コロナ禍の一年を振り返って
今年、コロナ禍で私が時折思い出していたのは、私が中学校に入学したころの校長先生のお話でした。後に調べてみると、その話は、「旅人の話」という逸話をもとにした話であったことがわかりました。こういう話です。
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ある日、一人の旅人がある村を訪ねました。村の入口に一人の老人がいたので、旅人は「おじいさん、この村はどんな村かね?」と尋ねました。老人は「お前さんがこれまでいた村は、どんな村だったんだい?」と聞き返しました。「俺が前にいた村は村人が喧嘩ばかりして、嫌な村だったね。」と旅人は答えました。すると老人は、「そうかね、この村もお前さんが以前いた村と同じように、嫌な村だな。」と答えました。
またある日、別の旅人がその村にやってきて、村の入口にいた老人に、「おじいさん、この村はどんな村かね?」と尋ねました。老人はいつものように、「お前さんがこれまでいた村は、どんな村だったんだい?」と返しました。旅人は、「私が前にいた村は、村人は親切で働き者で、あんなに良い村はなかったよ。」と答えます。すると老人は、「そうかね、この村もお前さんが前にいた村と同じように良い村だな。」と答えました。
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この逸話は何を教えているのでしょう? 校長先生は、これから厳しい寮生活を始める私たちに、生活や環境の良し悪しは、自分自身の考え方や心のあり様によって変わる、変えることができるということを教えたかったのだと思います。結局、その人自身が環境や状況を生み出し、創り上げるということなのでしょう。
私たちは今年一年、新型コロナウイルスに翻弄されました。しかし、そのような環境にあっても、私はことあるごとに教職員・学生皆さんの使命感と献身に支えられ助けられた感謝の一年でした。またいろいろな出来事に鍛えられ成長した一年でもありました。加えてコロナを契機に、新しい教育方法を学び、教育環境の整備もすすめることができた発展の年でもありました。総括して、学びの多い豊かな一年であったと振り返ることができます。
来年も新型コロナウイルスの影響は続き、忍耐を要すると思います。予測不可能で、判断の難しい一年になるとも思います。しかし、どのような環境や状況にあっても、私たち自分自身が環境のつくり手であることを大切にしていきましょう。
今年一年、学長ブログをお読みいただき、ありがとうございました。新型コロナウイルスの収束と、皆様の新年のご健勝を祈念いたします。