« 「冬来りなば 春遠からじ」 | メイン | 2020年度卒業式・修了式:保健医療福祉・教育の時代を拓く現代のクリストファーへ »

2021年2月26日 (金)

ポストコロナは、保健医療福祉・教育の時代

2月17日、日本でも医療従事者を対象に、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。収束に向けての明るい兆しが見えてきたように思います。しかし、今回の百年に一度のパンデミックの教訓を決して忘れてはなりません。このままコロナ前に戻るならば、人類を襲うさらに深刻な事態が生じることは間違いないでしょう。

 

教訓の一つは、自然の脅威に対して社会システムがいかに脆弱であったか、人間の命や健康、生活や幸福がいかに脆く壊れやすいものであったかということです。特に、保健医療や介護の崩壊、貧困や格差、孤立や虐待など、私たちの命と生活に直結するいろいろな問題が浮き彫りになっています。その要因は、環境破壊を続ける人間の過信や傲慢さ、経済合理主義を優先して人間の生命や健康、生活や福祉を守る政策を後回しにしてきた社会政策、また保健医療福祉の仕事を過小評価し、この分野と人材育成に投資してこなかったツケではないでしょうか。今回の感染症の発生と拡大、それに伴う社会の混乱は起こるべくして起こった、その予兆を察知しながらも見てみぬふりをしていたといえます。コロナを契機にこれからは、「自然との共生」「命の経済と政策」を重視した「保健医療福祉・教育の時代」と進むでしょう。経済合理主義から脱し、自然との共存、人の生命と生活と幸福を重視した価値観と経済及び政策の転換をめざすべきだと思います。

 

コロナ禍で、「エッセンシャル・ワーカー」という言葉が話題になりました。「私たちの生活や社会機能を維持するために必要不可欠な仕事、その仕事を担う人」という意味です。保健医療福祉の現場では、今この時も、医療職や介護や福祉職の方々が感染リスクを引き受けて、不安や恐怖を抱えながらもそれに耐え、与えられた責任と使命を果たそうと懸命に仕事をされています。目立つことなく華やかでもありませんが、このような仕事を担う人がいなければ、人の命や健康や生活はもちろんのこと、この社会も根底から崩れてしまいます。いかに科学技術が発展しても、人を愛する心を持った人間の手によってでしか行えない仕事です。保健医療福祉・教育の仕事の価値を大切にする社会であって欲しいと願います。

 

間もなく本学からも、「保健医療福祉・教育の時代」を担う卒業生・修了生が旅立ちます。建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」の精神を実践し、人々の命と健康と生活を守り、社会の安寧と発展に尽くされます。活躍を祈念いたします。