“life is short, arts is long”
年を重ねるごとに、人生がいかに短いか、そのことを実感します。昨年は父が他界し、恩師であるHeidelise Als先生(Harvard大学)、仁志田博司先生(東京女子医科大学名誉教授)が逝去されました。Heidelise Als先生は、早産児の発達ケア(Developmental care)のパイオニアで、早産児行動評価法 (Assessment of Preterm Infant's Behavior; APIB)や新生児の個別的発達ケアと評価プログラム(Nnewborn Individualized Developmental Care and Assessment Program; NIDCAP)を開発し、赤ちゃんとご家族の支援に貢献されました。私が1988年に米国ボストンのBrazelton Institution, Boston Children's Hospital and Harvard Medical Schoolに、新生児行動評価(Neonatal Behavioral Assessment Scale ; NBAS)を学ぶために留学して以来、日本での早産児の発達ケアとNIDCAPの普及にご指導とご支援をいただきました。仁志田博司先生は、新生児医学(医療)の第一人者です。日本における近代的な新生児医学(医療)を確立し発展させて、多くの赤ちゃんの命を救われました。世界1位を誇る我が国の新生児死亡率は、先生の業績無しにはなし得なかったでしょう。またライフワークとして、赤ちゃんのあたたかい心の育成にも注力されました。私とは、共に「日本ディベロップメンタルケア研究会」を創設し、早産や発達リスクのある赤ちゃんのあたたかい心のケアや親子の関係性を目標とした発達ケアとNIDCAPの推進と、それに精通する医師や看護師、心理やリハビリテーションなどの専門職者の育成にもご尽力いただきました。
表題の“life is short, arts is long”は、医聖と称される古代ギリシャのヒポクラテスの言葉です。日本語では一般に、「人生は短く、術のみちは長い」。すなわち、人生は短く、芸術や技能の修得には長い時間を要する、と解釈されます。また他に、“医師(医療者)の一生は短いが、医術の命は長い(永い)”。すなわち、 人の一生は短いが、その人が培った医術のみちは過去から現在、そして未来へと次世代につながれ、永遠の命をもつ、という解釈もあります。
師からの学びを継承し発展させ、次世代につないでいくことが、私たちの使命でもあります。そうして、先人とその教えは、永遠の命を得るということでしょう。