2025年1月31日 (金)

未来を拓く一年に——新年のご挨拶

 新しい年を迎え、皆さまにとって平和と希望に満ちた一年となることを心よりお祈り申し上げます。 

 しかしながら、私たちを取り巻く社会環境は、少子化や人口減少、人手不足の深刻化に加え、保健医療福祉・教育分野への進学希望者の減少など、厳しさを増しています。そのような状況の中にあっても、本学は建学の精神を大切にし、社会に貢献できる質の高い人材を育成し続ける使命を果たしてまいります。

 こうした社会の変化を踏まえ、今年は特に通信教育課程の構想を検討してまいります。近年、通信制教育を選択する生徒・学生が増加しており、2024年度には通信制高校の在籍生徒数が28万人を超え、過去最高を更新しました(2024年度学校基本調査)。この背景には、多様な学びのニーズへの対応、ICTやオンライン学習の普及、そして社会の多様化と個々の権利を尊重する考え方の浸透があります。

 通信制高校の生徒をはじめ、多様な学びの形を選択した若者が高等教育へ進学し、地域社会に参画し、活躍できる機会を広げることは、私たちにとっても重要な課題であり、社会的な責務であると考えています。保健医療福祉及び教育・保育の本学ならではの特色を生かし、新たな教育と人材育成のモデルを構想してまいります。

 社会の変化に直面する今こそ、私たちの先人が数々の困難を乗り越えてきたように、私たちも力を合わせ、未来を切り拓く一年にしてまいりましょう。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 最後に、皆さまのご健勝とますますのご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2024年12月25日 (水)

クリスマスツリーの輝き

 今年も、聖隷学園のクリスマスツリーが冬の寒さの中、人々に喜びと希望をもたらす象徴として輝いています。ツリーの頂点に飾られた星は、ベツレヘムで生まれたイエス・キリストのもとへ、東方の三賢者を導いた星を象徴しています。

 

 その輝きは、単なる装飾の美しさを超え、深い意味を秘めています。それは、愛と絆、平和を象徴する光です。寒さが厳しい冬の季節、このツリーの輝きは、私たちにあたたかな幸福感を与えてくれます。忙しい日常の中で、お互いに思いやりを持ち、愛を分かち合うことの大切さを、静かに教えてくれるかのようです。このようなひとときが、私たちの心をやさしく照らし、真の幸福を感じさせてくれます。

 

 さらに、クリスマスツリーの輝きは、来るべき未来への夢と希望も象徴しています。毎年飾られるツリーは、過去の思い出とともに、新しい年への希望を託した存在です。その光は、未来に対する信念を強め、どのような困難な時期であっても希望を見失わずに前へ進む勇気を与えてくれるものです。

 

 皆様のお幸せと、世界の平和を心より祈念いたします。

2024年11月29日 (金)

クリスマスと「タラントンのたとえ」

クリスマスシーズンを迎え、街角には美しいイルミネーションが輝き始めました。大学でも、クリスマスを祝うアドベント・クランツ(Adventskranz)が飾られ、温かな雰囲気が広がっています。

 

クリスマスは、神様が私たちにイエス・キリストという尊い贈り物を授けてくださったことを祝う特別な時です。この贈り物を私たちがどのように生かしていくかを考えることは、とても重要なテーマではないでしょうか。

 

先日の礼拝では、マタイによる福音書25章14~29節「タラントンのたとえ」が取り上げられました。この聖書の教えでは、主人が3人の僕に異なる額のお金(当時の通貨:タラントン)を託し、その活用を問いかけます。一人には5タラントン、もう一人には2タラントン、そして最後の一人には1タラントンが与えられました。5タラントンと2タラントンを託された者たちは、それを元手に増やして主人に報告しましたが、1タラントンを託された者はそれを失うことを恐れ、何もしませんでした。その結果、主人は前者の二人を褒め、後者を厳しく叱責しました。

 

この「タラントンのたとえ」から私たちが学べるのは、与えられたものを恐れずに活用し、成長させることの大切さです。私たちは皆、一人ひとりに異なった力や才能(タレント)を神様から与えられています。自分にどんな才能があるか分からなくても、まずは積極的にさまざまなことに挑戦してみることが、自分に与えられたタレントを発見する第一歩となります。成功も失敗も、どちらも貴重な学びを与えてくれ、自分を成長させる糧です。

 

このクリスマスの季節に、自分がどれほど大切なタレントを授かっているかを振り返り、それを他者のためにどのように活用できるかを考えてみませんか。自分の才能を見つけ、それを他の人々のために役立てることは、より豊かな人生への道を切り開く鍵となります。それこそが、神からの贈り物に感謝し応える方法ではないかと思います。

 

このクリスマスが、皆さん一人ひとりにとって、自分のタレントを見つけ、それを成長させる素晴らしい機会となりますように。

2024年10月31日 (木)

地域を支える人材を育てる大学

 いよいよ受験シーズンが始まりました。日本の18歳人口は1992年の約205万人をピークに減少し続け、2024年には約106万人とほぼ半減する見込みです。さらに、2070年までには約62万人とピーク時の約1/3にまで減少すると予測されています。この人口減少は、本学のある地域にも深刻な影響を及ぼしています。特に静岡県では、若者の流出が顕著であり、大学進学の際に東京や名古屋といった都市部に進学し、その後も地元に戻らないケースが多く見られます(2018年4月進学時:大学進学時の県内進学率は29.5%、2022年4月卒業時:県外大学進学者のうち県内にUターン就職する率は36.6%)。さらに、県内大学を卒業しても県内就職率は年々低下し、2023年度は過去最低の52.7%に達しています。このような状況の中で、地域社会の健康、福祉、教育を支える人材の育成は、ますます重要な課題となっているのです。大学は、人々の社会生活を支える重要な社会インフラと言えるでしょう。

 

 本学では、入学者の8割以上が、静岡県西部や愛知県東部など大学の近隣地域からの学生です。そして、卒業生の約8割が地元の医療・福祉施設(幼保施設を含む)、地方自治体、小学校などに就職しています。このように、本学はこれまでも地域社会と密接に結びついた教育と研究を行い、多くの卒業生を地域に輩出してきました。今後も地域の保健医療福祉や教育を支える大学として、地域に根ざした大学であり続ける必要があります。

 

 人口減少が進むこの時代においては、地域社会の維持と発展に積極的に貢献する未来を見据えた計画が必要です。その一つの方策として、地域プラットフォームの形成による市町村、企業との連携強化による就学支援体制が考えられます。地元で育った人々が本学で学び、卒業後は地域の保健医療福祉・教育を支えながら生活し、次世代を育てていく、そんな循環型の未来を創造していきたいと考えています。

 

*静岡県ホームページ、**静岡新聞を参照

2024年9月30日 (月)

秋セメスターの始まり:初心を思い起こして

 今年の夏は、記録的な高温が続き、危険な暑さに見舞われました。平均気温は平年を1.76度上回り、気象庁が1898年に統計を取り始めて以来、昨年と並んで最も高くなったそうです。こうした異常気象は、地球温暖化の影響によるものであり、私たちの生活にも大きな影響を与えています。猛暑だけでなく、台風や豪雨、干ばつといった自然災害が増加しているのもその一環です。これらの状況は、私たちが自然環境に与える影響について改めて考えるきっかけとなります。自然への畏敬の念を忘れず、私たち一人ひとりが地球環境を大切にする行動を心がける必要があります。

 

 さて、秋セメスターが始まり、キャンパスは再び活気に満ちています。秋は新たなスタートの季節です。この新しい始まりに際して、自分が大学で学ぶ目的や原点を振り返ることが大切です。初心を思い起こして、これからの学びの旅をどのように進めていくかを考える良い機会です。友人との交流や新しい仲間との出会いは、大学生活をより豊かにしてくれます。異なるバックグラウンドを持つ人々との関わりは、互いに学び合う素晴らしいチャンスです。

 

 また活動的な日常の中でも、静かに自分自身と向き合う時間を持つことを忘れないでください。心の静寂を大切にし、自分自身を見つめ直すことは、内面的な成長に繋がります。静かな時間を持つことで、これまでの出来事を整理し、今後の目標や人との関わり方を考える良い機会となるでしょう。自分の価値観や感情に向き合うことで、他者を愛し、より深い人間関係を築く力も育まれます。

 

 これからの大学生活が、皆さん一人ひとりにとって自己発見と成長の旅となることを願っています。自然への敬意を忘れず、心の豊かさを育み、共に素晴らしい時間を過ごしていきましょう。

2024年7月24日 (水)

インドネシア国立ハサヌディン大学との交流協定(MOU)を締結と人材育成の発展

 本学は、7月12日、インドネシアの国立ハサヌディン大学と大学間交流協定(Memorandum of Understanding; MOU)を締結しました。国立ハサヌディン大学は、インドネシア国内でトップ5にランキングされる国立大学で、東インドネシアで最も大きな規模を持ちます。このMOUを基に、医療・介護の人材育成の課題解決に向けた具体的な施策を検討していきます。

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 日本は少子高齢化が急速に進行し、これから益々、医療・介護職不足が大きな問題となります。2024年の出生数は70万人を割り込む公算が大で、出生数回復にも期待が持てません。特に静岡県は若者の流出が顕著で、大学進学に伴って東京や名古屋などの大学に進学し、卒業後も帰ってこないケースが多い状況にもあります{2021年のデータでは、18歳人口34,622人、高校卒業者数31,948人、大学進学者数16,879人大学進学率48.8%、自県進学率28.5%)}*。地域の保健医療福祉・教育保育の人材養成を支える本学としては、県内及び近郊からの進学者を確保するとともに、国外からの進学者や就労者の確保にも注力したいと考えています。

 

 インドネシアは人口が2億7000万人を超え、若者の人口比率が高く、特に地方都市においては大学を卒業した学生の就労先が限られたり、大学院等の教育機会が乏しかったりという現状があるようです。インドネシアの豊富で優秀な若手人材と、本学の医療・介護・福祉・教育に関する高度な専門性という長所を生かし、国境や文化を越えて互いの長所と短所を補完し合うことで、これまでに無い課題解決の方法と付加価値の創出が可能になるでしょう。

 

*(参考)2040年の各都道府県進学者数等推計(2021年基準)

2024年6月28日 (金)

あるべき姿

 例年になく梅雨入りが遅く、気象庁は21日、静岡県を含む東海地方の梅雨入りを発表しました。これは、平年より15日、昨年より23日遅く、東海地方の6月下旬の梅雨入りは2017年以来とのことです。梅雨入りが遅い分、豪雨や猛暑への注意が呼びかけられてもいます。梅雨の晴れ間となった6月24日・25日は2日連続の猛暑日で、すでに厳しい暑さに見舞われています。

 

 大学でも災害や猛暑に備え、注意喚起がなされています。体調と生活リズムを整え、また余裕を持って通学するなどして事故に気をつけ、日々の学習が順調に進むことを願っているところです。

 

 さて、本学では、大学教育の内容や方法の改善を図るため、年2回の全学FD (Faculty Development) 研修会を開催しています。そのうち1回は、建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」を継承し、その精神を活かした教育を推進する研修としています。

 

 今回は6月19日に開催し、本学の前身である聖隷学園浜松衛生短期大学の卒業生で、現在は訪問看護師として経験を重ねられている吉岡麻理氏にご登壇いただきました。聖隷の先人や教員たちの話を真剣に聞き、また自らの話を真剣に聞いてもらうことをとおして、目の前の一人ひとりを大切にし、その人に真摯に向き合うことに隣人愛の精神を見出し、それが聖隷の教育の本質だろうと語られました。

 

 卒業生が卒業後もなお、その精神を反芻しながら日々の仕事に従事されている。このことが私たちの目指すあるべき姿でだと感じました。

 

 大学は、大きく発展してきました。しかし、その基盤である建学の精神を見失ってはなりません。建学の精神をいつも心に留めおき、一人ひとりの学生に真剣に向き合う教育を継承していきたいと思います。このような私たち教職員一人ひとりの姿勢が、学生の建学の精神を醸成することになるでしょう。

2024年5月21日 (火)

同窓会と大学の発展

 先日(5月11日)、同窓会総会並びに講演会が開催され、私も同窓会顧問として出席いたしました。本学の運営や教育・研究活動が、同窓会の協力と支援によって、充実・発展していることを改めて感じました。感謝しかありません。

 

 また今年度は新たに、同窓会の支援事業として、「卒業生向けの大学院科目等履修支援金」の制度が創設されました。この制度は、今年度の大学事業計画の柱の一つである大学院の発展と高度人材養成を目指すこととも関連があります。今年度、看護学研究科(前期課程)では、 “プライマリケア看護学領域”を開設し、診療看護師(ナース・プラクティショナー)の養成を始めました。またリハビリテーション科学研究科(前期課程)では2025年度に、“高度実践リハビリテーションコース”を開設する計画です。加えて、社会福祉学研究科でも2026年度に、“公認心理師課程”を開設する準備が着実に進んでいます。このように、大学院の発展と高度人材養成は、学部とともに、同窓会による支援が原動力になっています。

 

 人生100年時代。大学卒業後も、マルチ・ステージで活躍するキャリアを身に着けるには、学びを継続し、学び直し(リスキリング)が必要です。卒業生の皆さんにも、是非とも同窓会の支援事業等を活用していただき、大学院での学びや進学を検討していただければ幸いです。

 

 これからも、同窓会の皆様とともに発展する大学でありたいと思っています。

 同窓会のさらなる発展と、卒業生・修了生皆様の益々のご活躍・ご健勝を心から祈念いたします。

2024年4月 8日 (月)

聖隷の歴史:三方原の地

 今年の桜の開花は、開花直前での低温の影響が響いて、平年より遅い開花となりましたが、入学式(4月2日)に合わせるように満開の時期を迎えました。キャンパスも新入生の皆さんを迎え、明るく活気づいています。

 今年の入学式での学長式辞のテーマは、本学が所在する三方原の地についてでした。三方原は、浜松市の中心部(浜松駅)からは遠く、不便を感じるかもしれません。しかし、便利さは物事の本質を見失う危険があるようにも感じます。不便さの中に、本当に人が求めている『大事のモノ』見えてくるのではないでしょうか。三方原の地での学ぶことの意味を、新入生の皆さんに知ってほしいと思います。

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2024年度入学式 学長のことば

 

 新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。皆さんの入学を心より歓迎し、祝福いたします。皆さんが、本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」を人間形成の基盤として、保健医療福祉及び教育・保育の専門職職業人に成長できるよう応援いたします。

 ご家族の皆様に、お慶び申し上げます。新入生一人ひとりが、それぞれの目標を達成できるよう、教職員一同務めてまいります。ご協力のほどお願いいたします。

 また本日ご多用のなか、ご列席いただきました、ご来賓の皆様に、心よりお礼を申し上げます。今後とも、私たちの未来を担う学生に、ご支援ご指導を賜りますようお願いいたします。

 

 さて本日の入学式にあたって、新入生の皆さんに本学の歴史と建学の精神、そしてその学びについてお話いたします。

 聖隷の事業は、1930年、創立者である長谷川保ら若きクリスチャンが、結核病患者の保護を始めたことから始まります。当時、結核の死亡率は人口10万に対し200人を超え、死の病と恐れられていました。これは新型コロナウイルスのパンデミックのときの約3~4倍にあたると言われます。ですから、その世話をすることは、社会から迫害を受けたり、自らも感染し命を失うリスクを負うということです。なぜ、創設者たちはそのようなことができたのでしょう。それは、クリスチャンとして、困った人、助けを必要としている人に尽くすことが、神様に仕え、隣人愛を実践することであると信じたからです。

 

 事業は当初、浜松市中心部の入野村(現在の蜆塚一丁目辺り)に粗末なバラックづくりの療養施設「ベテルホーム(神様の家という意味)」を建て、始められました。しかしそこで、地域住民からの度重なる厳しい迫害を受け、立ち退きを迫られます。そして止む無くそこを追われるようにして、当時、林野であった現在の三方原に移り、「聖隷保養農園」を開設します。

 その後、聖隷の結核病患者の救済事業をきいて、全国から患者が次々と集まって来ます。しかし、三方原でも再び迫害運動が激化し、加えて大恐慌の影響もあって経営面でもひっ迫し、困窮状態に陥ります。当時の記録には、このようにあります。「奉仕者や看護師たちは食事を用意することも難しくなって、どうにかしてまず患者に食事をさせ、その残飯を雑炊にして食べるのが常であった。」

 このように、聖隷の創設者たちは過酷な状況のなかで、自分たちの命、生活、全てを犠牲にして、病気や障害を抱えた人々の命を守り、生活を支え、愛を尽くされました。このような創設者たちの生き方が、私たちの建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」です。この建学の精神を兼ね備えた保健医療福祉及び教育・保育の専門職業人を育成することが、私たちの使命であり、教育目標です。

 

 現在、私たちの先人が開拓した三方原には、聖隷三方原病院をはじめ、高齢者や障害児・者の施設、聖隷学園のこども園・小・中高等学校など20を超える施設があります。そこでは、隣人愛の精神を具現化した質の高い医療、ケア、教育が提供されています。そして、この地から派生した同じ聖隷の精神をもつ聖隷福祉事業団をはじめとした病院・施設が全国に発展しています。また、この地で育った15,000名を超える卒業生・修了生が、国内外で、それぞれの仕事に従事しています。

 

 今日から皆さんも聖隷の一員です。これから皆さんは、三方原の地で、精神を磨き、それぞれの専門的知識と技術を習得します。私は、対人援助職において、知識や技術もさることながら、それ以上に、その人の人柄や人格が大切だと考えています。それは、対人援助職の仕事は、その人の人格を基盤とした他者との関係性の上に、知識や技術が有効かつ効果的に発揮されるからです。

 

 青年期の皆さんは、人格形成の大切な感受期にいます。そのような皆さんにとって、どのような環境に自分自身の身を置くかということが、極めて大切です。なぜなら、人間は環境から働きかけられ、また環境に働きかけることで、自己を形成していくからです。あなた自分自身の身を置く環境が、あなたの人格の現れであるとも言えます。

 私たち聖隷クリストファー大学は、聖隷発祥の三方原の地で、また聖隷の精神の根づいた病院・施設で、建学の精神を身をもって体感し、知と技を磨く、生きた学びを実践することが、私たちの最も大切な普遍的・教育的価値であると考えています。

 

 新入生の皆さんが、創設者から今日まで受け継がれる「生命の尊厳と隣人愛」の精神を継承し、人々の命と幸福に尽くす保健医療福祉及び教育・保育の専門職業人に成長されることを願い、学長のことばといたします。

2024年4月2日

聖隷クリストファー大学

学長 大城昌平

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2024年3月14日 (木)

卒業生・修了生の皆さんへ

 今年度の学部卒業生は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年4月の入学生です。入学時から在学中を通して、コロナウイルスに翻弄され、厳しい感染対策を強いられもしました。そのような中になって、看護師、社会福祉・介護福祉士、リハビリテーション専門者、保育士・幼稚園・小学校・養護教諭になるという初心を貫いて、卒業を迎えられました。皆さんに、心より敬意と感謝の気持ちをお伝えます。

 2023年度卒業・修了式 学長のことば

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 今こうして皆さんの前に立つと、4年前の入学式のことを思い出します。

 当時、未知のウイルスと言われた、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、私たちは深刻な状況に直面していました。日本でも、緊急事態宣言が発出され、感染予防の徹底と、外出の自粛が要請されました。

 本学も急遽、遠隔授業を行うことを決め、入学式の当日、この場で皆さんにお伝えました。期待に胸を膨らませて、入学式に臨んだ皆さんにとって、大変大きな戸惑いと、不安であったと思います。

 その後も、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、黙食の励行など、対人援助職を目指す皆さんには、より厳格な感染対策をお願いいたしました。同級生や教員との親密な関係性を築くことで、アイデンティティを形成していく青年期の皆さんには、それらの対策は苦痛であり、孤独でもあったと思います。感染の拡大が生じるたびに、期待や希望を叶えられない、焦燥や失望を覚えたことでしょう。また病院や施設での実習でも、感染の不安に対峙しつつ、時に中断を余儀なくされる中で、奮闘されてもきました。 

 そして本日ここに、晴れやかに自信に満ちた皆さんを前にして、喜びと感謝の念に耐えません。皆さん、今日まで目標を見失しなうことなく、自らを鼓舞し、多くの困難を乗り越えてこられました。本当におめでとうございます。

 ご家族の皆様に、お慶び申し上げます。ご家族の皆様も、今日まで多くの困難を経験されたと思います。そのような中にあって、卒業生・修了生が、今日の日を迎えることができましたのも、ご家族の支えがあったからです。誠にありがとうございました。

 また、ご来賓の皆様、非常勤講師の先生方、実習等でお世話になった皆様に、お礼申し上げます。現場のひっ迫した状況の中で、献身的に学生教育に当たってくださいました。卒業生・修了生は、皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、これから現場で活躍していくことになります。引き続きのご指導をお願いいたします。

 さて、今私たちは「予測不能の時代」にいます。新型コロナウイルスなどの新興感染症の流行、地震や豪雨などの自然災害の発生、紛争や戦争の勃発、など、本当に思いもよらないことが起こるものだと実感いたします。そのような出来事が起こる度に、私たち人間がいかに弱い存在であるかを、思い知らされます。また同時に、そこから立ち上がる人間の強さ、偉大さ、尊厳を知ることにもなります。

 最近、「レジリエンスresilience」という概念や言葉を見聞きします。レジリエンスとは、「柔軟性、回復力、適応力」という意味です。これは変化する環境や課題に対し、自らを柔軟に適応・変化させ、より良い状態に飛躍する力、すなわち弱さを強さに変える力といえます。人類は誕生以来、幾多の致命的な困難に対処し、レジリエンスを身につけてきました。私たち自身も、経験したことです。

 皆さんはこれから、保健医療福祉・教育の専門職業人の道を歩まれます。それは人間の弱さを支え、レジリエンスを引き出し、真の人間の強さを導く仕事にほかなりません。素晴らしい仕事です。

 皆さん思い出してください。新型コロナウイルスの感染が急拡大した時、連日、感染者数や死亡者数が報道され、保健医療福祉の混乱と崩壊の様子が映し出されていたではありませんか。またその一方で、人々を懸命に救い支える、私たちの先輩方の姿に感銘を覚え、勇気と希望を、与えられもしました。私たちは皆さんのように、保健医療福祉・教育を担う人がいなければ、人の命や健康、生活はもちろんのこと、この社会も根底から崩れてしまうことを、再認識いたしました。このように、皆さんの仕事は、この社会を安定的に維持するために、最も大切な社会的共通資本なのです。

 皆さん、皆さんに与えられた仕事を愛し、自信と誇りを持って、その道を歩んで行ってください。そこには必ず、生きる喜びと、真の幸福があると思います。

 さて大学院修了の皆さん、皆さんもコロナ禍での、厳しい現場の仕事と、研究との両立で、ご苦労をされたと思います。それを乗り越えて、ここに修了を迎えられました。心より敬意を表します。

 これから皆さんには、保健医療福祉分野のリーダーとしての役割が期待されます。先ほど、今私たちは「予測不能の時代」にいる、と申し上げましたが、未来を恐れる必要はないと思います。なぜなら、未来は常に現在によってつくられるからです。皆さんのリーダーとしてのビジョンと行動が、より良い未来を築く、レジリエンスの原動力になると信じるからです。皆さんが、それぞれの学問分野、組織、社会に変革をもたらすリーダーとして、活躍されますことを願っています。

  終わりとなりますが、卒業生・修了生の皆さんが、これからも本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」によって、人々を支え、知と技を磨き、保健医療福祉・教育の専門職業人として成長されますことを祈念いたします。

2024年3月7日

聖隷クリストファー大学

学長 大城昌平

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