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2021年1月29日 (金)

コロナ禍における、もう一つの人助け

新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか止まりません。
こうした中、医療や介護の現場における専門職の奮闘ぶりはテレビや新聞等でよく報道されていますが、人々の暮らしを支援する現場のお話はあまり扱われません。
具体的には、コロナの感染拡大によって経済的困窮に陥った人々に対する支援に当たる専門職に関することです。

昨年8~9月、社会福祉学部の3年生は社会福祉士受験資格取得のためのソーシャルワーク実習に参加しました。
私は「社会福祉協議会」という地域福祉推進の中核的な役割を担う民間組織の実習担当を10数年間していますが、この夏の実習巡回では今まで見たこともないような光景を目にしました。それは、連日多くの外国人を含む人々が、お金のことで相談に押し寄せている光景でした。
国は、今回のコロナ禍で生活困窮に陥った人々に対してさまざまな生活支援のための制度を整えていますが(https://corona-support.mhlw.go.jp/index.html)、多くの場合、その窓口となっているのが全国の市町村に設置されている社会福祉協議会です。
実習巡回でもう一つ目にしたのは、母国に帰ることもできず、異国の地で仕事を失い、住まいを失う危機に直面しながらもなんとか暮らしを立て直そうとする人々に対し、スマホの翻訳機能を駆使し、一生懸命寄り添い、支援に当たっている卒業生を含むソーシャルワーカーたちの姿でした。

社会福祉協議会に限らず、この間、全国の社会福祉士はあらゆる場で人々の暮らしを守るために奮闘しています。
少し長い引用になりますが、次に示すのは、昨年4月に日本社会福祉士会会長名で発出された声明です(一部抜粋)。

  

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新型コロナウイルス感染症に対する社会的弱者への支援について

公益社団法人日本社会福祉士会(以下「本会」という。)は、人々の尊厳を尊重し、住み慣れた地域の中で安心して共に暮らせる社会の実現に努めることを憲章で定めている、都道府県社会福祉士会を会員とする専門職団体です。

新型コロナウイルス感染症は、パンデミック(世界的大流行)を迎え、各地で拡がり続けています・・・・。           

感染拡大に伴う人びとの懸念と不安の拡大によって、私たちソーシャルワーク専門職である社会福祉士が対応すべき生活課題が各地で顕在化しています・・・。派遣切りなどにより仕事と住まいを同時に失う状況に置かれている人々も報道されています・・・・。児童虐待の発見や対応が遅れ、必要な支援が滞るなど権利侵害が潜在化してしまう恐れがあります。また、ドメスティック・バイオレンス、障害者虐待、高齢者虐待等においても同様に、関係機関による訪問等を含むアウトリーチ、一時保護等の自粛によって、権利侵害が潜在化してしまう恐れがあります。

このような人びとの生活課題と権利侵害に対して、私たち社会福祉士は、ソーシャルワークの倫理と価値を改めて強く確認し、その実践を展開していく必要があります現在のような状況下であればこそ、社会正義と人権擁護の原理に依拠した実践が社会福祉士に求められています。そのような姿勢によって、人びとの支援に従事し、所属する組織をはじめ、地域住民、自治体等に必要な働きかけを行う必要があります・・・。

私たち、社会福祉士は、最良の業務を遂行するために、自らの専門的知識・技術を惜しみなく発揮する責務を有していることを自覚し、既存の手法にとらわれずにICTを活用するなどして、必要な支援を継続していく必要があります・・・。

結びに、政府及び地方自治体においては、私たちの支援を必要としている人びとに対する現物・現金による手厚い社会サービスの提供をお願い申し上げる次第です。 私たちは、これまでに経験のしたことがないウイルスと立ち向かいながら、この危機を乗り越えていく必要があります。世界の全ての人々の生命と健康を守る取組を推進していく中で、常に、社会的・経済的な弱者の人々の支援を優先して考え、取り組む必要があります。今後、日本社会福祉士会は、都道府県社会福祉士会との連携をはかりつつ、新型コロナウイルスから派生する様々な人びとの生活課題に対応していくよう努めてまいります。

2020 年 4 月 1 日 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島 善久

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どうかこの時、本学の卒業生がコロナ禍で暮らしが脅かされている人々を真に支える働き手として活躍されることを、そして、こうした社会正義に基づく「もう一つの人助け」の列に加わろうとする若者が一人でも増えてくれることを、心から願います。

*社会福祉士の仕事、活動を知りたい方は、下記をご参照ください。
 https://www.jacsw.or.jp/01_csw/video/