« AIと人を支える仕事 | メイン | 「選ばれし者」 »

2018年3月14日 (水)

2017年度卒業式・修了式:未来への継承

3月5日、2017年度の卒業式・修了式を挙行いたしました。看護学部151名、社会福祉学部101名、リハビリテーション学部92名、助産学専攻科17名、大学院博士前後期課程16名が、聖隷の精神を胸に社会に巣立ちました。皆さんの自信と誇りに輝いた笑顔が心に残ります。以下に、学長式辞を掲載いたします。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

2017年度卒業式・修了式 学長式辞

70年前、私たちの先人は、三方原の地に「聖隷学園」を誕生させました。キリストの教えに基づいた、隣人愛に捧げられた学園です。そして今ここに、その信条を受け継ぐ卒業生・修了生の皆さんを、社会に送り出すことができ、感謝の念に堪えません。

本日、本学の学位授与方針に基づき、学士の学位を授与された学部卒業の皆さん、助産学専攻科修了の皆さん、修士並びに博士の学位を授与された大学院修了の皆さん、これまで皆さんが尽くされた努力と研鑽、そしてその成長に、心から敬意を表します。

そして、今日まで、皆さんの全てを支えてこられました、ご家族の皆様にも、深く感謝とお喜びを申し上げます。

また、日頃より本学の教育研究並びに諸活動にご支援・ご指導を頂いています、病院施設・諸団体の皆様、非常勤講師の先生方、地域の方々に、厚くお礼を申し上げます。

さて皆さんは、本日より本学の建学の精神である、キリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」に裏付けられた、保健医療福祉の専門職業人としての道を歩み出されます。本日、この新たな旅立ちの場において、今一度、私たちが何者であるか、本学での学びを再確認しなければなりません。

聖隷の歴史には、はじめに愛がありました。1930年、聖隷の事業は、当時まだ不治の病で感染の恐怖から忌み嫌われた、ひとりの結核病患者の療養支援から始まりました。その運営は、度重なる迫害と、困窮、困難を極めるに至ります。しかし、そのような中にあっても、先人は自らの全てを尽くし、身をもって隣人愛とは何かを示されました。本学には、この自己犠牲に基づく隣人愛の精神が、脈々と受け継がれてきました。私たちは、この聖隷の精神と歴史を、過去に作り出されたものではなく、自らの手によって、生きたものとして、未来へ継承していかなければなりません。

しかしながら、「隣人愛」の精神を、言葉としてではなく、生きた行為とすることは、決して容易なことではありません。

1953年、今日の聖隷グループの前身である当時の聖隷保養園に、ドイツからディアコニッセのハニ・ウォルフ姉妹を迎えました(ディアコニッセとは女性奉仕者をいい、姉妹は同士という意味です)。このハニ姉妹の手によって、私たちが実習等でお世話になっています、日本で最初の特別養護老人ホーム「十字の園」が設立されました。当時一緒に働かれた鈴木唯男先生は、このハニ姉妹から看護やケアの本質を学んだと、以下のように残されています。

引用いたします。尚、文中の「看護」という言葉は、リハビリテーションや福祉とも置き換えることができます。

<私たちはつい、大勢の患者さんの仕事をしていて、その仕事は流れていく。一人ひとりの患者さんに対する、心への呼びかけがないまま、仕事が流れていく。しかし、ハニ姉妹の態度から、看護はついでにしてはならないと、厳しく教えられた。ハニ姉妹は、一人ひとり新しい感覚で、その人の具体的な事実にふれて、はじめて「いかがですか」という言葉を発するのです。人格的なつながりが出来た上で、呼びかけをするということを、きちんとしていました。ほとんど私たちの仕事は、何も見ない、何も触れない、何もつながらない心で、「いかがですか」という言葉だけが、虚しく流れていきます。・・・・相手の心に染みわたるような、そして相手の心にうずきつづけるような、出会いや語りかけをするということが、どうしても必要です。いくら出会っても、それが流れてしまう、そういう出会いでは、そこに人格的なつながりは生まれてきません。本当の苦しみや悲しみが、そこでは感じ取れない、看護の対象にならないことを私は厳しく学んだ。> 以上です。

看護やリハビリテーション、福祉の仕事は、ついでにしてはならい、忙しいからという姿勢のままでしてはならない、目の前の、その人の心を感じ、寄り添い、何事も愛をもって行おうと努める。それが私たちの仕事の基本であり、「隣人愛」を実践することにつながるでしょう。

さて、大学院を修了された皆さんは、高度専門職業人、研究者・教育者として、倫理性と科学性、そして奥深い学識を修得されました。心より敬意を表します。これから皆さんには、各専門分野や組織のリーダーとしての活躍が期待されます。リーダーに求められる資質は、多々いわれますが、私がその一つをあげるならば、「創造的知性」を挙げたいと思います。哲学者ベルクソンは、現代の知性について、「思索人の如く行動し、行動人の如く思索する」と言います。創造的知性とは、新たな価値を生み出す構想力と行動力といえます。皆さんの精神性と学識、そして創造的知性を発揮され、それぞれの学問分野、組織、社会の発展に貢献されますことを期待いたします。

人間の生命や生活は、最も貴いものです。皆さんは、それを守り支える最高に貴い仕事に生きられます。しかし、貴いが故に、その道には多くの暗きがありましょう。

結びに、私たちが学んだ、長谷川保先生からの聖句を送ります。

暗きは必ず我をおおい、我をかこめる光は、夜とならんと我いうとも、

汝のみまえには、暗きものを隠すことなく、夜も昼の如くに輝けり

さあー、卒業生、修了生の皆さん、「隣人愛と知の技」で、与えられた使命に生き、人々の安寧と幸福を導く、クリストファーの道を歩み続けられますことを祈ります。

皆さんの、栄えある未来を祝します。

2018年3月5日

聖隷クリストファー大学 学長 大城昌平