2-4.老年看護学領域 Feed

2021年2月 5日 (金)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その3 「地域包括ケアについてのPBL(課題解決型学習)」

「地域包括ケア看護論」では、7回にわたって事例学習を行いました。学習目標は、「健康上のニーズを抱えながら、今後も地域で暮らしていくことを希望する事例について、生活者の視点から地域包括ケアについての理解を深め、その中での看護の役割・機能について考える」です。

地域で困り事を抱えて生活する高齢者、障がい者、母子の事例について、療養者本人とその家族の生活の理解や支援方法を考えるグループ学習を、PBL(Problem-based Learning)で行いました。 PBLは、「課題解決型学習」とよばれる学習方法で、学生自身が課題を見つけて、答えのない課題を解決するためにICTを活用して自ら調べ、調べたことを整理して思考する力を身に付けるためのアクティブラーニングの方法です。授業終了前に各グループで学習における不明点を明確にして、次回に向けての学修内容・方法を決め、次回授業時に各自が学習してきたことをグループ内で報告しあい、自ら学習課題を到達させる形で進めました。

新型コロナウイルス感染症予防のため、PBLは3教室に分かれて、グループ間・メンバー間で距離を確保し、換気を行いながら実施しました。学生は各自が個人用PCを持参し、Googleスライドを用いて画面共有を行いながら話し合い、発表に向けての成果物の作成を行いました。

PBL風景

Image1_3

Image2 

PBLによって、「療養者の問題は、1人の問題ではなく、周りの人との人間関係や物理的環境に左右されると分かった」「人の捉え方・強みと感じる部分がメンバーで異なり、捉える人の価値観や経験で変わってくるので、複数で考えることは大切だと思う」「その人の持つ強みは、いかなる状況でも強みではなく、弱みにもなりえると気づいた」などの学びが得られました。そして各々のPBLでの学びを、他の事例を担当したグループメンバーに発表し、発表を通して学びの共有が図られました。

最後は、実際に地域包括ケアを実践されている、川根本町地域包括支援センター保健師の池本祐子さんから、事例に対して実際にはどのような対応を行うかについて、講義していただきました。

池本さん講義風景

Image3

Image4 

池本保健師さんから、「生活者本人がどんな生活を送っていきたいのかを引き出し、それを前提に支援していく」「対象者に一人ではないことを伝えることが大切」「実生活で地域包括ケアについての問題に直面した際にも、持ち合わせている知識をベースに、一生懸命に対象を理解して、問題を解決する方法をともに見出す力を深めてほしい」とお話しいただきました。

学生は、授業後の感想として「池本さんのお話から自分達では考えもしなかった新たな発見ができた」「できないことなどマイナス面に焦点をあてがちだが、強みを積極的に見つけ出して、想像力を働かせていきたい」「対象者の尊厳ある暮らしを守っていけるように、対象者に寄り添って、押し売りにならない援助が大切だと実感した」など述べていました。

 

3回にわたり「地域包括ケア看護論」について看護学部ブログで紹介してきました。今回の学びを活かして、「地域包括ケア」の視点から看護を実践することを大切に、次年度以降も学び続けて欲しいと思います。

文責:豊島由樹子

2020年12月16日 (水)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その2 「地域包括ケアをつくる“人とのつながり”」

10月に続き、11月の「地域包括ケア看護論」についてのご紹介です。地域包括ケアの基本的な考えや、地域で暮らす障がい者・児や認知症の方の生活について教員から学んだ後、6,7回目の授業では「地域包括ケアの実際」として、障がいをもつ当事者の方、そのご家族から、地域で暮らし続けることについて直接お話をうかがいました。

NPO法人地域支援ネット「ゆう」障害者指定居宅支援事業所の理事長である杉本和美さんから、「傷病を抱えながらの生活・社会活動」についてお話しいただきました。杉本さんは、事故により頸髄損傷となってからの当事者の心理、在宅での生活、障害の受容などについて体験を交えてお話しくださり、人生の先輩として思い悩むことの大切さについても教えていただきました。

ご自分の意志を強く持たれている杉本さんの生き方に感銘を受けて、学生達は誰にでも可能性があり病気や障害が妨げにはならないこと、相手を尊重して寄り添い、相手の立場にたって気持ちを汲み取ることからうまれる人とのつながりや社会とのつながりの大切さについて、学びを得ることができました。

 

授業風景  (杉本さん)

Image1

Image2

また、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ/たけし文化センター連尺町の理事長、久保田翠さんは、知的障がい者の息子さんへの自立支援活動から、知的に障がいのある人が自分を表現する力を身につけ、文化的で豊かな人生を送ることの出来る社会的自立と、その一員として参加できる社会の実現を目指す活動についてお話しくださいました。障がい者の存在や行為自体を「文化・芸術」として捉えて、人間が本来もっている「生きる力」「自分を表現する力」を見つめていく場の提供、障害のある人が街中で様々な人とのつながりの中でその人らしく生きていける生活環境づくりについてなど、これまでの障がいの捉え方を揺さぶられるようなお話でした。

久保田さんの「障害はその人についているものではない。私と貴方の関係の間にあるもの。」という言葉に、多くの学生たちは自分が障害という固定概念に囚われていたこと、自分では気づけなかった偏見や価値観に気づき捉え方が変化したと、講義後に述べていました。障がいの有無と関係なく、互いの可能性を認め合い、共生できるまちづくり目指すことも、地域包括ケアであるとの、幅広い学びを得ることができました。

 

授業風景 (久保田さん)

Image3_2

Image4_2

認定NPO法人クリエイティブサポートレッツのホームページのご紹介

・アルスノヴァHP

http://cslets.net/arsnova

・のヴぁてれび

https://www.youtube.com/channel/UCG-34arDueJ9Yep6vIYg8Mw

 

8回目の授業からは、事例を用いたPBL(Problem-based Learning:課題解決型学習)が始まります。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思います。

(写真掲載については許可を得ています。)

文責:豊島由樹子

2020年11月11日 (水)

“地域包括ケア看護論”の紹介 その1 「私の生活、暮らしを見つめる」

看護学部では、2019年度入学生から一部の教育課程が改定されています。その目的は、地域包括ケアシステムの推進に基づく社会の変遷にあわせた教育課程へと発展させるためです。

「地域包括ケア」とは、様々な発達段階、健康レベル、生活の場にある人々が、医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしく暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が包括的に確保されるという考え方です。そのしくみを「地域包括ケアシステム」といい、誰もが“自分のこと”“家族のこと”ひいては、そう遠くない“将来の日本のこと”として捉える必要があります。

2019年度入学生は、1年次に「地域看護学実習」で、各自治体における地域包括ケアの取り組みについて、地域のロコモーショントレーニング事業参加団体や高齢者サロン活動を行っている住民組織(グループ)に許可を得て参加し、地域で生活している人々の生活・生活圏をとらえて、高齢者の健康管理「自助」や住民相互の「互助」の効果を学び、健康との関連を考える実習を行いました。

そして2年次生になって、健康な対象だけでなく健康上のニーズを抱えながらも自分らしく地域で暮らし続けるための生活・支援について学び、地域に暮らす生活者の視点から看護の役割について考える科目「地域包括ケア看護論」が始まりました。

地域包括ケアの概念を学んだ後の2回目の授業は、「地域包括ケアの基盤である生活や地域で暮らすことについて、自分の言葉で考えてみる」を単元目的として行われました。

科目担当の先生から、履修生の皆さんに「地域に暮らす一市民として私の生活、暮らしを見つめ、考えてみよう」という課題が出され、近くの席の学生2~3人程度で15分ほど話し合った後、その内容をWebClass(本学が利用しているラーニング・マネジメント・システム)に提出してもらいました。

 

話し合い風景

Image1 

その後、提出された意見を、自然言語解析の手法を使って単語分割し、語句の出現頻度や相関関係をソフトを使って解析し、授業内で共有しました。

 

①あなたは今の生活をどのように感じてますか? …やはりコロナが生活の中心ですね。

 

Image2

②今住んでいる地域の暮らしを、どのように思いますか?

…暮らしやすいと感じている人と不便を感じている人がいるようですね。

 

Image3

先生からの講評

Image4 

各々の、ものの捉え方や考え方・態度は 家庭、学校、地域社会、文化、制度、経済状況などから学習したり規制を受けながら、自分の価値観を築き、自分なりのライフスタイル(生き方、生活様式)が作られていきます。人は社会との関わりの中で、その人特有のライフスタイルをつくり、習慣化された日常生活を営んでいます。人の生活や暮らし方、大切にしていることは、それぞれ異なっています。その1人1人の考えや価値観を大切にした「地域包括ケア」となっていくことが重要ですね。

 

「地域包括ケア看護論」は、他大学にない新しい科目です。本学の在宅看護学、老年看護学、公衆衛生看護学、精神看護学、成人看護学、小児看護学、母性看護学から教員が集まり、「地域包括ケア」において今後、社会を支えていく学生さんにとって必要な内容を吟味精選して科目を構成しています。今後も「地域包括ケア看護論」の取り組みについて報告していきたいと思っています。

 

文責:豊島由樹子

2019年1月28日 (月)

インフルエンザを吹き飛ばせ!

介護付き有料老人ホーム浜松ゆうゆうの里での16N生老年看護学実習風景です。

実習最終日に、学生たちが利用者さんたちに感謝を込めて、レクリエーションを実施します。

1月24日は、玉入れゲームをし、USAを歌って踊ってきました。

1

Photo

踊ってばかりいるわけではありません。

午後は、ドキドキの最終カンファレンスです。

みんな真剣な表情で、自分たちが考えた看護過程の評価と学びを発表しました。

Photo_2

Photo_3

Photo_4

臨床指導者様にも教員からも、温かく、優しくご指導いただきました。

実習は、無事に終了できました。

利用者のみなさん、ありがとうございました。

インフルエンザに負けず、お元気でお過ごしください。

2018年1月31日 (水)

【老年看護学実習Ⅱ報告】 高齢者施設でアクティブラーニング!

老年看護学実習Ⅱでは、特別養護老人ホーム浜松十字の園、老人保健施設三方原ベテルホーム、介護付き有料老人ホーム浜名湖エデンの園、介護付き有料老人ホーム浜松ゆうゆうの里の4施設で実習を行っています。

 

実習では、認知症やさまざまな障害をかかえる高齢者を受け持ち、その人の生活機能をアセスメントしながら持てる力を引き出し、その人らしい生活が送れるようにするための看護過程を主体的に考え、高齢者の尊厳やエンドオブライフの質について学びを深めます。

また、生活の場である高齢者施設での医療職の役割を学びます。

 

2018年新年早々、浜松十字の園でも1グループ実習が行われました。最終日には、学ばせていただいた感謝の気持ちを込めて、学生によるレクリエーションを行いました。内容は、風船バレーと「雪やこんこ」の歌のプレゼントです。

学生の強み(?)も活かして、ウクレレの演奏とバトントワリングも披露しました。

入居者のみなさんは、とても喜んでくださいました。

1

作成:老年看護学 大村光代

2017年6月 9日 (金)

高齢者との貴重なかかわり

こんにちは。

老年看護学担当の教員です。

今回は、「グッときた高齢者の言葉」についてお伝えしたいと思います。

 

前置きになりますが、

少し前に九州へ行って参りました。

目的地は鹿児島県知覧町(現南九州市)にある「知覧特効平和会館」です。

知覧特効平和会館には、第二次世界大戦末期の沖縄戦において、特攻作戦で亡くなられた陸軍特別攻撃隊員の資料が保存・展示されています。

Photo

「特攻」とは「特別攻撃隊」の意で、パイロットが爆装した飛行機もろとも敵艦に体当たりする攻撃のことです。

第二次世界大戦末期、戦況の悪化に伴い、20歳前後の若い特攻隊員1,036名が出撃し、沖縄周辺洋上で戦死しました。

中には16歳の少年特攻隊員もいたそうです。

この知覧からも439名が出撃しました。

Photo_2

わずか71年前にこのようなことが現実に起こっていたとは、とても信じられません。

20歳前後ですから、学生さんと同じ年頃の方々の身に起こっていたのです。

時代とはいえ、何ともやりきれない気持ちになります。


3_2

先日、高齢者に「戦争体験」についてお聴きする機会がありました。

「あの時代(戦争の時代)からすると、今の平和や豊かさは信じられない・・・」

「本当に大変な時代だった・・・」などなど

私たちの想像に及ばない大変な思いをされたことでしょう。

 

でも、最後にこうおっしゃったのです。

「大変な時代だったけど、あの経験(戦争体験)が無ければ良かった、とは思わないの。貧しい時代で辛い思いを沢山したけれど、得られたものもあったわ。今の私があるのは、あの経験があったからこそなのよ。」

 

静かな中に高齢者の力強さを感じました。

 

さまざまな経験を経てこられた高齢者の言葉には重みがあります。

老年看護学実習では、人生の先輩

である高齢者とのかかわりを通して得られるものが多くあります。

老年看護学実習は、皆さんの人間性を豊かにする経験が待っていると思います。


4

     資料:鹿児島県南九州市 知覧特効平和会館 http://www.chiran-tokkou.jp/

2017年1月31日 (火)

3年生 老年看護実習 頑張りました!!

_1

_2

2016年10月25日 (火)

実習の準備 

こんにちは。10月になり3年次生は領域別実習が始まりました。

今日は、老年看護学実習について、少しご紹介します。

聖隷クリストファー大学看護学部の老年看護学実習では、聖隷の歴史ある高齢者施設で実習をしています。

実習では高齢者看護の実践を学ぶことはもちろんですが、こうした施設の歴史ある高齢者ケアの歩みを肌で感じながら、日本の高齢者ケアについて振り返る機会にもなります。

実習では認知症を抱えた高齢者やそのご家族との出会いがあります。ご存知のとおり日本は超高齢社会になりました。年を重ねること、また、認知症を抱えながらの生活は、看護学生にとってまだ経験したことのない世界です。

今日は、こうした認知症高齢者の生活を知るヒントになりそうな書籍を少し集めてみました。

専門書以外でも、最近はこうした書籍などを通じて少しずつ認知症の方からの声が発信されることが増えましたね。実習前に少しでも触れておくとよいと思います。

実習で出会う認知症を抱えた方とそのご家族の声を大切に学んでいきましょう。

Photo




2016年7月 1日 (金)

老年看護学実習Ⅱ

こんにちは。今回は、3年生秋~4年生春に行う老年看護学実習Ⅱの様子を一部、お届けしようと思います。

老年看護学実習Ⅱでは、高齢者施設で実習をさせて頂いております。生活の場で、ひとりの対象者に3週間の実習を通して寄り添い、ケアを考え、看護展開をしていきます。

Photo_9

 写真は、施設でのカンファレンスの様子です。カンファレンスでは、受持ち対象者の看護展開について報告・ディスカッションをし、施設の看護職員さんからもフィードバックを頂きます。しっかりと記録をすることはもちろん、言葉にして看護展開を伝えることは難しいですが、力をつけていきます。施設でのカンファレンスは緊張しますが、真剣に取り組んでいます。

Photo_7

 レクリエーションの前日の様子です。実習の終盤には、学生企画のレクリエーションを行います。実習を通し、長い時間寄り添ってきた高齢者のことを思いながら、ともに過ごした仲間と協同して企画をします。

Photo_8

企画・準備等、大変でしたが、レクリエーション本番では、参加者皆さんに関心を寄せていただけました。高齢者の方々は、学生の頑張りを敏感に察知なさいます。参加された方に喜んでいただけると、私たちも嬉しくなります。

看護師の活躍の場は様々ですが、どこであっても、高齢者の看護にあたる時、実習の学びを活かして頑張っていってほしいです。

3週間、お疲れ様でした。

 

※写真の掲載は、学生の皆さん、施設の職員の許可を得ています。

2014年7月 4日 (金)

老年看護学における演習の風景

老年看護学では、高齢者施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、有料老人ホームなど)で実習します。

実習前には、老人体験スーツを身につけ、実際に腰が曲がった状態で杖を使ったり、目の見えにくさ、耳の聞こえにくさなどをつくりだし、高齢者疑似体験の演習をします。

Photo_6高齢者の疑似体験を通して、加齢による体の変化や気持ちを理解し、食事や入浴など日常の生活を体験することで生活への影響を学びます。

また、援助者はどのようにしたら高齢者の持てる力を引き出し、どのようにしたら安全を守る支援ができるかを考えます。

Photo_7

Photo_13

Photo_12

この演習を通して高齢者への理解が深まり、老年看護への興味・関心が広がります。

そして、実習では学生がひとりの高齢者を受け持ち、日常生活の援助等を実践し、温かいふれあいを通して看護の学びを深めることができるのです。

 

以上、今回は老年看護学における演習風景の一部を紹介しました。

機会があれば、実習の風景も紹介していきたいと思います。

※写真の掲載は、学生の皆さんの承諾を得ています。