大阪大学の村上靖彦先生にご恵贈いただき、丁寧に読んでご紹介しようと思っていたら、なんと今になってしまいました。ご無礼どうかご寛恕くださいましたら幸いに存じます。
哲学が取扱う射程や現象学的研究方法が専門職の実践に絡み合うと、実践に奥行がこれだけ広がって見えるものかと大変面白く拝読しました。
先生は「プラットホーム」という交錯の場を表現し、実践の規範と自由(楽しさ、創造性、共同性・・)の折り重なり、逆に言えば、相対立するかに見えるもの共存や相互影響について、看護師の語りから析出なさっており、専門職の実践の魅力はまさにそこだよな、それがあるからこそ、専門職は実践のなかに主体を創りあげることが可能になるのだよなと感銘を受けました。
最終章では「現象学的なナラティブ研究の方法論」という副題の章を設けておられ、決して長い文章ではないのですが、エッセンスが濃縮した、とても示唆に富む素晴らしい章だと思いました。
たとえば、現象学的研究をするとき、「真理は触発力を持つ現象=リアリティが生起する構造」(p228)だと書かれてあります。それは普遍だからではなく、むしろ特異性を内包しているがゆえだ、というのです。確かにそうだと思いました。先生のご著書を読んでいると、「そうそう!」と熱いものが込み上げる瞬間が幾度かあるのです。それは文章に書かれた意味が私の心と共鳴し、触発を受けた瞬間だと思うのです。唯一な経験を研究する、その結果の真理は、人の心に投げかけるものがあるかどうかにかかっているということを表現されているのだと思います。それこそが、その章のタイトルである、「現象とはリアリティ」ということの神髄なのだとも思いました。
素晴らしいご著書を執筆くださり、またご恵贈くださり、本当にありがとうございました。
以下は、出版社による著書の紹介のURLです。
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