聖隷の歴史:はじめに愛がありました
新学期が始まり一月が経ちました。一人ひとりの学生が、それぞれの人間的成長と新しい知識・技術の修得に向かっているように感じます。この一月の自己の成長を振り返り、次の目標に向かってください。
新入生に本学への進学理由を尋ねると、保健医療福祉の総合大学で恵まれた教育環境であること、聖隷グループ等での実践教育が充実していることなど、本学の教育特徴をよく理解して入学されているようでした。また、本学の歴史や建学の精神に共感してという学生も多く大変嬉しく思いました。私は、本学に進学される方や学生の皆さんには、本学の歴史や建学の精神を学び、それを精神の支柱とした保健医療福祉の専門職業人に成長してほしいと願います。
聖隷の歴史は、1930年、創立者である長谷川保ら6名の若きクリスチャンが一人の結核患者を受け容れたことから始まりました。当時、結核は不治の病で、感染の恐怖から地域住民からの厳しい迫害を受けることになります。また大恐慌の最中でもあり、食べることもできないほどの極貧で、借金を重ねながらの運営でしたが、長谷川保らは自らの命と生活のすべてを犠牲にして、患者さんの命の尊厳と療養を守り続けました。そしてそのような中に、真の幸せを見出していました。
なぜ、長谷川保らは、迫害や果てしない苦労や清貧に耐え、自己を犠牲にしてまでも人々の命や生活の救済にあたることができたのか? そして、そこに真の生きる喜び(生きがい)を見出すことができたのか?
聖隷の歩みは、一人の結核患者を受け容れ、自己を犠牲にして愛を尽くしたことから始まりました。聖隷の歴史には「はじめに愛がありました」。そしてその根源には、神様の愛がありました。長谷川保らはクリスチャンとして、神様の愛を信じ、聖書の教えに従い、それに突き動かされるように自己を犠牲にした愛を尽くしました。そのことが迫害や困窮に耐える力となり、人としての完全な幸福の境地にもつながったのでしょう。そして、それが今日の聖隷の発展を成し遂げるに至りました。
本学の建学の精神は、長谷川保らが自ら示したように、他者に愛を尽くすという実践の「生命の尊厳と隣人愛」です。私たち教職員は学生皆さんに尽くさなければなりません。学生の皆さんにも、長谷川保ら聖隷創立者の生き方から、自分自身の生き方を学んでほしい。そして、病気や障がい、生活に困難を抱える方々に尽くす専門職業人に成長してほしいと願います。