宇宙からの希望の光
野口聡一さんと3人の宇宙飛行士が搭乗した米スペースXの新型宇宙船「クルードラゴン・レジリエンス号」が、日本時間11月16日午前9時57分、米フロリダ州から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられた。白煙を噴出しながら真っ直ぐ勢いよく打ち上がるロケットの機体を見ながら、鉄腕アトムに夢中であった小学生の頃を思い出した。
当時、宇宙開発は、米国とソ連の間で競争が激化していた。1961年にソ連がユーリイ・ガガーリンによる人類初の宇宙飛行に成功すると、米国はアポロ計画を打ち出して、1969年「アポロ11号」で人類初の月面着陸を成し遂げた。授業を休講にしてもらって、その歴史的瞬間にくぎづけになったことを思い出す。「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」、月面に立ったニール・アームストロング船長の言葉である。そして50年が経った。民間企業初のロケット打ち上げの成功で、「宇宙旅行時代」の幕開けとなった。スタイリッシュに劇的に進化した宇宙服が、技術の進歩を物語っていた。
日本時間17日午後1時すぎ、「クルードラゴン」は無事に国際宇宙ステーションに到着した。抱き合って喜びを分かち合うクルーの姿が微笑ましかった。野口さんを含む4人のクルーは男性と女性、白人・黒人・アジア人と、多様性に富んだ構成である。「違いを理解することがクルーの結束の原動力である。」「多様性こそが強靭性につながる。困難な状況を打ち勝つキーになる。」と野口さんは言う。
新型コロナウイルスへの感染が拡大し、自国主義や人種主義、排外主義、悲寛容に向かい混迷を深める地球へ、宇宙から希望の光が届けられているように思えた。