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2019年4月26日 (金)

現代のクリストファーへの成長を祈念して

2019年度は、看護学部158名、社会福祉学部93名、リハビリテーション学部125名、助産学専攻科17名、大学院博士前期課程19名、博士後期課程7名の新入生を迎えました。新入生の皆さん一人ひとりが、保健医療福祉・教育の未来を担い、聖隷の歴史と伝統を継承し、また自らの手によっても新たな歴史を創り上げていかれることを祈念いたします。

 

4月4日に挙行した入学式での学長式辞を掲載いたします。


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今からちょうど70年前の1949年、私たちの先人は、三方原の地に、聖隷学園の前身である「遠州基督学園」を誕生させました。キリストの教えに基づいた、隣人愛に捧げられた学園です。そして今ここに、その精神を受け継ぐ、新入生の皆さんを、私たち聖隷クリストファー大学に迎えることができ、感謝と喜びの念に堪えません。

 

419名の新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。教職員・在学生並びに卒業生・修了生を代表して、心より皆さんを祝福し、歓迎いたします。

そして、今日の佳き日をお迎えになった、ご家族の皆様にも、お祝いと感謝の気持ちをお伝えします。誠に、おめでとうございます。

また、本日ご多用のなかご臨席くださいました、ご来賓の方々に、心よりお礼を申し上げます。誠に、ありがとうございます。今後とも、保健医療福祉・教育の未来を担う、学生の成長を見守り、ご支援くださいますようお願いいたします。

 

本学は、1949年の開学以来、キリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」を建学の精神として、保健医療福祉・教育の人材育成に努めて参りました。今日では、看護学部・社会福祉学部・リハビリテーション学部の3学部と助産学専攻科、そして大学院博士前期並びに後期課程を有する、保健医療福祉・教育の総合大学に発展しています。また今年度より、地域社会とグローバル化のニーズに応えるため、看護学部では看護師特定行為研修を、社会福祉学部こども教育福祉学科では国際バカロレア教育を取り入れた小学校教諭教職課程を、リハビリテーション学部では国際リハビリテーションコースを開設いたしました。新入生の皆さんには、本学の恵まれた教育・研究・実践の環境を存分に活用し、建学の精神に裏付けられた高い知識と技術を有する専門職業人に成長されますことを祈念いたします。

 

さて新入生の皆さんには、この入学式にあたって、私たちに与えられた3つの使命と責任について、心に留め置いていただきたいと願います。

 

1つ目は、本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」についてです。

1930年、聖隷の事業は、当時まだ不治の病で、感染の恐怖から家族からも見捨てられ、住むところもなく、食べることもできなくなった、一人の結核病患者と共に生きることから始まりました。その運営は、筆舌に尽くせない迫害と困窮・困難を極めるに至ります。しかし、そのような中にあっても、先人はまさに聖なる神様の奴隷として、自らのすべてを犠牲に、一人ひとりの対象者の命の尊厳を守り、愛を尽くされました。この先人が身をもって示した、自己犠牲に基づく「隣人愛」の精神が本学の教育理念であります。本学に学ぶ私たちは、病気や障害、生活に困難を抱える方々に寄り添い、「隣人愛」を実践できる人に成長しなければなりません。しかし、利己心を超えて、隣人に尽くすことは決して容易なことではありません。しかしまた、その言葉をいつも胸に抱き、日々の生活の中で隣人に心を配り、愛を尽くすように努めることで、「隣人愛」を生きる人間に成長することができると思います。

 

2つ目は、学修者としての自己成長についてです。

科学技術が急速に発展する現在、大学教育は、知識の伝達から思考力、構想力、行動力を養うことが求められます。そのため本学では、学生による主体的な知識の修得、学生と教員の協働による知と経験の共創、国内外の臨地での実践、この3つの学習形態を統合した、学生の主体的学習 active learning を推進しています。この active learning では、学生皆さんが学修者としての責任を自覚し、真摯さと素直な心もって、物事に挑戦することが求められます。未来ある皆さんにとって、最大の失敗は挑戦しなかったことを悔いることです。自らの成長は、どのような状況にあっても、自己に帰属することを忘れないでください。私たち教職員も、皆さんと共にあることを誓います。

 

3つ目は、専門職業人プロフェッショナルとしての使命と責任についてです。

我が国は今、少子高齢化や人口減少が急速に進展し、あらゆる面で困難な時代を迎えています。しかし、人々の生命、健康、生活を守り支える皆さんの使命は、どのような時代にあっても、価値高く、尊いものであります。本日皆さんは、その専門職業人「プロフェッショナルになる」という明確な使命と目標を抱き、今日の日を迎えられました。プロフェッショナの道は、真摯に自分自身に向き合い、長い視野で自分の能力を開発していく、長い道のりです。皆さんが、今日この場合この時の初心を深く心に刻み、生涯にわたる自己研鑽の道を歩まれることを願います。

 

ナチス強制収容所での体験を著した「夜と霧」の著者である、ヴィクトール・E.フランクの言葉です。「与えられた使命と責任を受け入れることは、人間存在の基礎である。またそれは、挑戦を受け入れることである。挑戦を受け入れることは、未来の扉を開くことである。」

 

さて大学院生の皆さん、皆さんは、それぞれの学問分野・領域の課題を探求するため、大学院の門をくぐられました。大学院の門は、真実の知を愛し求める、終わり無き旅路の始まりです。皆さんは、その旅人であるといえます。その旅人は、自らの無知を自覚する人、学問への謙遜と奉仕を志す人、真理に対する感激の深き人、そして懐疑と思索の苦役に耐え得る人です。大学院生の皆さんが、旅の途中で倒れても立ち上がり、新たな知を創造し、学問分野・領域の発展に貢献されますことを期待いたします。

 

結びに、新入生の皆さんが、「隣人愛と知の技」を磨き、人々の安寧と幸福を導く「現代のクリストファー」に成長されますことを祈念いたします。そして、皆さんの勇気ある挑戦と、困難に耐え得る力を祝します。

 

 

2019年4月4日

聖隷クリストファー大学 学長

大城昌平