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2016年1月12日 (火)

言語聴覚学科教員の研究紹介⑥(大原 重洋准教授)

言語聴覚学科教員の研究紹介、第六弾は大原重洋准教授です。

大原准教授は、小児聴覚障害の臨床に長年携わってこられ、聴覚障害学、言語発達障害学を専門にされています。

現在行っている研究について紹介します。

私の研究フィールドは、小児聴覚障害の臨床現場です。大半の研究は、自ら指導してきた聴覚障害児を対象としています。とくに、学年単位(10~20人前後)を対象としたメゾレベルの研究が得意です。

最近は、少しずつ、臨床現場以外でも実験環境を構築し、対象数を増やし、普遍的なデータを採取することに挑戦しています。

現在、取り組んでいるテーマは、以下の2つです。

①乳児期初期の補聴器装用支援法の開発

近年では、生まれた直後から、聴覚障害の診断ができるようになり、これまでと比べて早い時期に補聴器を付けて聞く練習を始めています。

しかし、赤ちゃんにとっては、補聴器は、耳の中に入る異物であり、装着を嫌がることが少なくありません。せっかく、補聴器を購入したとしても、実際には、使っていないということもよくあります。

聴覚検査の技術は、格段に進歩しましたが、補聴器装用を効果的に進めるリハビリテーション技術は、まだ十分には確立されていません。

そこで、0歳で補聴器を付けた赤ちゃんの行動を注意深く観察し、どのようにすれば、長い時間、補聴器を付けていられるのか科学的に検討しています。

②ナラティブ産生を促進する支援法の開発

 ナラティブとは、自分が体験したことや空想したことを筋立てて、話す能力です。通常、子どもは、5~6歳になると、それまでに獲得した単語や文の知識を用いて、様々な物語を作り、他の人に聞かせるようになります。幼児期のナラティブの能力は、学校の成績との関連が高いと指摘されおり、近年、注目されています。

一方、聴覚障害児は、ナラティブの発達が遅れており、小学校に入学した後でも、筋立てて話をすることが苦手なことが多いです。

その理由は、子どもは、大人や子ども同士の会話を通じて、物語を作る基盤を学ぶからです。つまり、聞こえの障害によって、他の人とのコミュニケーションに困難があると、ナラティブの基盤を学べないのです。

そこで、幼児期のコミュニケーションから学童期のナラティブに共通する因子を解明し、早期からの一貫した支援法の開発に取り組んでいます。

さらに、次年度以降に取り組みたいテーマとして、浜松市と近隣市町村における聴覚障害児やその他の障害児の発見と対応のシステムを分析し、他県の基礎自治体のシステムとの比較を行いたいと考えています。