2024年3月14日 (木)

卒業生・修了生の皆さんへ

 今年度の学部卒業生は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年4月の入学生です。入学時から在学中を通して、コロナウイルスに翻弄され、厳しい感染対策を強いられもしました。そのような中になって、看護師、社会福祉・介護福祉士、リハビリテーション専門者、保育士・幼稚園・小学校・養護教諭になるという初心を貫いて、卒業を迎えられました。皆さんに、心より敬意と感謝の気持ちをお伝えます。

 2023年度卒業・修了式 学長のことば

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 今こうして皆さんの前に立つと、4年前の入学式のことを思い出します。

 当時、未知のウイルスと言われた、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、私たちは深刻な状況に直面していました。日本でも、緊急事態宣言が発出され、感染予防の徹底と、外出の自粛が要請されました。

 本学も急遽、遠隔授業を行うことを決め、入学式の当日、この場で皆さんにお伝えました。期待に胸を膨らませて、入学式に臨んだ皆さんにとって、大変大きな戸惑いと、不安であったと思います。

 その後も、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、黙食の励行など、対人援助職を目指す皆さんには、より厳格な感染対策をお願いいたしました。同級生や教員との親密な関係性を築くことで、アイデンティティを形成していく青年期の皆さんには、それらの対策は苦痛であり、孤独でもあったと思います。感染の拡大が生じるたびに、期待や希望を叶えられない、焦燥や失望を覚えたことでしょう。また病院や施設での実習でも、感染の不安に対峙しつつ、時に中断を余儀なくされる中で、奮闘されてもきました。 

 そして本日ここに、晴れやかに自信に満ちた皆さんを前にして、喜びと感謝の念に耐えません。皆さん、今日まで目標を見失しなうことなく、自らを鼓舞し、多くの困難を乗り越えてこられました。本当におめでとうございます。

 ご家族の皆様に、お慶び申し上げます。ご家族の皆様も、今日まで多くの困難を経験されたと思います。そのような中にあって、卒業生・修了生が、今日の日を迎えることができましたのも、ご家族の支えがあったからです。誠にありがとうございました。

 また、ご来賓の皆様、非常勤講師の先生方、実習等でお世話になった皆様に、お礼申し上げます。現場のひっ迫した状況の中で、献身的に学生教育に当たってくださいました。卒業生・修了生は、皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、これから現場で活躍していくことになります。引き続きのご指導をお願いいたします。

 さて、今私たちは「予測不能の時代」にいます。新型コロナウイルスなどの新興感染症の流行、地震や豪雨などの自然災害の発生、紛争や戦争の勃発、など、本当に思いもよらないことが起こるものだと実感いたします。そのような出来事が起こる度に、私たち人間がいかに弱い存在であるかを、思い知らされます。また同時に、そこから立ち上がる人間の強さ、偉大さ、尊厳を知ることにもなります。

 最近、「レジリエンスresilience」という概念や言葉を見聞きします。レジリエンスとは、「柔軟性、回復力、適応力」という意味です。これは変化する環境や課題に対し、自らを柔軟に適応・変化させ、より良い状態に飛躍する力、すなわち弱さを強さに変える力といえます。人類は誕生以来、幾多の致命的な困難に対処し、レジリエンスを身につけてきました。私たち自身も、経験したことです。

 皆さんはこれから、保健医療福祉・教育の専門職業人の道を歩まれます。それは人間の弱さを支え、レジリエンスを引き出し、真の人間の強さを導く仕事にほかなりません。素晴らし仕事です。

 皆さん思い出してください。新型コロナウイルスの感染が急拡大した時、連日、感染者数や死亡者数が報道され、保健医療福祉の混乱と崩壊の様子が映し出されていたではありませんか。またその一方で、人々を懸命に救い支える、私たちの先輩方の姿に感銘を覚え、勇気と希望を、与えられもしました。私たちは皆さんのように、保健医療福祉・教育を担う人がいなければ、人の命や健康、生活はもちろんのこと、この社会も根底から崩れてしまうことを、再認識いたしました。このように、皆さんの仕事は、この社会を安定的に維持するために、最も大切な社会的共通資本なのです。

 皆さん、皆さんに与えられた仕事を愛し、自信と誇りを持って、その道を歩んで行ってください。そこには必ず、生きる喜びと、真の幸福があると思います。

 さて大学院修了の皆さん、皆さんもコロナ禍での、厳しい現場の仕事と、研究との両立で、ご苦労をされたと思います。それを乗り越えて、ここに修了を迎えられました。心より敬意を表します。

 これから皆さんには、保健医療福祉分野のリーダーとしての役割が期待されます。先ほど、今私たちは「予測不能の時代」にいる、と申し上げましたが、未来を恐れる必要はないと思います。なぜなら、未来は常に現在によってつくられるからです。皆さんのリーダーとしてのビジョンと行動が、より良い未来を築く、レジリエンスの原動力になると信じるからです。皆さんが、それぞれの学問分野、組織、社会に変革をもたらすリーダーとして、活躍されますことを願っています。

  終わりとなりますが、卒業生・修了生の皆さんが、これからも本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」によって、人々を支え、知と技を磨き、保健医療福祉・教育の専門職業人として成長されますことを祈念いたします。

2024年3月7日

聖隷クリストファー大学

学長 大城昌平

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2024年1月31日 (水)

「能登半島地震~復興への願いと祈り~」

 家族団らんで迎えた穏やかな正月は、午後4時過ぎに発生した能登半島地震で一変し、甚大な被害と大きな悲しみをもたらしました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災され、不安な日々を過ごされている方々へ心よりお見舞い申し上げます。

 発生から4週間が経ち、住民の皆さん、行政、医療従事者、ボランティアなど多くの方々が、被災された人々の日常の生活を取り戻すため、懸命に活動を続けておられます。

 大学でも、学生主催による募金活動が始まりました。少しでも何かの助けになればという、復興への願いと祈りによるものです。彼らが卒業し、それぞれ保健医療福祉及び教育・保育の専門職者となって、災害後の救急医療や、避難所や高齢者施設などでの健康や生活、教育支援に直接携わるのだろうと思い、活動を見守っています。今はそのための、大切な準備期間でもあります。

  「あなたがたもこのように働いて弱い者を助けるように、また、主イエス御自身が『受けるよりは与える方が幸いである』と言われた言葉を思い出すようにと、わたしはいつも身をもって示してきました。」(使徒言行録20章34~35節)。難しいことですが、心にとめておきたいと思います。

2023年12月27日 (水)

今年の漢字 “動”

“過ぎ去ったものに-ありがとう、これから出会うものに-よし!”

世界平和に貢献した第2代国際連合事務総長ダグ・ハマーショルドの言葉です。今年出会ったすべての物事に感謝し、新しい年を迎えたいと思います。

 1年の終わりを迎え、今年の手帳を開いています。毎年発表される今年の漢字に倣って、私の漢字を考えると、 “動”の文字が思い浮かびました。今年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類相当になったこともあって、堰を切ったように対面での活動が活発になりました。1月福岡(帰省)、2月京都、フィリピン・イロコス州、3月東京、4月福岡、5月大阪、富山、6月福岡、大阪、7月アイルランド・ダブリン、高知、9月東京、11月は東京、高知、12月東京、と月1回ぐらいのペースで出張となっています。これでもオンラインでの会議やセミナーが増えて、随分出張機会は少なくなりましたが、ここ数年からすると良く“動”いた一年であったと思います。中には4年ぶりの再会となったものも多く、改めて対面の良さを実感しました。

 一方で、急激な“動”への転換の中で、活動的になることが、何らかの仕事を成し遂げたような、自分の仕事や価値が高められたような錯覚に陥っていないかという反省もあります。1年の終わりの静かな時を迎え、独りになって、内なる声を聴くことの大切さも感じます。

 これから出会うであろういろいろな物事に前向きに取り組むことと、独り静まる心をもつこと、これらの間のバランスを保つことを大切にしたいと思います。

 来る年の皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

2023年11月30日 (木)

時の贈り物

秋セメスターは、贈り物の時です。

11月4日には、第22回聖灯祭“Revival”が開催されました。今回の聖灯祭は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に変更されたこともあって、制限を設けない通常開催でした。共に楽しみ、思い出深い、時の贈り物でした。

同日、卒業生・修了生、退職教職員の方々が帰学されるホームカミングデーも開催されました。思い出を分かちあい、旧交をあたためた、時の贈り物でした。

11月9日(木)は、感謝祭の行事がありました。毎年、大学附属クリストファーこども園の子どもたちが、りんご、みかん、かきなどの秋の恵みを運んでくれます。添えられたメッセージカードには、子どもたちが描いたぶどうとみかんの挿絵とともに、「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。」(テサロニケの信徒への手紙Ⅰ 5章16‐18節)という聖書の言葉を届けてくれました。喜びと感謝の、時の贈り物でした。

そして、12月3日(日)からは、アドベント(待降節)です。11月29日(水)には1号館ロビーにクリスマスツリー、アドベント・クランツが飾り付けられ、イエスの誕生をお祝いする準備が整えられました。そして、クリスマスツリーの点火祭、クリスマス礼拝、近隣施設へキャロリングが届けられる、時の贈り物です。

与えられる喜びを大切に、隣人に愛を贈ることができますように!

2023年10月30日 (月)

平和を願う祈り

猛暑の夏が過ぎ、10月下旬になってようやく秋らしくになってきました。とは言え、この時期になっても、日中は夏日が続き、地球温暖化の深刻化を知ることができます。

この頃は、餌を求めて市街地に出没するクマ被害が、連日報道されています。

世界の情勢も深刻化しています。ウクライナとロシアの戦争は膠着状態に入り、イスラエルとパレスチナの紛争は日増しに激化しています。ガザ地区の悲惨な戦場下にある子たちたちの悲痛な叫びに心を痛めます。

日本は平和な日常ですが、大国間競争に巻き込まれる懸念が広がってもいますし、歴史的円安と物価高騰が続き、生活に困窮する家庭や人たちが増えてもいます。

大学では、このような社会情勢のなかにあっても、学生皆さんがそれぞれの目標に向かって学修や実習に取り組んで、明るく活気ある日常です。彼らが、生命の尊厳と隣人愛の精神をもった保健医療福祉及び教育・保育の専門職者として、平和と、人々の命と健康、生活と福祉に貢献されるのだと、遠くに思いに馳せながら、世界の平和を祈らざるを得ません。私たち一人ひとりは無力な存在です。しかし、平和を願う祈りを捧げることができます。

 

「平和を願う祈り」

<アッシジの聖フランチェスコ(聖フランシスコ)1181~1226年>

主よ、私をあなたの平和の道具にしてください。

憎しみのあるところに愛を、争いのあるところに許しを、

分裂のあるところに一致を、疑いのあるところに信仰を、

誤りのあるところに真理を、絶望のあるところに希望を、

闇に光を、悲しみのあるところに喜びを、

もたらすものとしてください。

 

主よ、慰められるよりも慰めることを、

理解されるよりも理解することを、

愛されるよりも愛することを、

私が求めますように。

 

なぜなら私が受けることは与えることにおいてであり、

許されるのは許すことにおいてであり、

我々が永遠の命において生まれるのは死においてであるからである。

 

2023年7月31日 (月)

春セメスターの終わりに

梅雨明けから、体温を超えるような酷暑が続いています。大学では学生の皆さんが、この暑さに負けず、春セメスターの修了を控え、学生ホールや演習室でまとめの学修に精を出しています。その姿に、成長と頼もしさを覚えます。

春セメスターの礼拝も最終を迎えました。宗教主任の永井英司先生が「身を起こす青年サウロ」という題で、使徒言行録9章の「サウロ(パウロ)の回心」のお話しをされました。

ユダヤ教徒であったサウロは、誤った正義感や自意識から、キリスト教徒を捕まえ迫害を加え殺害さえしていました。ある日突然、まばゆい光が天からサウロを照らし、その輝きでサウロは目が見えなくなってしまいます。健康を失い挫折したサウロのもとに、イエスの遣いのアナニアが訪れ、福音を告げます。するとサウロの目から、うろこのようなものが落ち、目が見えるようになります。そして回心し、180度生き方を転換して宣教の旅に出るというものです。

“うろこのようなもの”は、英語で“something like scales fell from Saul’s eyes”というそうです。このScaleには、規模(スケール)・定規(物差し)・計り・尺度・基準・地位、そして鱗(うろこ)など多くの意味があります。サウロの目から落ちたうろこのようなものとは、それまで身についた物事のみかたや考え方、価値観、プライド、おごりではなかったでしょうか。そのようなうろこが、本来のサウロの力(あるべき姿)を覆っていたのでしょう。

この春セメスター、学生の皆さんはどのように成長されたでしょう。目からうろこのようなものが落ちる学びや経験をされたかもしれません。それは困難を伴うものではなかったでしょうか。しかしそのことが、新しい自分との出会い、自分の本来あるべき姿や才能(Talent)の発見、自分に与えられた使命の気づきにつながるのではないかと思います。

苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む(ローマの信徒への手紙5章4節)

2023年6月30日 (金)

Tender Loving Care

梅雨の最中、空は暗く、しとしと、じめじめ、気分が晴れない日がつづきます。晴耕雨読を楽しみながら、この時期を乗り越えていきたいと思います。

さて大学では、3年ぶりに国際交流プログラムが再開され、サミュエルメリット大学(Samuel Merritt University:SMU、アメリカ・カリフォルニア州)から看護学部生と先生方をお迎えしました。学内も次第に、グローバルキャンパスへと回復してきています。

交流プログラムの聖隷三方原病院や関連施設での研修を終えたミーテイングで、SMUの先生方の感想をお聞きました。口々に、それぞれの病院・施設や訪問看護が、同じように、対象者一人ひとりに思いやりと愛情を込めた看護やケアがなされていることに感銘を受けたと話しをされました。聖隷の基盤にある隣人愛の精神が、看護やケアの実践に活かされていることを肌で感じてもらい、大変嬉しく思いました。

その時に、私がお話したことは次のようなことでした。

日本語で看護の「看」は、「手」と「目」と書きます。あたたかな手(タッチ)と目(まなざし)で対象者に接し、心を配ることが看護の基本です。日本語には「慈しみ」という美しい言葉があります。これは、英語では、「Compassion」という他者への思いやりや配慮を表す単語に近い日本語です。私たちは、慈しみ(Compassion)という看護のケアの本質を大切にしたいと述べました。それに対し、SMUの先生が「Tender Loving Careですね」と言われ、正にそうだと感心しました。

Tender Loving Careとは、医療や介護の場面で使用される“思いやりあるケア”を示す言葉です。このTender Loving Careは、慈しみ、Compassionといった感性によって実るものです。聖隷の病院や施設・訪問看護では、隣人愛の精神を基にしたTender Loving Careが実践されているのです。

2023年5月31日 (水)

「プロフェッショナル」について

過日、「全国理学療法学教育学会」という学会で、「プロフェッショナリズムをめぐって」というシンポジウムが開催されました。私も登壇し、私の考える“プロフェッショナル”についてお話しました。

professionalの語源をたどると、それは宗教的(信仰的)な意味合いの強い言葉でもあるようです。宗教弾劾の時代、公に信仰を告白することは命がけでしたが、それでも信仰を告白せずにいられなかった。それは、信仰(神との契約)のもとにそうせざるを得ない強い使命感や責任感のような自らの内から湧いてくる衝動(精神の内的促し)があったからではないかと思います。プロフェッショナルには、そのように自らをプロフェッショナルたらしめる“精神の内的促し”が根底にあるように思います。その善き“精神の内的促し”を自ら育てていくことが、プロフェッションの道のり(プロフェッショナル・アイデンティティの形成)です。本学では、その善き“精神の内的促し”の源泉に、建学の精神「生命の尊厳と隣人愛」が位置付けられます。

保健医療福祉のプロフェッショナルの仕事は、「癒しの技」を大切にするアートと、専門的かつ科学的な最新の知識と技術のサイエンスが、相互補完的に展開されます。前者は自分自身の精神を掘り下げていくベクトル、後者は外に向かって開いていくベクトルです。本学の教育は、建学の精神を土台として、学生一人ひとりが人間性を磨き高め、フィロソフィーを醸成していく前者を大切にしたいと考えています。建学の精神に支えられた“精神の内的促し”が、学生一人ひとりのプロフェッショナルとしての成長を支え導くことになると信じています。

 

 “精神の内的促し”という言葉は、森有正(日本の哲学者、フランス文学者)「生きることと考えること (講談社現代新書)、1970」からの引用であることを付記します。

2023年4月28日 (金)

2023年度の新たなチャレンジ

新入生の皆さんを迎え、キャンパスも明るい活気を感じます。学生皆さんが、今の自分を超える新しい自分にチャレンジしてほしいと願っていします。

今年度、本学は「国際教育学部」を開設し、保健医療福祉の総合大学から保健医療福祉及び教育・保育の総合大学へ、新たな発展を目指します。国際教育学部では、教育・保育・心理の3つの系を系統的かつ複合的に学修できるカリキュラムにより、国際バカロレア教育の理念と実践を柱に、子どもの多様なニーズに応え得る保育士・幼稚園・小学校教員を育成します。また、社会福祉学部と国際教育学部には、新たに、公認心理師を目指す課程を開設しました。

看護学部・リハビリテーション学部とも協働して、保健医療福祉及び教育分野で活躍する心理の専門職者を育成します。そして2026年度には、大学院社会福祉研究科に公認心理師課程を開設する計画です。

大学院では、この地域とともに世界の保健医療福祉の現場でキーパーソンとして活躍する実践力と研究力を備えた高度専門職業人の育成に力を注いでいます。看護学研究科では、NP(ナース・プラクティショナー)の養成課程を開設(2024年度)準備が進められています。学生ひとり一人と、学部学科・大学院の新たなチャレンジと発展を期待しています。

聖隷は、社会の課題解決とニーズに応え得るよう多くの困難を克服してきた歴史があります。私たちも、先人が歩んできたように、教職員一人ひとりが不断にチャレンジし前に進む。そして、自ら新たな時代を切り拓く聖隷クリストファー大学でありたいと思っています。

2023年3月31日 (金)

卒業生・修了生の皆さんへ:プロフェッショナルの歩み

新型コロナウイルスの感染拡大から3年、またロシアによるウクライナ軍事侵攻から1年、が過ぎました。世界は今、先行き不透明な混迷の時代です。しかし、どのような時代にあっても、平和と人間の命と健康、生活と福祉と教育が普遍的な価値であることに変わりはありません。卒業生・修了生の皆さんが、建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」の精神を基盤に、それぞれのプロフェッショナルとして成長されますことを願います。

2022年度卒業・修了式 学長の言葉

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新型コロナウイルスの感染拡大から、4年目の春を迎えます。振り返れば、始めて緊急事態宣言が発出されたのは、卒業生の皆さんが2年生になったばかりの頃でした。以来今日まで、感染の不安、自己抑制と奮起のなかで、講義・演習・実習、研究活動に奮闘されてこられました。私たち教職員も、ベストを尽くして参りました。そして本日ここに卒業・修了を迎えられ、今日までの皆さんの努力と研鑽に敬意を表し、心より祝福申し上げます。皆さん、誠におめでとうございます。また学生皆さんの生活、学習、研究を支え、大学運営にもご協力いただきました、ご家族の皆様に、感謝とお慶びを申し上げます。誠におめでとうございます。

さて、卒業生の皆さんは、今日から、保健医療福祉及び教育・保育の専門職業人(プロフェッショナル)の道を歩みだされます。また大学院修了生の皆さんは、各分野のリーダーとして、新たなステージに進まれます。皆さんが様々な困難を乗り越えられてきたのも、プロフェッショナルとしての自覚と責任をお持ちであったからだと思います。

“professional”の語源は、“profess”、すなわち“公言する、公に誓う”という意味があります。皆さんは、保健医療福祉及び教育・保育のプロフェッショナルとして、自分の使命と責任を社会に宣言し、その期待に応えることが求められます。プロフェッショナルの資質には、道徳心・倫理観をもつこと、公益を重んじること、対象者の最大の利益に資すること、そのために専門的な知識と技術を修得し、なお研鑽すること、といったことが共通の認識です。加えて、本学を卒業・修了する皆さんは、それぞれのプロフェッショナルの基盤に、“生命の尊厳と隣人愛”の精神があることも認識しておられます。

仕事という言葉には、英語で “job”“career”“calling”という単語があります。“job”は報酬や生業、 “career”は出世や経歴、“calling”は天職、という意味です。この“calling”の語源には、“神様からの呼び声、呼びかけ、そしてそれに応える”、という意味があります。私は、皆さんのプロフェッショナルの仕事は、“calling”、すなわち天職であって、自らその仕事を選んだというよりも、その仕事にふさわしい者として、神様に選ばれ、その仕事を与えられたのだと思っています。そう考えるならば、その期待と使命に応えられるよう、自ら成長していくことが、プロフェッショナルであると言えます。

プロフェッショナルの道のりは、長い道のりです。途中で、立ち止まること、道に迷うこと、バーンアウトしそうになることもあるでしょう。そのような時、自分に与えられた仕事の意味・目的は何か、なぜ自分はこの道を歩んでいるのか、この仕事は私に与えられた天職ではないか、あなたの心の声に耳を傾けて欲しいと思います。それは、神様との対話であるかもしれません。プロフェッショナルは、内なる声を聴きながら成長する、“省察”の人であると言えます。

皆さん、時代は今、混迷と不安のなかを進んでいます。しかし、皆さんが歩む、保健医療福祉及び教育・保育のプロフェッショナルの道は、どのような時代にあっても、人の幸せと、世界の平和に尽くす価値高いものです。皆さんが自分に与えられた仕事を愛し、プロフェッショナルとして、成長されますことを願っています。 

2023年3月9日

聖隷クリストファー大学

学長 大城昌平

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