「地域包括ケア看護論」では、7回にわたって事例学習を行いました。学習目標は、「健康上のニーズを抱えながら、今後も地域で暮らしていくことを希望する事例について、生活者の視点から地域包括ケアについての理解を深め、その中での看護の役割・機能について考える」です。
地域で困り事を抱えて生活する高齢者、障がい者、母子の事例について、療養者本人とその家族の生活の理解や支援方法を考えるグループ学習を、PBL(Problem-based Learning)で行いました。 PBLは、「課題解決型学習」とよばれる学習方法で、学生自身が課題を見つけて、答えのない課題を解決するためにICTを活用して自ら調べ、調べたことを整理して思考する力を身に付けるためのアクティブラーニングの方法です。授業終了前に各グループで学習における不明点を明確にして、次回に向けての学修内容・方法を決め、次回授業時に各自が学習してきたことをグループ内で報告しあい、自ら学習課題を到達させる形で進めました。
新型コロナウイルス感染症予防のため、PBLは3教室に分かれて、グループ間・メンバー間で距離を確保し、換気を行いながら実施しました。学生は各自が個人用PCを持参し、Googleスライドを用いて画面共有を行いながら話し合い、発表に向けての成果物の作成を行いました。
PBL風景
PBLによって、「療養者の問題は、1人の問題ではなく、周りの人との人間関係や物理的環境に左右されると分かった」「人の捉え方・強みと感じる部分がメンバーで異なり、捉える人の価値観や経験で変わってくるので、複数で考えることは大切だと思う」「その人の持つ強みは、いかなる状況でも強みではなく、弱みにもなりえると気づいた」などの学びが得られました。そして各々のPBLでの学びを、他の事例を担当したグループメンバーに発表し、発表を通して学びの共有が図られました。
最後は、実際に地域包括ケアを実践されている、川根本町地域包括支援センター保健師の池本祐子さんから、事例に対して実際にはどのような対応を行うかについて、講義していただきました。
池本さん講義風景
池本保健師さんから、「生活者本人がどんな生活を送っていきたいのかを引き出し、それを前提に支援していく」「対象者に一人ではないことを伝えることが大切」「実生活で地域包括ケアについての問題に直面した際にも、持ち合わせている知識をベースに、一生懸命に対象を理解して、問題を解決する方法をともに見出す力を深めてほしい」とお話しいただきました。
学生は、授業後の感想として「池本さんのお話から自分達では考えもしなかった新たな発見ができた」「できないことなどマイナス面に焦点をあてがちだが、強みを積極的に見つけ出して、想像力を働かせていきたい」「対象者の尊厳ある暮らしを守っていけるように、対象者に寄り添って、押し売りにならない援助が大切だと実感した」など述べていました。
3回にわたり「地域包括ケア看護論」について看護学部ブログで紹介してきました。今回の学びを活かして、「地域包括ケア」の視点から看護を実践することを大切に、次年度以降も学び続けて欲しいと思います。
文責:豊島由樹子
]]>10月に続き、11月の「地域包括ケア看護論」についてのご紹介です。地域包括ケアの基本的な考えや、地域で暮らす障がい者・児や認知症の方の生活について教員から学んだ後、6,7回目の授業では「地域包括ケアの実際」として、障がいをもつ当事者の方、そのご家族から、地域で暮らし続けることについて直接お話をうかがいました。
NPO法人地域支援ネット「ゆう」障害者指定居宅支援事業所の理事長である杉本和美さんから、「傷病を抱えながらの生活・社会活動」についてお話しいただきました。杉本さんは、事故により頸髄損傷となってからの当事者の心理、在宅での生活、障害の受容などについて体験を交えてお話しくださり、人生の先輩として思い悩むことの大切さについても教えていただきました。
ご自分の意志を強く持たれている杉本さんの生き方に感銘を受けて、学生達は誰にでも可能性があり病気や障害が妨げにはならないこと、相手を尊重して寄り添い、相手の立場にたって気持ちを汲み取ることからうまれる人とのつながりや社会とのつながりの大切さについて、学びを得ることができました。
授業風景 (杉本さん)
また、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ/たけし文化センター連尺町の理事長、久保田翠さんは、知的障がい者の息子さんへの自立支援活動から、知的に障がいのある人が自分を表現する力を身につけ、文化的で豊かな人生を送ることの出来る社会的自立と、その一員として参加できる社会の実現を目指す活動についてお話しくださいました。障がい者の存在や行為自体を「文化・芸術」として捉えて、人間が本来もっている「生きる力」「自分を表現する力」を見つめていく場の提供、障害のある人が街中で様々な人とのつながりの中でその人らしく生きていける生活環境づくりについてなど、これまでの障がいの捉え方を揺さぶられるようなお話でした。
久保田さんの「障害はその人についているものではない。私と貴方の関係の間にあるもの。」という言葉に、多くの学生たちは自分が障害という固定概念に囚われていたこと、自分では気づけなかった偏見や価値観に気づき捉え方が変化したと、講義後に述べていました。障がいの有無と関係なく、互いの可能性を認め合い、共生できるまちづくり目指すことも、地域包括ケアであるとの、幅広い学びを得ることができました。
授業風景 (久保田さん)
認定NPO法人クリエイティブサポートレッツのホームページのご紹介
・アルスノヴァHP
・のヴぁてれび
https://www.youtube.com/channel/UCG-34arDueJ9Yep6vIYg8Mw
8回目の授業からは、事例を用いたPBL(Problem-based Learning:課題解決型学習)が始まります。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思います。
(写真掲載については許可を得ています。)
文責:豊島由樹子
]]>看護学部では、2019年度入学生から一部の教育課程が改定されています。その目的は、地域包括ケアシステムの推進に基づく社会の変遷にあわせた教育課程へと発展させるためです。
「地域包括ケア」とは、様々な発達段階、健康レベル、生活の場にある人々が、医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしく暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が包括的に確保されるという考え方です。そのしくみを「地域包括ケアシステム」といい、誰もが“自分のこと”“家族のこと”ひいては、そう遠くない“将来の日本のこと”として捉える必要があります。
2019年度入学生は、1年次に「地域看護学実習」で、各自治体における地域包括ケアの取り組みについて、地域のロコモーショントレーニング事業参加団体や高齢者サロン活動を行っている住民組織(グループ)に許可を得て参加し、地域で生活している人々の生活・生活圏をとらえて、高齢者の健康管理「自助」や住民相互の「互助」の効果を学び、健康との関連を考える実習を行いました。
そして2年次生になって、健康な対象だけでなく健康上のニーズを抱えながらも自分らしく地域で暮らし続けるための生活・支援について学び、地域に暮らす生活者の視点から看護の役割について考える科目「地域包括ケア看護論」が始まりました。
地域包括ケアの概念を学んだ後の2回目の授業は、「地域包括ケアの基盤である生活や地域で暮らすことについて、自分の言葉で考えてみる」を単元目的として行われました。
科目担当の先生から、履修生の皆さんに「地域に暮らす一市民として私の生活、暮らしを見つめ、考えてみよう」という課題が出され、近くの席の学生2~3人程度で15分ほど話し合った後、その内容をWebClass(本学が利用しているラーニング・マネジメント・システム)に提出してもらいました。
話し合い風景
その後、提出された意見を、自然言語解析の手法を使って単語分割し、語句の出現頻度や相関関係をソフトを使って解析し、授業内で共有しました。
①あなたは今の生活をどのように感じてますか? …やはりコロナが生活の中心ですね。
②今住んでいる地域の暮らしを、どのように思いますか?
…暮らしやすいと感じている人と不便を感じている人がいるようですね。
先生からの講評
各々の、ものの捉え方や考え方・態度は 家庭、学校、地域社会、文化、制度、経済状況などから学習したり規制を受けながら、自分の価値観を築き、自分なりのライフスタイル(生き方、生活様式)が作られていきます。人は社会との関わりの中で、その人特有のライフスタイルをつくり、習慣化された日常生活を営んでいます。人の生活や暮らし方、大切にしていることは、それぞれ異なっています。その1人1人の考えや価値観を大切にした「地域包括ケア」となっていくことが重要ですね。
「地域包括ケア看護論」は、他大学にない新しい科目です。本学の在宅看護学、老年看護学、公衆衛生看護学、精神看護学、成人看護学、小児看護学、母性看護学から教員が集まり、「地域包括ケア」において今後、社会を支えていく学生さんにとって必要な内容を吟味精選して科目を構成しています。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思っています。
文責:豊島由樹子
]]>今年度は、領域の異なる多職種連携による在宅医療・介護連携推進事業として、住民の皆さんへのフォーラムを企画しています。
民生委員、行政保健師、訪問看護師・訪問リハスタッフ
病院看護師、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、大学教員等、多職種が集まり意思決定に基づく事業に取り組んでいます。
フォーラムに向けて、最終の打ち合わせを行っています。
2020年2月16日(日)13:30~15:30
細江町 みをつくしホール において
生きるを考える ~最期まで自分らしく~
絵本とピアノの世界から のテーマで
アドバンス・ケア・プランニングや
エンドオブライフケアについてのミニレクチャーを行います。
講師による絵本やピアノの演奏により、
テーマをより深く掘り下げます。
よろしければ皆さんぜひお出かけください。
在宅看護学 山村
]]>3年次生10月から開始となった領域看護学実習も、今年度最後のグループとなりました。
在宅看護学実習期間は2週間です。1週目の現地実習を終えて、本日は学内でロールプレイを行いながら、同行訪問の学びを深めました。
玄関でご挨拶を行う導入部分です。
「こんにちは、訪問看護師です。」
ピンクのトレーナの学生が、訪問看護師役をしています。
振り向いている学生は、主介護者の妻役です。
クリップボードを持っている学生は、観察者です。
訪問看護師役の学生は居室に入り、さわやかに療養者と家族にご挨拶をいたします。
男子学生が、療養者役になりきり、ベッド上に布団をかぶり臥床しています。
前回の訪問から本日までの、自宅での様子を訪問看護師が療養者と家族にお聞きしています。
ロールプレイ終了後、訪問看護師・主介護者の妻・療養者本人・観察者の4人で、振り返りを行っています。
どこで妻の思いを聞くのがいいのか、療養者と共に、玄関で・・・等々意見を出し合います。この学びを2週目の実習に活かしていきます。
在宅看護学教員 山村
]]>今年も、国際交流協定締結校の米国カリフォルニア州のサミュエルメリット大学の看護学部生と教員が本学に研修に来ました(6月4日~12日)。
米国の看護学生の研修は、日本の保健医療福祉制度の講義をはじめ聖隷病院、施設の見学、本学部生との交流など多忙なスケジュールでしたが、初めての日本の医療看護を興味深く学んでいました。
6月9日、研修の終盤、浜松市内の聖隷訪問看護ステーション4カ所での訪問看護の体験でした。日本の家庭で療養されている患者さんの生活や環境を伺えるこのプログラムは人気です。
訪問の当日、梅雨にも関わらず、木々の緑がまぶしいさわやかな天気に恵まれました。
訪問した患者さんは、できるだけ自分のことは自分でできるようにリハビリを頑張る3世代家族の90代の女性と、病気の進行によって自分で身の回りのことをするのに不自由になっていく中で愛猫「ミーちゃん」の世話を支えに一人暮らしをする80代の女性のお二人です。
お二人とも米国の看護学生の訪問を心待ちにされて、訪問すると、言葉が通じなくても、体が不自由にも関わらず、一所懸命お話しをしてくださったり、お茶を出してくださるなどなど、米国看護学生を暖かくおもてなしくださいました。
訪問時の写真はありませんが、素晴らしい国際交流の場となりました。
インターンシップとは 在学中に企業などにおいて、自らの専攻や、将来のキャリアに関連した就業体験を行うことです。インターンシップの経験は、高い就業意識を身につけ、大学での学習意欲の向上につながるという効果がありますし、将来の進路選択における自らの適性や能力について実践的に考えるよい機会になります。
この春休み、聖隷クリストファー大学の看護学生も、聖隷病院はもちろんのこと、県内外の総合病院などのインターンシップに参加しています。
今日、わが国の医療保健福祉の現場や人々の考え方は大きく変わり、病気や障害があってもその人らしく家や地域で暮らすようになりました。そんな人々を支えるため、お宅に出向いて看護をする訪問看護師がとても必要になっています。
そこで、県内の訪問看護ステーションでは、看護大学生が卒業後の就職先に訪問看護ステーションを選んでもらうようインターンシップ制度を始めました。本学の看護学部2年生がこのインターンシップに参加し、訪問看護師と1日一緒に訪問をしてとてもよい体験を得たようです。受け入れた訪問看護師も若い看護師を一人前の訪問看護師として育てたい思いを高め、看護学生に期待をしています。
看護学生は入学時から看護への志を高く持っていますが、自分の興味や適性に合った看護の専門分野を探るのにインターンシップはよい機会となっているようです。
]]>こんにちは。在宅看護学教員の田中です。
今回は、研究活動についてご紹介します。
私は、在宅で療養生活をされる高齢者の方への排泄ケアについて研究をしています。
本学教員として就職する前には、訪問看護ステーションで働いており、在宅での看護実践の中で排泄ケアに関心を持ちました。
私が訪問看護活動を行った地域は、高齢者世帯が多く、老夫婦のご家庭や、親も子も高齢になり介護を行っているご家庭も多く担当しました。
在宅で排泄のケアが必要になった場合、主には家族の方がそれを担っていきますが、高齢の介護者には介助の動作などの負担が大きく、ケアを必要とする側も気兼ねをしてしまう問題であり、なかなか排泄状況が改善しなくて難しさを感じるものでした。
しかし、ベッド上排泄からポータブルトイレ、トイレへと高齢者が本来の排泄行動を取り戻せるようにしたり、気持ちよく排泄ができるように支援することで、「調子いいよ!」という嬉しいお言葉をいただけたり、生活意欲も高まるというような変化もあります。
私にとって、在宅での排泄ケアは難しさを感じるものではありましたが、やりがいも大きく、排泄ケアを通じ、在宅で療養生活を送る高齢者の生活の質向上に役立ちたいと思い、研究を続けています。
今年度は、日本看護技術学会第14回学術集会、第35回日本看護科学学会学術集会にて、研究成果を発表しました。
日本看護技術学会第14回学術集会は昨年10月に愛媛県松山市で開催され、在宅要介護高齢者の排泄状況の実態に関わる研究成果を口演発表しました。
学術集会初日第1群での発表で、かなり緊張しましたが、貴重なご意見もいただき、とても勉強になりました。
愛媛県は初めて訪れ、夏目漱石の小説「坊ちゃん」の舞台である道後温泉の風情ある街並み、ご当地の美味しいお料理も楽しみにしておりました。
下の写真は松山城です。
学術集会1日目、口演発表も無事終了しホッとしたところで、道後温泉駅まで足を延ばしました。
ちょうど17時で、駅前のからくり時計から坊ちゃん・マドンナが登場しました。
有名な道後温泉本館です。
エントランス陣幕は写真家・蜷川実花さんによるものだそうで、とても素敵でした。
帰りの松山空港では、「蛇口からポンジュース」に遭遇しました。
研究には、高齢者の皆様、ご家族、訪問看護師の皆様からたくさんのご協力をいただいております。来年度もコツコツと研究を積み重ねて、皆様の生活や看護に還元できるよう努力していきます。
]]>2014年10月20日から開始した在宅看護学実習が、2015年6月19日に終了しました。
2週間実習、159名が履修しました。
学生が同行訪問することにご協力いただきました地域の皆様、
実習施設のスタッフの皆様、ありがとうございました。
実習施設の学生駐輪場の栗の木も、冬の姿から、
6月の青々とした姿に変化しました。日々栗の木に励まされ頑張りました。
2週間実習、1日間はケアマネージャーさんと同行訪問をさせていただきました。
今日は、大学に隣接したケアマネージャーさんの事業所実習なので、歩いて移動します。
5日間は、訪問看護ステーションで同行訪問をさせていただきました。
学生が後部座席に乗り込み出発するところです。1時間の訪問看護頑張りましょう!
スタッフカンファレンスにも参加させていただき、福祉機器取扱いの勉強会も参加してきました。
2週間実習最終日は、全員が帰校して、まとめのカンファレンスを行います。
学生の発表を傾聴し、ディスカッションをしています!なんだか楽しそうです。
このグループはカンファレンスが終了して、
学生による実習評価を行っています。
教員も学生から評価を受けます。
教員は席を外して学生が評価しやすい環境を提供しています。
写真の掲載については、実習施設・学生からの許可を得て掲載しています。
]]>今回は、現在3年生が履修している在宅看護学実習についてご紹介します。
在宅看護学実習では、2週間の実習期間のうち、
訪問看護ステーション実習を5日間、ケアプランセンター実習を1日間行います。
訪問看護師さん、ケアマネージャーさんと一緒に、
在宅療養をされている療養者さん、ご家族のお宅に伺います。
学生さんにとっては、毎日、毎回が「はじめまして」の出会い。
2週間の実習期間で、10人以上の療養者さん、ご家族とお会いすることになります。
この日は、実習2週目の初日です。
実習1週目に訪問をさせていただいた療養者さんの在宅看護計画について、
学内で検討を行いました。
実習生それぞれの在宅看護計画に対し、グループメンバーから多くの意見が出されました。
この一週間で、多くの療養者さん、ご家族への訪問看護を経験させていただき、
実習生の視野が広がったことを教員としても実感しました。
3年生の実習は始まったばかり。
在宅看護学実習での学びを、これからの実習でも、就職してからも、活かしてくださいね!
(在宅看護学領域教員 田中)
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