2018年度アメリカ看護研修参加学生の声②
~施設・病院見学について~
研修の中で、病院や介護施設など、様々な施設を見学させていただきました。
最初に紹介する施設は、John Muir Healthという病院です。この病院は、サンフランシスコベイエリアの中でも大きな病院で、高度な医療を提供しています。病院の周りには緑が多く、入院患者が景色を見ることができる環境になっていました。
見学して分かったことは、患者に高度な医療を提供する環境が整っているということです。例えば、患者のバイタルモニターを一括管理している部屋があり、サチュレーションが下がったら病棟に知らせたりできるようになっていました。
また、本人や家族の了承を得て、部屋にカメラとマイクを設置して監視することが可能で、その場に看護師がついていなくても患者の安全を守ることができるようになっていました。シュミレーションルームも完備されていて、新人教育にも力を入れていることが分かりました。
日本と異なると感じた点は、病室が基本的に個室であり、日本のような多床室が無いところです。また、日本には存在しない、静脈カテーテル管理などを行っている、ライン管理に特化した看護師チームがありました。
見学して興味深かった点は、看護師がよく医師と話をしていたことです。カンファレンスも明るい雰囲気で行われていて、どの立場の人も意見が言いやすいような環境であると感じました。看護師が多職種や家族間の橋渡しをしている点は日本と変わらないと感じましたが、日本よりもコミュニケーションが活発に行われていると感じました。
次に紹介する施設は、St. Paulという入居型高級老人ホームです。対象の介護度や認知症の有無にあわせた環境整備や支援を行っており、日常生活に支援が必要な人とそうでない人でエリアが分かれていました。また、各フロアに、必要な支援を行うことができる職員が配置されていました。リハビリを行うことができる設備で日常生活に即したリハビリを行うことができるようになっていました。ジムや屋上庭園での散歩などで運動をすることもできます。
最も印象に残ったことは、入居者の意向を大切にしているところです。施設には家具の持ち込みや部屋のレイアウトを自由に変えることができ、壁の色なども変更することが可能です。また、夫婦同室で入居することもできるようになっていて、入居者の意向を大切にしていると感じました。
次に紹介する施設は、George Markという施設です。ここでは、終末期の子どもとその家族のために、無料でレスパイトケアを行っています。レスパイトケアとは、乳幼児や障害児・者、高齢者などを在宅でケアしている家族を癒すため、一時的にケアを代替し、リフレッシュを図ってもらう家族支援サービスのことです。
この施設では、終末期の子どもと家族にレスパイトケアを提供するために、終末期の子どもだけではなく、その家族も入所できる設備が整っていました。また、兄弟が一時的に施設付近の学校に通うことができるよう、地域の学校と協力を行っていました。
施設内は病院のような雰囲気ではなく、子どもが安心できるデザインになっていて、子どもが楽しむことができる工夫がされていました。また、子どもの発達段階や身体機能に合わせて、専門家が一人一人に適した遊びを提案していたり、ペットセラピーなどのイベントが毎日行われていました。他にも、プールや色々な刺激を与えられる部屋があり、子どもの希望や身体状況に合わせて使用されていました。
この施設で最も印象に残ったことは、入所する子どもに対して死のことを伝えるかどうか、という問題についてです。この施設では、家族の意向によっては、子どもに自分の死について伝えないこともあるそうです。しかし、伝えられていない場合でも、自分の死期を悟っている子どもが多く、スタッフとは死について話をすることも多いそうです。子どもが亡くなった後の家族の支援も行っている、ということも印象に残りました。
最後に紹介する施設は、Brighter Beginningsという施設です。この施設はNurse Practitioner(NP)が個人で開業できるもので、貧困な地域でのプライマリケアを担っています。日本でいうと、風邪をひいたときに受診する地域のクリニックのようなイメージです。NPだけで開業することも可能ですが、医者とともに開業することもできます。
NPとは、診断に必要な検査のオーダーや結果の解釈、薬剤や非薬物的治療の処方を含む一般的な疾患の直接ケアの提供やマネジメントを行うことができる看護師のことです。日本にこのような看護師はいません。アメリカでは、プライマリケアを担う医師の不足、貧困な地域で安い人件費でプライマリケアを担うことができる人材の必要性から、NPが必要とされているため、日本には存在しないNPという制度ができたそうです。
Brighter Beginningsがある地域は貧困な地域であり、実際に行ってみると治安もあまり良くないことが分かりました。また、利用者は貧困層の方が多いため、受付で働いている人は、患者が加入している保険の確認をしたり、患者を公的な支援に繋げたりするための訓練を受けているそうです。この施設には、服や日用品など多くのものが寄付されていて、必要としている患者に配布を行っていました。また、疾患に対してケアを行うだけではなく、性教育にも力を入れていて、性教育に関するパンフレットやコンドームが施設に置かれていました。
研修に参加して、アメリカの看護や医療制度、社会的背景を学び、実際に触れ、日本と比較することで、日本の良いところや悪いところについてより深く考えることができました。
また、アメリカは勉強に真摯に取り組んでいる学生が多く、私も看護を学ぶ意欲をより高めることができました。ホームステイやSMUの学生との観光もとても楽しかったです。英語でコミュニケーションをとることの楽しさも感じ、もっと英語を勉強しようと思えるようになりました。アメリカ看護研修では、普通の観光では体験できないたくさんの経験をすることができます。迷っている人は、ぜひ勇気を出して参加してみてください!
看護学部3年 伊熊菜々子