2018年度海外研修(シンガポール)参加学生の声②
~施設・病院見学について~
私たちは、研修の中で、社会福祉施設と病院を見学しました。はじめに紹介する施設は、SPDです。SPDは、「全ての人が受け入れられる地域社会づくり」を目標に、地域社会に根ざしたリハビリ、雇用サービスの提供をはじめ、障害の有無に関わらず全ての人が豊かに生活が送れるよう、社会に意見を発信する役割を担っています。実際に利用者の方が書籍の製造やマラソン大会で配布する参加賞のパッキングを行う様子、また資料のコピーやホチキス留め等のオフィス業務をこなす姿を見て、安全で安心して働ける環境が障害を抱える方の職場において重要であることを実感しました。
また、エクササイズステーションも見学させていただき、専門職種がどのように対象者に働きかけ、リハビリや社会復帰への支援を行っているのか、話を伺うことができました。特に印象に残っているのは、クライアント同士のサポートグループでの活動です。同じ境遇の人を見る、知る、そして互いに励まし合うことで、専門職者だけでなく、みんなで社会復帰について前向きに考えていこうという姿勢が、個人のモチベーションの向上に大きく貢献すると思いました。実際に社会復帰を果たした方の中には、水道工事の現場で働いていた方がレストランのスタッフに、警察官として働いていた方がカジノディラーに、そして、レストランのコックがアーティストに、といったように前職とは全く世界の異なる新しい仕事に就く方も多いということを知り、とても驚きました。
次に紹介するのは、SG Enable Village です。SGは、飲食店や保育所、クリニック、職業紹介所などがテナントとして入っており、シンガポールの最も新しい統合されたコミュニティー空間として海外からも注目を集めています。
豊かな自然に囲まれたデザイン性の高い建築になっており、なによりバリアフリーが充実していることが特徴です。この施設は障害のある方にとって職場であり、トレーニングの場でもあることから、とても開けた環境であると思いました。また、ジョブトレーナーが対象者に合った仕事が見つかるまでさまざまな仕事を体験させてくれるという充実したサポート体制が整っていることも魅力の1つであると感じました。施設内には、ジュエリーショップやパン屋、スターバックスコーヒー等のお店がありました。
私たちが特に感心したのは、スーパーです。高い場所に陳列されている商品を取る際にスタッフを呼ぶためのボタンや、車椅子用のカート、また視力が悪い方でも見やすいよう、大きな文字の表示、ルーペの設置等、高齢者や障害者をはじめとする全ての人に対して暮らしやすい取り組みが多く見られました。また、買い物をしたあとのカートをレジのカウンターの机上まで持ち上げるシステムはとても画期的であると思いました。このような取り組みがシンガポールだけでなく、広く受け入れられる社会ができれば、障害を持つ人や高齢の方にとって、より暮らしやすい環境が広がっていくのではないかと感じました。
最後に紹介する施設はKhoo Tech Puat Hospital(KTPT)です。この病院は2010年に開かれた救急病院です。現地の看護師の方に病院内を案内していただきながら、病院の理念や特徴についてのお話を伺いました。
私がまず驚いたのは、病院内のスタッフに向けて運動促進の取り組みがなされていることです。腹筋やランニング、腕立てなどのメニューがあり、定期的に管理されています。まずはスタッフが健康の手本になるという考え方が良いなと思いました。また、特に日本の病院との違いを感じたのは、政府から受ける医療費の補助の度合いによって病室の環境が全く異なることです。例えば、入院するためのお金の補助を多く受けている方は、病室の仕切りとなる壁の高さが1.5メートルほどしかなく、エアコンは設置されていません。日本の病院はドアや壁が多いことに対して、シンガポールはかなり開放的な印象を強く受けました。また、シンガポールは多民族国家であるため、宗教によって提供される病院食が異なることや、看護師間で言語対応のリストを作成し、他言語でのコミュニケーションを円滑に取れるように工夫されていることを知ることができました。
研修に参加して、日本とシンガポールの医療制度の違いや、健康課題をグローバルな視点で比較することができ、国内だけでは気づくことができなかった日本の医療の良さや問題点を知ることができました。今回学んだ知識や経験が今後の実習や学習への自信につながっていくと良いなと思います。
また、研修を通して聖隷クリストファー大学の学生をはじめ、シンガポールの学生やホームステイでお世話になった家族など多くの人と関わる機会がありました。英語が話せる話せない以前に、このような機会がなければ、海外の学生と一緒に学んだり、ご飯を食べたり、お話をしたりすることもないのでとても貴重な経験ができました。
看護学部2年 小永井萌