答を繰り返している皆川さんと学生たちでした。
看護資格を得ることは単なる「目的」ではなく、自分と人を活かしながら、より自分らしく生きるための「手段」であるという視点と意味について共有しました。学生時代と変わらない明るくパワフルな皆川さんと、ヨギとの交流で癒され、自然な笑顔の学生たちでした。