2019年6月29日 (土)

「日本キリスト教社会福祉学会第60回大会」、「日本キリスト教社会事業同盟第75回総会・研修会」合同開催

先日、本学において、「日本キリスト教社会福祉学会第60回大会」、並びに「日本キリスト教社会事業同盟第75回総会・研修会」が合同で、盛況に開催されました。日本キリスト教社会福祉学会は、1960年に、キリスト教の福音に基づいて社会福祉の科学的研究と実践を促進し、広く社会福祉の発達に寄与することを目的として発足した社会福祉系の学会です。また、日本キリスト教社会事業同盟は、キリスト教信仰を基盤として立つ、社会福祉事業団体及び社会福祉諸分野で実践活動を行っているキリスト者からなる組織として1949年に設立された団体です。この両団体による大会が、我が国の社会福祉並びに社会事業の発祥の地ともいえる浜松・三方原において合同開催でされたことは、大変意義深いものでした。

 

聖隷学園を含む聖隷グループの発祥は、1926年、創立者である長谷川保を中心とした若き数名のクリスチャンによって興された、社会事業「聖隷社」が起源となります。そして現在、聖隷グループはここ浜松を中心に全国に広がって、我が国を代表する保健医療福祉・教育の事業集団に発展しています。この発展の基本原理は、キリスト教信仰とその教えを忠実に実践し、社会の必要に絶えず挑戦してきたことにあります。先人が興した聖隷の事業は、我が国の社会福祉並びに社会事業の理念・実践のモデルとなって、その発展の礎をも築きました。

 

大会では、聖隷の先人の生き方と事業の歩みを遡上として、「日本キリスト教社会福祉学会」の学問体系と、「日本キリスト教社会事業同盟」による実践の英知が融合し、これからの「共に生きる」地域共生社会の構築に向けて議論がなされました。共生社会の実現には、私たちの先人が実践してきたように、隣人愛の精神を基に、それぞれの多様性を重んじ、他者と社会への奉仕の実践が基本原理となるでしょう。そしてそれは宗教をも超えて、私達自身がその先頭に立ち得るかが問われてもいます。

 

大会を企画運営いただきました、大会実行委員長の稲松義人先生(小羊学園理事長)、準備委員の福田俊子先生・坂本道子先生(本学・社会福祉学部)に深謝いたします。

2019年5月31日 (金)

「令和時代、幸福なる時代へ」

「令和」の時代が始まりました。その名のごとく、美しく平和で、幸福な時代であることを願います。

令和は、高齢化、人口減少(少子化)、労働人口(現役世代)減少、高税率(社会保障費増)、国際競争力の低下(産業の低迷)、格差社会、グローバル化の進展とポピュリズム(自国第一主義)などなど、困難な時代が予想されます。また科学技術が進歩し生活は便利になりましたが、幸福感は高くありませんし、閉塞感や虚無感が広がっているようにも感じます。このような時代、人間にとって真の幸福とは何かが問われることになるでしょう。

幸福なる時代のキーワードは、教育・福祉・医療だと思います。幸せは、お金や物、地位や名誉といった成功の基準ではなく、その人の思想や生き方、人と人との関係、コミュニティーから生まれるものではないかと思います。そしてそれを支える教育・福祉・医療が、そのカギとなるでしょう。本学は、未来の教育・福祉・医療を担う学生(専門職業人)を育成する大学です。その学生がもつ人を愛する心や幸福観が、人々や社会の幸福にもつながるでしょう。

教育・福祉・医療を支える仕事は、現在注目されるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの大きな事業や資金を生み出すことはできません。しかし、それらの活動を通して隣人と社会に奉仕することに、人間の真の生きる歓びと幸せを見いだすことができると信じます。

令和時代を担う学生皆さんが幸福なる時代の主役として、幸福観・人間観を磨いてほしいと願います。

2019年4月26日 (金)

現代のクリストファーへの成長を祈念して

2019年度は、看護学部158名、社会福祉学部93名、リハビリテーション学部125名、助産学専攻科17名、大学院博士前期課程19名、博士後期課程7名の新入生を迎えました。新入生の皆さん一人ひとりが、保健医療福祉・教育の未来を担い、聖隷の歴史と伝統を継承し、また自らの手によっても新たな歴史を創り上げていかれることを祈念いたします。

 

4月4日に挙行した入学式での学長式辞を掲載いたします。


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今からちょうど70年前の1949年、私たちの先人は、三方原の地に、聖隷学園の前身である「遠州基督学園」を誕生させました。キリストの教えに基づいた、隣人愛に捧げられた学園です。そして今ここに、その精神を受け継ぐ、新入生の皆さんを、私たち聖隷クリストファー大学に迎えることができ、感謝と喜びの念に堪えません。

 

419名の新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。教職員・在学生並びに卒業生・修了生を代表して、心より皆さんを祝福し、歓迎いたします。

そして、今日の佳き日をお迎えになった、ご家族の皆様にも、お祝いと感謝の気持ちをお伝えします。誠に、おめでとうございます。

 また、本日ご多用のなかご臨席くださいました、ご来賓の方々に、心よりお礼を申し上げます。誠に、ありがとうございます。今後とも、保健医療福祉・教育の未来を担う、学生の成長を見守り、ご支援くださいますようお願いいたします。

 

本学は、1949年の開学以来、キリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」を建学の精神として、保健医療福祉・教育の人材育成に努めて参りました。今日では、看護学部・社会福祉学部・リハビリテーション学部の3学部と助産学専攻科、そして大学院博士前期並びに後期課程を有する、保健医療福祉・教育の総合大学に発展しています。また今年度より、地域社会とグローバル化のニーズに応えるため、看護学部では看護師特定行為研修を、社会福祉学部こども教育福祉学科では国際バカロレア教育を取り入れた小学校教諭教職課程を、リハビリテーション学部では国際リハビリテーションコースを開設いたしました。新入生の皆さんには、本学の恵まれた教育・研究・実践の環境を存分に活用し、建学の精神に裏付けられた高い知識と技術を有する専門職業人に成長されますことを祈念いたします。

 

さて新入生の皆さんには、この入学式にあたって、私たちに与えられた3つの使命と責任について、心に留め置いていただきたいと願います。

 

1つ目は、本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」についてです。

1930年、聖隷の事業は、当時まだ不治の病で、感染の恐怖から家族からも見捨てられ、住むところもなく、食べることもできなくなった、一人の結核病患者と共に生きることから始まりました。その運営は、筆舌に尽くせない迫害と困窮・困難を極めるに至ります。しかし、そのような中にあっても、先人はまさに聖なる神様の奴隷として、自らのすべてを犠牲に、一人ひとりの対象者の命の尊厳を守り、愛を尽くされました。この先人が身をもって示した、自己犠牲に基づく「隣人愛」の精神が本学の教育理念であります。本学に学ぶ私たちは、病気や障害、生活に困難を抱える方々に寄り添い、「隣人愛」を実践できる人に成長しなければなりません。しかし、利己心を超えて、隣人に尽くすことは決して容易なことではありません。しかしまた、その言葉をいつも胸に抱き、日々の生活の中で隣人に心を配り、愛を尽くすように努めることで、「隣人愛」を生きる人間に成長することができると思います。

 

2つ目は、学修者としての自己成長についてです。

科学技術が急速に発展する現在、大学教育は、知識の伝達から思考力、構想力、行動力を養うことが求められます。そのため本学では、学生による主体的な知識の修得、学生と教員の協働による知と経験の共創、国内外の臨地での実践、この3つの学習形態を統合した、学生の主体的学習 active learning を推進しています。この active learning では、学生皆さんが学修者としての責任を自覚し、真摯さと素直な心もって、物事に挑戦することが求められます。未来ある皆さんにとって、最大の失敗は挑戦しなかったことを悔いることです。自らの成長は、どのような状況にあっても、自己に帰属することを忘れないでください。私たち教職員も、皆さんと共にあることを誓います。

 

3つ目は、専門職業人プロフェッショナルとしての使命と責任についてです。

我が国は今、少子高齢化や人口減少が急速に進展し、あらゆる面で困難な時代を迎えています。しかし、人々の生命、健康、生活を守り支える皆さんの使命は、どのような時代にあっても、価値高く、尊いものであります。本日皆さんは、その専門職業人「プロフェッショナルになる」という明確な使命と目標を抱き、今日の日を迎えられました。プロフェッショナの道は、真摯に自分自身に向き合い、長い視野で自分の能力を開発していく、長い道のりです。皆さんが、今日この場合この時の初心を深く心に刻み、生涯にわたる自己研鑽の道を歩まれることを願います。

 

ナチス強制収容所での体験を著した「夜と霧」の著者である、ヴィクトール・E.フランクの言葉です。「与えられた使命と責任を受け入れることは、人間存在の基礎である。またそれは、挑戦を受け入れることである。挑戦を受け入れることは、未来の扉を開くことである。」

 

さて大学院生の皆さん、皆さんは、それぞれの学問分野・領域の課題を探求するため、大学院の門をくぐられました。大学院の門は、真実の知を愛し求める、終わり無き旅路の始まりです。皆さんは、その旅人であるといえます。その旅人は、自らの無知を自覚する人、学問への謙遜と奉仕を志す人、真理に対する感激の深き人、そして懐疑と思索の苦役に耐え得る人です。大学院生の皆さんが、旅の途中で倒れても立ち上がり、新たな知を創造し、学問分野・領域の発展に貢献されますことを期待いたします。

 

結びに、新入生の皆さんが、「隣人愛と知の技」を磨き、人々の安寧と幸福を導く「現代のクリストファー」に成長されますことを祈念いたします。そして、皆さんの勇気ある挑戦と、困難に耐え得る力を祝します。

 

 

2019年4月4日

聖隷クリストファー大学 学長

大城昌平

2019年3月29日 (金)

2018年度卒業式・修了式:建学の精神の継承

3月12日、2018年度の卒業式・修了式を挙行いたしました。看護学部151名、社会福祉学部84名、リハビリテーション学部105名、助産学専攻科17名、大学院博士前期課程17名、博士後期課程4名が、聖隷の精神を胸に社会に巣立ちました。皆さんの自信と誇りに輝いた笑顔が心に残ります。以下に、学長式辞を掲載いたします。

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2018年度卒業式・修了式 学長式辞

本日、本学の学位授与方針に基づいて、学士の学位を授与された学部卒業生の皆さん、修士並びに博士の学位を授与された大学院修了の皆さん、そして助産学専攻科修了の皆さん、これまで皆さんが尽くされた努力と研鑽、そして成長に、心から祝福を申し上げます。誠におめでとうございます。

また今日まで、学生皆さんの生活、学習、研究を支え、大学運営にもご支援ご協力いただきました、ご家族の皆様に、お慶びと感謝を申し上げます。誠におめでとうございます。

そして、日頃より本学の教育研究・運営にご支援ご指導を頂いています、病院施設・諸団体の皆様、非常勤講師の先生方、地域の方々に、心より感謝を申し上げます。誠にありとうございます。

 

さて、卒業生の皆さんは、本日より、本学の建学の精神であるキリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」に裏付けられた保健医療福祉・教育の専門職業人としての道を歩み出されます。人々の生命と健康と生活を守り支える皆さんに与えられた使命は、最高に貴いものであります。その貴い使命に、日々尽くされますことを願います。

 私たちの精神と使命について、本学の前身である聖隷学園浜松衛生短期大学の時代に書された一文がありますので、紹介いたします。「人の生命は、傷つき、病み、死ぬべき弱い存在である。自分と他者が共有している、この人間の弱さの自覚と共感と互助こそが、人間理解と愛と感動の基本である。」という文章です。

 

人間は思い悩み、傷つき、病気や障害を抱え、老い、そして死にゆく定めの弱い存在である。しかし、この一文は人間の弱さに着目しつつ、その内にある人間の強さをも明らかにしています。病気や障害、老い、死の恐怖に耐えることは、生きることの尊さ、命の尊さを知ることでもあります。苦しみや悲しみを抱え、与えられた苦悩を受容する態度は、謙虚に物事を内省し、内なる精神世界を充実させるでしょう。私たちの望まない試練が、人間を強くするということは真実でもあります。人間は弱さを通じて、成長し、成熟し、尊厳ある強い存在へと昇華していく。

このように、人間の「弱さ」を、人間理解の基本に据えることで、そこに人間の真の強さとしての「生命の尊厳と隣人愛」の精神が生まれる。これが本学の教育理念のルーツであります。

皆さんの仕事は、この人間の弱さに、直に向き合う仕事です。それは、対象者に寄り添いつつ、自分自身の弱さに向き合うことに他なりません。それは、苦役を伴うことでもあります。しかし、私たちもまた、その苦役を通して、自分に与えられた使命の価値を知り、人間として、専門職業人として成長することが出来るのだと思います。それが、仕事から得られる報酬であり、喜びであり、感謝であり、生きがいであり、人間の幸福であるといえます。

このように考えたとき、皆さんに課された仕事は、単なる義務や経済としての「職業」ではなく、「天職」と呼ぶことができるでしょう。私は、人にはそれぞれに与えられた天職があり、その天職を全うすることが価値のある生涯を送ることになると信じます。皆さんが、それぞれに与えられた仕事を愛し、その貴い使命を生きられますことを願います。

神学者・哲学者であるアウグスティヌスの言葉です。「謙虚さのあるところに尊厳があり、弱さのあるところに強さがあり、死のあるところに生がある。何かをなそうと思えば、決してそれらを見下してはならない」

 

さて、大学院修了の皆さんは、高度専門職業人、研究者・教育者としての倫理性、科学性、そして奥深い学識を身につけ、各専門分野の発展に貢献されました。心より敬意を表します。

これから皆さんには、各専門分野の学術研究・教育並びに組織のリーダーとしての活躍が期待されます。リーダーに求められる資質は多々ありますが、私がその1つをあげるならば、「創造的知性」を挙げたいと思います。現代の知性人とはいかなるものか、哲学者ベルクソンは「思索人の如く行動し、行動人の如く思索する」といいます。創造的知性とは、歴史を尊重しつつ、新たな価値を生み出す構想力と行動力といえます。皆さんが修得された精神性と学識、そして創造的知性を発揮して、それぞれの学問分野、組織、社会の発展に貢献されますことを期待いたします。

 

卒業生・修了生の皆さん、皆さんの人生は、今日この時・この場から始まると言っても過言ではありません。私たち教職員は、皆さんの幸福を心から願います。しかしその幸福は、成功や不成功という次元ではなく、自らの幸福を脱ぎ捨てることのできる者、他の人の幸福を支えることのできる者、すなわち隣人を愛する者であることを、私たちは学んできました。その真の幸福観をもって、あらゆる困難に立ち向かって欲しいと願います。

 

結びに、皆さんが、「隣人愛と知の技」で、人々の安寧と幸福を導く、クリストファーの道を、歩み続けられますことを祈念いたします。そして、皆さんの幸福なる知性を祝します。

 

2019年3月12日

聖隷クリストファー大学 学長 大城昌平

2019年2月28日 (木)

新年度(2019年度)に向かって

 2月は、各種の国家試験の時期です。本学でも、看護学部、社会福祉学部、リハビリテーション学部のそれぞれの学生が遅くまでラーニングコモンズや学生ホール、演習室などで勉学に励んでいます。それぞれの力が存分に発揮され、良い結果が導かれることを祈っています。

 

また2月、事業評価と計画策定の時期でもあります。今年度は、各学部の教育特徴の強化、国際化、社会福祉学部の再編などに取り組み、それぞれの成果がこれから現れてくるだろうと評価しています。次年度も今年度のこれらの事業を着実に推進するとともに、1)内部質保証、特に教育と学習の成果の可視化に向けたDP(ディプロマポリシー:学位授与方針)ルーブリックの策定とeポートフォリオの導入、2) 社会福祉学部の社会福祉と介護福祉の学科統合による教育体制の再整備、3) 学費無償化(授業料等減免と給付型奨学金の支給)に向けての学内整備、などを重点課題としています。

聖隷学園では、2020年にクリストファー小学校が開学します。英語イマージョン教育、探究型教育を柱とした新時代を担う新たな教育が始まります。これにより、こども園から大学・大学院までの一貫した聖隷の教育体系が整うことになります。そして、次なる目標には、メディカルスクール構想があります。大学でも、これらの学園構想に中で、さらなるグローバル化の推進とメディカルスクールにつながる教育体制の構築を進めていきます。

このようなビジョンの実現に向けて、2019度は大きな飛躍のための準備の一年であり、大きなターニングポイントの年となるでしょう。これからの聖隷学園と大学の発展をご期待ください。

2019年1月30日 (水)

2019年の座右の言葉 「天地の道理」

新しい年を迎え、ひと月が過ぎました。皆さんそれぞれ、今年の目標に向けて始動されていることでしょう。先日、卒業生が訪ねて来て、今年の言葉は何ですかと尋ねられました。この学長歳時記を読んで、その年の「言葉」を一つの指標としているとのことで、大変嬉しく思いました。

 

昨年の言葉は、松尾芭蕉の「不易流行」でした。時代が変わっても決して変えてはならない普遍の真理と、社会の変化に応じて、新たな発展と価値創造を意味する言葉でした。その言葉通りに思索し行動できたかは、これからの評価であろうと思います。

 

さて、今年の座右の言葉は、「天地の道理」という渋沢栄一の「論語と算盤」からの言葉です。先号の学長歳時記にも書いたように、昨年は企業の不祥事が相次ぎました。論語と算盤は、経営の理念と利益の両立を図り、国と人々、富を求めた経営哲学と戦略を著したものです。本書を昨年末もう一度で読み直し、心に残った言葉が天地の道理です。天地の道理とは、人としての正しい考え方や生き方と言えます。目の前の利益や成功・失敗にとらわれず、物事の本質を見極め、天地の道理に適うかを自ら問い判断し、誠実に努力するという意味です。今年、虚栄心や利己心を排斥し、素直さと謙虚さ、感謝の気持ちを忘れず、正しい判断と行動ができるよう努めたいと思います。

 

今年もまた本学の教育研究並びに諸活動に、ご支援をお願いいたします。皆様のご多幸とご健勝を心より祈念いたします。

2018年12月28日 (金)

2018年を振り返って

2018年、今年の言葉は「災」でした。全国各地で災害が発生しました。年末を迎えた今日も、悲しみや困難な生活にある方々がおられると思います。新たな年のご多幸をお祈りいたします。そのような受難のなかで、ボランティアの方々が被災された方々の援けとなっています。心からの敬意を表します。

 

聖隷の事業も、一人の結核を患った青年を引き受けることから始まりました。当時結核は、不治の病で、身内からも感染の恐怖から忌み嫌われました。先人は、周囲の住民からも度重なる迫害を受けることになります。しかし、自らの全てを犠牲にして、苦しむ人、疎外された人、病気の人、障がいを持つ人に愛を尽くしました。聖隷の事業の元始には、受難と愛があったといえます。それは、「自分のように、隣人を愛しなさい」という聖書の教えに忠実な生き方でした。受難に直面した人たちを思うことは、愛をも見いだすことに他なりません。

 

また今年は、企業の不祥事も相次ぎました。最近では、カルロス・ゴーン氏の逮捕に言葉を失いました。企業は、社会の繁栄に尽くすことが理念であり、存在意義であるだろうと思いますが、その企業理念と道理を失い、自己の利益と富と地位を追求した結果なのかもしれません。「施し散らして、なお富を増す者あり、与えるべきものを惜しんで、かえって貧しくなる者あり。」この教えも、本学の先人の生き方でした。

 

2019年も、建学の精神を大切にした専門職業人の教育と、新たな発展と価値創造を目指します。

2018年11月30日 (金)

心の医療と教育

先日、第63回日本新生児成育医学会・学術集会に参加いたしました。教育セミナーのコメンテーターと、サテライトセミナーの講師をさせていただきました。本学会は、乳幼児の成長と発達を支援する医師や看護師など医療職者を対象とした学会です。今回の学会でも、科学的根拠に基づいたエビデンスベースの医療(evidence-based treatment/practice)の研究成果が示されています。一方、教育講演やシンポジウムでは、医療における心への語りかけの医療ナラティブ・アプローチ(narrative-based approach)の大切さも指摘されました。その両者の視点と感性を持つことの大切さを改めて感じた、あたたかく素晴らしい学会でした。

 

日本における新生児医療は世界のトップレベルです。いわゆる未熟児の赤ちゃんの救命率は他の先進国と比較して高く、看護ケアも赤ちゃんと家族に大変優しいケアが推進されています。赤ちゃんの救命とともに、tender loving care(優しく思いやり深いケア)、family-centered care(赤ちゃんと家族を中心としたケア)が我が国の新生児医療の基本理念になっています。それは日本の医療者の相手の心をおもう繊細さによるものでしょう。

私達は、その医療者の心を大切に育成しなければなりません。ややもすると、科学的な根拠に偏った心を忘れた医療に流れていくきらいも感じます。医療は、科学的根拠に基づいた治療やケアを適切に活用するとともに、その背景には対象者の心のケアがなされなければなりません。「サイエンスとアート」と言われる所以です。

赤ちゃんもまた心を持った存在です。心の発達基盤となる快・不快を表します。その心の状態を察知して、その心に寄り添うケアを行うことで、赤ちゃんのあたたかな心が育ちます。愛された人(loved one)は、自分自身をも愛すべき者(lovely one)に、やがて人を愛する者(loving person)へと成長していくでしょう。

 

本学の歴史の始まりには、はじめに愛がありました。当時は、医療者と医療を受ける人々の心の交流と癒やしに基づいた医療でした。私たちは保健医療福祉を担う専門職業人を育成する教育者として、先人が実践してきた愛による癒しの医療を再確認し、そしてそれを支える医療者の心をも大切に育成することを再認識した学会でした。

2018年10月31日 (水)

2040年の高等教育に向けて

過日、日本私立大学協会第149回秋季総会が仙台にて開催されました。主要なテーマは、2040年の高等教育に向けての論点整理と課題解決の方略についての検討でした。

2040年には、人口は1億2,500万人(2018年度)から1億728万人となって1,800万人も減り、18歳人口も2017年の120万から88万人になる推計です。2040年が高等教育の大きな転換期となるということで、大学は強みや特色の強化を図り他大学との差別化を明確にして、学修者中心の質の高い教育を提供することが問われることになります。また社会の背景は、超スマート社会(Society 5.0)といわれるように、IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新が進展し、今までにない新たな価値や社会システムが生み出されるといわれます。加えて健康寿命が延伸し、人生100年時代のシニアの活躍や、外国人雇用などによるグローバル化がさらにすすみます。このような社会背景のなか、大学は建学の精神を遵守・堅持するとともに、学修者中心の質の高い教育を提供し、社会に貢献する人材を輩出しなければなりません。

 

本学における教育改革は、現在以下のような取り組を行い、他大学には無い質の高い教育を目指しています。

・現場での実践教育の充実:聖隷グループ等の病院施設や地域での実践

・教学マネージメント:学修者を中心とした教育の質保証と学修成果の可視化

・2040年に必要とされる人材育成:技術革新を活用した教育カリキュラムと教育方法

・卒業生・修了生のマルチステージでの活躍(キャリア)支援

・社会人の学び直し支援(リカレント教育)

・高大接続入試改革:保健医療福祉領域への関心の喚起

・地域連携(産学官連携プラットフォーム形成)等による地域貢献

・グローバル化への対応:英語教育の充実、海外交流協定校等々の研修・実習

 

本学は、建学の精神「生命の尊厳と隣人愛」に裏付けられた保健医療福祉の専門職業人の育成を通して、人々の健康と幸福、そして地域と世界の福祉に貢献することが使命です。そのためには、一人ひとりの学生が柔軟な強い精神と他者を愛する豊かな人間形成を目指し、専門的な知識と技術を身につける事が必要です。普遍的な建学の精神を尊重し、一方では次の時代を見据えた教育改革をすすめ、未来を担う保健医療福祉の人材養成を目指します。

2018年9月28日 (金)

今流れつつある時間を大切に生きる

日々の仕事に追われ、我々は何者であるかを見失いがちになります。毎月の大学部長会及び教授会で、その時々に応じた聖句が宗教主任の先生から教員に送らます。建学の精神を再確認し共有する良い機会となります。今月9月の聖句は、フィリピの信徒への手紙 3章13節(目標を目指して)でした。

 「なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、・・・目標を目指してひたすら走ることです。」

夏休みが明け、秋セメスターの始まりにおいて、学生を迎える時期に相応しい聖句です。時間には物理的時間と心理的時間があります。物理的時間は、いわゆる時計の時間で、それは1分1時間と量的に皆に共通です。一方、心理的時間は、その時々の時間を一人ひとりがどのように過ごすかによって変わってくる質的な時間です。哲学者ベルクソンは、心理的時間を「流れつつある時間」と表現しました。今この時の流れつつある時間を大切に生きることが、それぞれの人生を豊かにすることを表わしているのでしょう。私たちには自由意志があります。今のこの時間をどのように過ごすか、その選択が委ねられているのも人間の素晴らしさです。

もう一つ、この聖句がパウロによる書簡であることから読むことができます。パウロは、はじめは熱心なユダヤ教徒で、キリスト教徒を激しく迫害をもしていましたが、イエスに出会いキリスト教徒に回心した人物です。この聖句の「・・・後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、・・・」には、過去の自分に決別し新しい生き方をするという意味が込められているようです。同様に、パウロによる書簡であるコロサイの信徒への手紙(3章9節)には、「古い人をその行いと共に脱ぎ捨て、造り主の姿に倣う新しい人を身に付け、日々新たにされて、真の知識に達するのです。」とあります。今、この流れつつある時間を生きること、過去にとらわれない新たな生き方をすることは、新しい人へ成長することでもあります。

秋セメスターの始まりにあたって、学生皆さんが、今流れつつある時間を大切にし、日々新たに成長されることを願います。