宇宙船地球号
散歩道、月を眺めながら“行ってみたいなぁ”と思いを馳せ、テクテク歩くのが私の楽しみのひとつです。
4月30日、立花 隆さんがお亡くなりになられました。
立花さんと言えば、まだ私が中学生の1974年、当時の首相であった田中角栄氏の金脈問題を追及(田中角栄研究)し退陣に追い込んだ、国家権力に立ち向かう気鋭のジャーナリストという強い印象をもちました。
その後1985年に、「宇宙からの帰還 」(中公文庫)が出版されます。
それを手にした私は、“あの(田中角栄研究の)立花さんが科学の最先端の本も書かれるのか”と驚きとともに、宇宙から地球を見てみたいという憧れを抱きました。
訃報に接し、改めて「宇宙からの帰還 (新版)」(中公文庫)を購入しました。
口絵の「月面からみた地球」をみて、「暗黒界に浮かぶ地球はこんなにも美しく神々しいものなのか」と当時大きな衝撃を受けたことがよみがえります。
この本は、宇宙飛行士でしか実体験し得ない宇宙での経験が、その人の精神性や人生観にどのように影響したかをインタビューにより描き出したものです。
ジェミニ9号(1966年6月)で地球軌道を飛び宇宙遊泳も行い、アポロ10号(1969年5月)で月回周軌道を飛び、アポロ17号(1972年12月)で月面探検という3度の異なる宇宙経験をしたジーン・サーナン(Eugene Cernan)は、「肉眼で見る地球と写真で見る地球は、全くちがうものだ。・・・・・永遠の闇の中で太陽が輝き、その太陽の光を受けて青と白にいろどられた地球が輝いている美しさ。これは写真では表現できない。」と本書の中で述べています。
地球からでは味わえない、宇宙を実体験した人にしか得られない感覚と知覚、精神的衝撃があるのでしょう。
奇しくも、7月11日には米ヴァージン・ギャラクティックのサブオービタル宇宙船SpaceShipTwo VSS Unityに6人のクルーが搭乗し、続けて20日にはブルー・オリジンが開発したニューシェパードに4人が搭乗して、宇宙飛行に成功しました。
いよいよ宇宙旅行の幕開けとは言え、私には現実的に難しいでしょう。
「宇宙からの帰還」は私にとって、宇宙から地球の眺めを実体的な想像に導き、地球への畏敬を抱き、精神世界を深める偉大な遺産です。
地球では世界平和と共生の祭典「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」が開幕しました。
「人間はみな同じ地球人なんだ。国がちがい、種族がちがい、肌の色がちがっていようと、みな同じ地球人なんだ。」(ジム・アーウィン(James Benson Irwin)、1971年7月アポロ15号で月面着陸)。
私たちは宇宙船地球号の乗組員です。
宇宙からの視点で地球を見、考えることを忘れ無いようにしたいものです。
立花 隆さんのご冥福をお祈り申し上げます。