2022年6月30日 (木)

新学部「国際教育学部」の開設:「これからの先生を目指すなら、聖隷クリストファー大学」

6月23日、文部科学省より新学部「国際教育学部」の設置届出が受理され、2023年度から本学は、看護学部、リハビリテーション学部、社会福祉学部、国際教育学部の4学部6学科の教育体制となります。

 

本学長ブログ前号にも記したように、本学はこの地域を中心に保健医療福祉の人材養成を通して、人々の生命と健康、生活と福祉を支えてきた歴史と伝統と実績を誇ります。

これに、「教育」という新たな柱が立つことになります。

これから、保健医療福祉及び教育の総合大学として、新たな発展を目指し歴史と伝統を築いて参ります。

 

国際教育学部は、「グローバルな教育」「心理と教育」をキーワードにした履修モデルを用意して、未来を築く子どもたちの教育に資する教育・保育・心理の専門職者を養成します。

未来を築く子どもたちには、国や人種、文化、宗教、性別などを越えて多様性を認め合い、多様性から学び合う国際的視野と資質と能力が求められます。

本学は2021年4月に国際バカロレア機構(IBO)が提供する国際的な教育プログラム「国際バカロレア教員養成プログラム(PYP)/IB Certificate in Teaching and Learning (PYP)」の養成大学として認定されました。

これは全国では8校目、東海北陸地方では初めてです。

このIB教育を中心として、探求心と主体性と国際的な視点を持った全人教育を推進し、21世紀型の学びを実践し得る教育者を養成します。

 

また一方で、発達障害や不登校、虐待など現代社会の教育的課題にも対応し得る教育者の育成も大きな課題です。

国際教育学部では他学部と連携し、支援を必要とする児童・生徒・保護者の相談に応じ、助言・指導などの援助を行うことができる認定心理士・公認心理師の資格取得をめざすこともできます。

 

この国際教育学部では、大学附属クリストファーこども園、聖隷クリストファー小学校・中高等学校、また国外の交流協定校などとも連携協働して、学内での学びと教育現場のアクティブラーニングの両輪によって、理論と実践力をバランス良く身につけることのできる恵まれた教育環境をもつことも大きな特徴です。

 

「創造なしには伝統なく、伝統そのものが一つの創造に属している。」(三木 清「哲学ノート」)

新たな聖隷クリストファー大学の発展にご期待ください。

2022年5月31日 (火)

歴史と伝統の継承

今年、私たちは大きな節目の年を迎えます。

聖隷学園が看護教育を始めた1952年の「聖隷准看護婦養成所」の開設から70年、「聖隷クリストファー大学」前身の大学教育を開始した1992年の「聖隷クリストファー看護大学」の開学から30年になります。この節目の年に、諸先輩方々から引き継がれてきた建学の精神「生命の尊厳と隣人愛」を再確認し、歴史と伝統を継承する意を新たにしています。

 

「伝統は我々の行為によって伝統となるのであり、従って伝統も我々の作るものであるということができる。創造なしには伝統なく、伝統そのものが一つの創造に属している。」「現在における創造を通じて伝統として生きたものになるのである。」(三木 清「哲学ノート」より)」

 

来年度、新学部「国際教育学部(2023年4月設置届出中)」を開設し、国際化に向かう子どもたちの育成に資する教員の養成と、発達障害や不登校、虐待などの現代社会の課題に対応し得る公認心理師・認定心理士の育成を目指します。このような新たな発展の中にも、先人の教えが絶えず柱(魂)として貫かれるよう、その声を聞き伝えていくことを大切にしたいと思います。

 

先日、「2022年度(通算第47回)聖隷クリストファー大学同窓会総会および記念講演会」が開催されました(詳細は本学同窓会ホームページ)。総会では、学生の学修や経済的支援に関わる事業計画が策定されました。紅谷同窓会長様をはじめ同窓会皆様の愛校心とご支援に感謝の言葉もありません。本学が卒業生・修了生の皆さんに支えられ、共に歴史と伝統が継承されていることに大きな喜びと使命を感じます。

2022年4月28日 (木)

「国際保健医療福祉プログラム」(副専攻)を開設

春は生命が復活する息吹の時です。

キャンパスにも活気を感じます。

古い衣を脱ぎ捨てて、今の自分を超える新しい自分にチャレンジしてほしいと願います。

未来を築く新入生の皆さんが、私たちの喜びであり希望です。

 

今年度、本学は新しい教育プログラム、「国際保健医療福祉プログラム」(副専攻)を開設しました。

これは看護学部・リハビリテーション学部・社会福祉学部の主専攻を基に、3学部合同の教育プログラムです(詳細は本学ホームページ)。

今、本学の建学の精神をもって、国内外の情勢をみると、国内ではグローバル化の進展によって多く外国の方々が居住されるようになり、保健医療福祉と教育の課題が出てきています。

また国外では紛争、難民、飢餓、貧困などによって、幼い子どもたちをはじめ多くの人々が苦しみや悲しみ、絶望の中にいます。

この「国際保健医療福祉プログラム」は、「生命の尊厳と隣人愛」の精神を基盤として保健医療福祉の知識と技術を活用し、この地域とともに世界の平和と人々の幸福に貢献する人材を育成することを目的としています。

 

4月23日には、ペシャワール会会長・PMS(Pease (Japan) Medical Services)総院長の村上 優 先生を講師に迎え、「国際保健医療福祉プログラム開設記念講演会」を開催しました(講演会のニュース記事はこちら)。

長年アフガニスタンの人々に尽くし、一隅を照らし続けた中村 哲 先生の思想と生き方に深い感銘を覚えました。

本学から、中村 哲 先生の志を継ぐ学生が輩出されることを願います。

 

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水が善人・悪人を区別しないように、誰とでも協力し、世界がどうなろうと、他所に逃れられない人々が人間らしく生きられるよう、ここで力を尽くします。内外で暗い争いが頻発する今でこそ、この灯りを絶やしてはならぬと思います。(中村 哲)

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2022年3月29日 (火)

卒業生・修了生の旅立ち:希望

この3月の喜びは何と言っても、卒業生・修了生の旅立ちでしょう。

それは未来への希望です。

この間、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まり、幼い子どもたちをはじめ多くの人々の命が奪われ、苦しみや悲しみ、絶望のなかにいます。

世界は今、死と恐怖、悲しみと憎しみ、怒りと無力感に満ちているように感じます。

そのようななかにあっても、未来への希望を信じたいと思います。

それは本学卒業・修了生の皆さんが、国や人種、思想や宗教を越えて、建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」の精神を実践し、保健医療福祉の未来と人々の幸福と世界の平和に貢献されると信じるからです。

 

 

2021年度卒業・修了式 学長の言葉

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新型コロナウイルスの感染拡大から、3度目の春を迎えます。

この間、皆さんが目標を見失わず、本日ここに卒業、並びに修了を迎えられ、その努力をたたえるとともに、心よりお祝い申し上げます。

卒業生・修了生の皆さん、誠におめでとうございます。

また今日まで、学生皆さんを支え、大学運営にもご協力いただきました、ご家族の皆様に深く感謝の意を表し、お慶び申し上げます。

誠におめでとうございます。

 

さて、卒業生の皆さん、私たちは今もなお、新型コロナウイルス感染拡大の渦中にいます。

今この時もなお、私たちの先輩方が人々の命と健康、生活と福祉を守るため、懸命にその役割を果たされています。

皆さんもこれから、その現場に出ていくことになります。

皆さん一人ひとりに与えられた務めが、果たされますよう祈ります。

 

私たち聖隷の歴史を振り返ると、そのはじまりもまた、厳しく困難な船出でありました。

長谷川保ら私たちの先人が、聖隷の事業を興した1930年当時、日本は世界恐慌による深刻な不況下で、不治の病と言われた結核が蔓延していました。

そのようななか、先人は、感染の恐怖から社会から疎外された結核病患者と共に生きる誓いを立てます。

その運営は、度重なる迫害と困窮によって困難を極めます。

しかし先人は、自らの全てを尽くし、隣人の命と生活を守り支えられました。

この先人の生き方が、本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」の精神です。

皆さんに受け継がれた、この建学の精神を胸に、保健医療福祉の道を歩まれることを願います。

 

大学院修了の皆さん、皆さんは保健医療福祉の高度専門職業人、教育者・研究者としての学識と技能を修得し、各専門分野の発展にも貢献されました。

心より敬意を表します。

これから皆さんには、保健医療福祉分野のリーダーとしての役割が期待されます。

今回の新型コロナウイルス感染拡大による教訓の一つは、いかに保健医療福祉の体制が脆弱であったかということです。

私たちは、もう二度とこのような事態が生じないようにしなければなりません。

皆さんの英知とリーダーシップを期待いたします。

 

終わりに、卒業生・修了生の皆さん、世界は今、先行き不透明な混迷の時代に向かっています。

しかし、どのような時代にあっても、平和と人間の命と健康、生活と福祉が普遍的な価値であることに変わりはありません。

皆さんが、クリストファーの如く、隣人愛と知の技で、人々の命の尊厳と幸福に尽くされますことを願い、学長の言葉といたします。

 

2022年3月10日

聖隷クリストファー大学

学長 大城昌平

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2022年2月28日 (月)

春の訪れ

今冬は立春を過ぎても次々と強い寒波が襲来し、日本海側を中心に日本列島は大雪に見舞われて寒さの厳しい日が続きました。

それでも2月後半になると、冷たい北風を感じながらも、日向を探す散歩道には太陽の光が一段と強く、春光で吹く風も輝くようです。生命の息吹、復活の時です。


休日の日課は、いつもの時刻に起床して散歩に出かけます。

散歩道、所々の庭先には赤や白、ピンクの梅の花が咲き始め、ウグイス色の小鳥が梅の花をついばむ姿が見られます。

鶯だろうかと調べてみると、鶯は梅の木にきて止まることはほとんどなく、多くは「めじろ」だということです。

確かに、鮮やかな黄緑の羽に眼のまわりを白くふちどった2羽のめじろが追いかけ合いながら、仲睦まじく梅の蜜を吸っています。

自然と顔がほころびます。

今年も待ちに待った春がやってきた、ごく当たり前のささやかな日々の移ろいに感謝と幸せを感じるひと時です。

人間の心の有り様も、自然と一体なのです。


自然の恵みは、人間が作り出し得るものではありません。

自分も、自然の一部であることを感じます。

その人間が、自然を支配しようとして、自分自身を苦しめることになる。

このことは、新型コロナウイルス感染拡大の教訓ではないでしょうか。

自然の恵みへの感謝を忘れず、人間が自然と調和して生きてゆく道を学ばなければならないと思います。


残念なことに、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。人間の愚かさと、無力感を覚えます。

「国破れて山河在り、城春にして草木深し」(杜甫「春望」)。

恐怖の吹雪に襲われたウクライナの人々に、穏やかな春の訪れがありますように。

2022年1月28日 (金)

幸せを感じて

新年早々から、新型コロナウイルス オミクロン株の猛威が襲っています。

1月27日の1日の新規感染者数は78,931人で、これは前週20日の46,186人から約1.7倍という増加です。

若者から子どもたちや高齢者へ、家庭内や職場、病院施設へと拡大し、医療保健体制の逼迫が危ぶられます。

今はできるだけ行動を自制して、辛抱の時です。

 

2022年の幕開けは先行きが見通せず悲観的になりがちですが、「これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは幸運である。」(マルクス・アウレーリウス)の教えのように、泰然と、平常と変わることなくやるべき諸事に取り組んでいきたいと思います。

 

今年のブログは、その月の些細な「幸せ」をテーマにしたいと思っています。

私が学生の頃、ばんばひろふみさんの「SACHIKO」という歌が流行りました。

『幸せを数えたら 片手にさえ余る 不幸せ数えたら 両手でも足りない』という一節があって、指折り数えて“そうだなぁ”と妙に納得したことを思い出します。

哲学者ショーペンハウアーは、『幸せを数えたら、あなたはすぐ幸せになれる』という言葉を残しています。

 

1月は、年賀状シーズンです。

卒業生からいただくものあり、その多くにはお子さんや家族写真が添えられています。

卒業生とご家族の微笑ましい様子にご多幸を祈りつつ、心あたたかな幸せを感じるひと時でした。

私も今年の暮れには趣向を凝らした年賀状をと決意を新たにした次第です。

乞うご期待!

2021年12月23日 (木)

クリスマスシーズンの風物詩:クリスマスツリー

10月以降、感染収束の状況が続き社会経済活動も活発化してきている矢先、変異株のオミクロン株の脅威が迫りつつあります。

昨日(12月22日)の報道では、空港での水際対策をすり抜けて、海外渡航歴や濃厚接触者と交流のない方にも感染が確認され、市中感染拡大のリスクが高まってきている模様です。

人流の増えるクリスマスや年末年始の直前になって不安が広がります。

 

一昨年から続くこの新型コロナウイルスの感染拡大は、先行き不透明な時代を生きる私たちの柔軟性や適応能力を試すストレス・テストのようです。

柔軟性を発揮してテストをクリアしていくには、現状への適応と先行きを読んだチャレンジが必要です。

 

来年は、新たなチャレンジの年です。

1つには「国際保健医療福祉プログラム」の開設です。

現在、新型コロナウイルスの感染拡大で海外との人の往来は途絶えていますが、オンラインによる交流は益々発展していくでしょうし、在日外国人の保健医療福祉サービスに対応し得る人材の育成も課題です。

2つ目は2023年度に開設する「国際教育学部」の準備です。

これは聖隷学園のグローバル構想の一環として、グローバル時代に生き活躍する子どもたちの育成に向けた教員養成をめざすものです。

なお2023年度には「国際教育学部」と「社会福祉学部」に「公認心理師コース」を開設し、学部横断の教育プログラムとする計画です。

 

クリスマスシーズンの風物詩、聖隷学園のクリスマスツリーが今年も光り輝いています。

世界は今、新型コロナウイルスの感染拡大や貧困、紛争、難民、環境問題など暗い時代です。

しかし暗がりの中にこそ光を見出すことができます。

新しい年が光りを見出し得る年でありますように!

 

 

今年1年も、学長ブログをお読みいただき、ありがとうございました。

来年1月号からは、少し趣向を凝らしたいと思っています。

引き続きよろしくお願いいたします。

2021年11月22日 (月)

2年ぶりの上京

先日、約2年ぶりに上京しました。都内で開催された日本産婦人科学会主催の「親子の愛着形成についての勉強会」にお呼びいただき、赤ちゃん(新生児)の神経行動発達と、発達及び親子関係の支援について講義を行うためでした。

いささか躊躇しつつも、幸い感染状況は低レベルが続き、講義会場からのオンライン配信ということもあって、意を決して向かうことにしました。これまでの行動範囲は自宅と大学の往復だけでしたので、久しぶりに社会の空気を直に吸える喜びと興奮を覚えました。とは言え、感染に対する不安もあって、人込みや接触を避ける用心深さも無意識に振る舞いに出ているようでした。

私の感覚で“混雑している”と感じる状況を100と数値化した場合、朝9時過ぎの浜松駅は30、新幹線内は30で、私の3列シートの横の席は空席で前後列に一人ずつが座っている程度でした。東京駅に着くと100近くに跳ね上がって、首都圏では私の想像に反して社会経済活動がかなり活発に正常化に向かっていると実感しました。一方、周囲の方々がきちんとマスクを着用し、要所には消毒用アルコールが置かれ、換気やシールド配置が徹底されており、日本人の規律正しさを改めて感じました。

11月22日現在も、国内の感染状況は低レベルが続いています。一方、政府は第6派に備えて、ワクチンの3回目接種、医療体制の整備、飲み薬の確保、子ども(12歳未満)へのワクチン接種、ワクチン・検査パッケージなどの対策を打ち出しています。しかしこれからも一人ひとりが基本的な感染予防対策を継続し、自分自身と他者への思いやりと節度ある行動を大切にすることが必要です。日本人のまじめさや規律、清潔感、思いやりの心が、第6波襲来のリスク低減につながると思います。

先の日本産婦人科学会主催の勉強会で私は、赤ちゃんの生まれもつ力(能動的行動能力、個性、社会性)とあたたかい心の育児についてお話をしました。赤ちゃんは生まれつき、あたたかい心をもつ社会的存在です。その力を失わないよう大切にはぐくむことが、人間が感染症などの危機に襲われた時、その強さをあらわすでしょう。

2021年10月25日 (月)

「メメント・モリ(memento mori)」

9月末から秋セメスターが始まり1ヶ月が経ちました。

幸い、授業の開始とともに、新型コロナウイルスの感染状況は収束傾向にあります。

このままの状況が続くことを願いつつ、油断しないようにもしなければならないと思っています。

 

コロナの感染拡大が始まって2年が経過しようとしています。

2年前、これほどまでに長期化し、各方面に影響が及ぶとは考えず楽観的であったと思います。

今日もまた、何人が感染し、何人が重症化し、何人が死亡したと報道されています。

集団としての数値であまり実感が湧かないのですが、当事者一人ひとり、あるいはその身内の方々一人ひとりを思うと悲しみや喪失感を覚えます。

 

(私事で恐縮ですが)私もこの間、コロナ感染ではありませんが、身内と親友を亡くしました。

コロナ禍ということもあって、「何もしてやれなかった、できなかった」「手を握ってお別れを言いたかった」と悔やまれてなりません。

ふとしたことで故人を思い出します。

「お前は生きよ、役割を果たせ」と言われているようです。

“生命”はなくなりましたが、その“命”は今も私のなかに生き続けています。

“生命”と“命”の違いに言及されたのは、中川米蔵先生(医学哲学・医学史・倫理学、大阪大学名誉教授)であると聞きます。

“生命”は生物学的あるいは身体的な死生観、“命”は人間のうちにある“魂”と考えます。

故人の魂としての“命”は今も私の中に生きつづけ、私を励まし傍にいるように感じます。

 

「メメント・モリMemento mori(ラテン語)」という言葉も思い出します。

「死を忘れることなかれ」という教えです。

死を見つめることは、より良く豊かに生きることにつながるということです。

人間は死にゆく存在である。

そう認識することで、与えられたこのかけがえのない“命”を大切に輝かせ、次世代につないでいきたいと思います。

2021年7月27日 (火)

宇宙船地球号

散歩道、月を眺めながら“行ってみたいなぁ”と思いを馳せ、テクテク歩くのが私の楽しみのひとつです。

 

4月30日、立花 隆さんがお亡くなりになられました。

立花さんと言えば、まだ私が中学生の1974年、当時の首相であった田中角栄氏の金脈問題を追及(田中角栄研究)し退陣に追い込んだ、国家権力に立ち向かう気鋭のジャーナリストという強い印象をもちました。

その後1985年に、「宇宙からの帰還 」(中公文庫)が出版されます。

それを手にした私は、“あの(田中角栄研究の)立花さんが科学の最先端の本も書かれるのか”と驚きとともに、宇宙から地球を見てみたいという憧れを抱きました。

 

訃報に接し、改めて「宇宙からの帰還 (新版)」(中公文庫)を購入しました。

口絵の「月面からみた地球」をみて、「暗黒界に浮かぶ地球はこんなにも美しく神々しいものなのか」と当時大きな衝撃を受けたことがよみがえります。

この本は、宇宙飛行士でしか実体験し得ない宇宙での経験が、その人の精神性や人生観にどのように影響したかをインタビューにより描き出したものです。

ジェミニ9号(1966年6月)で地球軌道を飛び宇宙遊泳も行い、アポロ10号(1969年5月)で月回周軌道を飛び、アポロ17号(1972年12月)で月面探検という3度の異なる宇宙経験をしたジーン・サーナン(Eugene Cernan)は、「肉眼で見る地球と写真で見る地球は、全くちがうものだ。・・・・・永遠の闇の中で太陽が輝き、その太陽の光を受けて青と白にいろどられた地球が輝いている美しさ。これは写真では表現できない。」と本書の中で述べています。

地球からでは味わえない、宇宙を実体験した人にしか得られない感覚と知覚、精神的衝撃があるのでしょう。

 

奇しくも、7月11日には米ヴァージン・ギャラクティックのサブオービタル宇宙船SpaceShipTwo VSS Unityに6人のクルーが搭乗し、続けて20日にはブルー・オリジンが開発したニューシェパードに4人が搭乗して、宇宙飛行に成功しました。

いよいよ宇宙旅行の幕開けとは言え、私には現実的に難しいでしょう。

「宇宙からの帰還」は私にとって、宇宙から地球の眺めを実体的な想像に導き、地球への畏敬を抱き、精神世界を深める偉大な遺産です。

 

地球では世界平和と共生の祭典「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」が開幕しました。

「人間はみな同じ地球人なんだ。国がちがい、種族がちがい、肌の色がちがっていようと、みな同じ地球人なんだ。」(ジム・アーウィン(James Benson Irwin)、1971年7月アポロ15号で月面着陸)。

私たちは宇宙船地球号の乗組員です。

宇宙からの視点で地球を見、考えることを忘れ無いようにしたいものです。

立花 隆さんのご冥福をお祈り申し上げます。