「Loved one、Lovely one、Loving person」
先日、第62回日本新生児成育医学会・学術集会において、「赤ちゃんと家族のあたたかな心を育むディベロプメンタルケア」と題した教育講演を行う機会をいただきました。早産・低出生体重児の新生児期のケアに関する講演で、赤ちゃんと両親・家族の関係性を大切にした、赤ちゃんの脳と身体と心の発達に寄り添うディベロプメンタルケア(発達支援的ケア)が、あたたかな心を育むうえで大切であるという内容です。
あたたかな心とは、他者への共感と思いやり、愛の心です。その愛の心は、赤ちゃんも私たちも、両親や他者から愛を与えられることで育まれていきます。愛された人(loved one)は、自分自身をも愛すべき者(lovely one)へ、そしてやがて人を愛する者(loving person)へと成長していきます。赤ちゃんは、そのような他者からの愛を本能的に感じ取る力とミラーニューロンという神経機構を有し、愛することを学ぶのです。
このような私と他者の関係は、私と神様の関係でもあると言えましょう。聖隷の先人は、私を神様から愛された存在として深く認識していたように思います。それゆえに、如何なる困窮や困難にも耐え得る自己を確立し、自己を犠牲にして隣人に愛を施すことができたのだと思います。このことは、対人援助職者としての私と患者さんや対象者の関係でもあります。自分が他者から愛されている存在であると自覚することは、対象者の心にも愛の心を芽生えさせ、生きる希望と勇気につながることでしょう。本学の建学の精神である「自分のように、あなたの隣人を愛しなさい」という教えはこのことを示していると理解できます。
古生物学者・地質学者であり宗教家でもあったテイヤール・ド・シャルダンは、「人生はただ一つの義務しかない。それは愛することを学ぶことだ。人生にはただ一つの幸福しかない。それは愛することを知ることだ。」と言います。学生の皆さんには、本学での学びを通して、愛ある専門職業人に成長してほしいと願います。