春セメスターの終わりを迎えて
連日、日本各地で最高気温を記録する猛暑が続いています。大学では定期試験が始まり、学生皆さんが、学生ホールや図書館ラーニングコモンズで自己学修をすすめています。一人ひとりが暑さに負けず、この春セメスターの学びを総括されることを祈念しています。
先日、書店でたまたま目にした(「あなたの人生の意味」デイヴィッド・ブルックス著、夏目 大訳、早川書房)を購入し、“アダムⅠ”“アダムⅡ”という言葉に出会いました。もとは、Joseph B. Soloveitchikが“Lonely Man of Faith”という本で、人間の対立的な2つの自己を表現した言葉だそうです。アダムⅠは外に向かう自分で、何かを築き上げたり、生み出したり、発見したりすることを望む社会的成功を求める自己です。アダムⅡは内に向かう自分で、謙虚さや道徳的資質など自分の精神世界を大切にする自己です。他人に愛を注ぐこと、奉仕すること、自己を犠牲にすること、良き存在であることを求め、深みのある人間を目指します。Soloveitchikは、アダムⅠとアダムⅡは、常に自分の中でゆらいでいるといいます。
学生の皆さんは今、人生の正午前を過ごしています。夏の太陽が外に向かって燦々と輝く、アダムⅠの世界にいるようです。しかし正午を過ぎると、アダムⅡが私たちを支えることになってくるでしょう。私たち聖隷の先人は、聖書の教えに従い、アダムⅡの生き方を大切にしてきました。そして現在の私たちがあるように思います。
本学では、週1回の礼拝で、黙祷を捧げ、奨励を聴き、静かに自分の心を見つめます。この春セメスターを終えるにあたり、皆さんが学んだ知識や技術とともに、礼拝の一時をも振り返って、アダムⅡの生き方を考えてみると良いでしょう。