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2018年4月

2018年4月27日 (金)

「選ばれし者」

2018年度は、看護学部174名、社会福祉学部63名、リハビリテーション学部111名、助産学専攻科17名、大学院博士前期課程24名、博士後期課程12名の新入生を迎えました。新入生の皆さんが、保健医療福祉の未来を担い、聖隷の歴史と伝統を継承し、また自らの手によっても新たな歴史を創り上げていかれることを祈念いたします。

4月5日に挙行した入学式での学長式辞を掲載いたします。

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本日ここに、聖隷の精神と歴史をつなぐ、新入生の皆さんを、私たち聖隷クリストファー大学に迎えることができ、喜びと感謝の念に堪えません。401名の新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。皆さんの入学を心より祝福し、歓迎を申し上げます。そして、これまで皆さんを支え、この晴れの日をお迎えになった、ご家族の皆さまにも、お祝いと感謝の気持ちをお伝えします。また、本日ご多用のなかご臨席くださいました、ご来賓の方々に、心よりお礼を申し上げます。今後とも、保健医療福祉の未来を担う、学生へのご支援をお願いいたします。

本学は、1949年の開学以来、キリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」を建学の精神として、保健医療福祉の人材養成に努めて参りました。今日では、看護学部・社会福祉学部・リハビリテーション学部の3学部と助産学専攻科、そして大学院博士前後期課程をも有する保健医療福祉の総合大学に発展しています。新入生の皆さんには、本学の恵まれた教育・研究と実践の環境を主体的に活用し、建学の精神に裏付けられ高い知識と技術を有する保健医療福祉の専門職業人に成長されますことを期待いたします。

さて、新入生の皆さんには、この入学式にあたって、私たちに与えられた3つの使命を、心に留め置いていただきたいと願います。

1つ目は、本学の建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」についてです。

まず皆さんには、聖隷の歴史は、「愛」の実践から始まったことを知ってほしいと思います。1930年、聖隷の事業は、当時まだ不治の病で、感染の恐怖から家族からも見捨てられ、住むところもなく、食べることもできなくなった結核病患者の方々と、共に生きることから始まりました。その運営は、筆舌に尽くせない迫害と困窮・困難を極めるに至ります。しかし、そのような中にあっても、先人はまさに聖なる神様の奴隷として、自らのすべてを犠牲に、一人ひとりの患者さんに愛を尽くされました。本学で学ぶ私たちは、先人が身をもって示した、この自己犠牲に基づく「隣人愛」の精神を深く理解し、実践できるよう努めていかなければなりません。しかし、利己心を超えて、隣人に尽くすことは決して容易なことではありません。されど、先人の生き方から自分自身の生き方を学び、隣人に労を厭わず愛を尽くすように努めていくことで、「隣人愛」を生きる人間に、自分自身を造り上げていくことができるでしょう。

2つ目は、保健医療福祉の専門職業人としての使命についてです。

本日皆さんは、「保健医療福祉の専門職業人プロフェッショナルになる」という明確な目標と、貴い使命を心に抱き、今日の日を迎えられました。人々の生命と生活を守り支える皆さんの使命は、価値高く献身に値するものです。しかし、プロフェッショナルには、学修者としての謙虚さと意志の強さ、専門職業人としての責任と社会性と倫理性、そして専門的な知識と技術の修得が必要です。その道は決して平坦ではなく、多くの困難や挫折があり、また長い道のりでもあります。しかしまた、プロフェッショナルとして、自分自身の能力を長期的な視点で開発していく道こそ、私たちは大切にしなければなりません。皆さんが、今日この場合の初心を深く心に刻み、生涯にわたる自己研鑚の道を歩まれることを願います。

3つ目の使命は、自己成長に対する責任についてです。

自己の成長は、自らに、その責任を負わなければなりません。皆さんには、失敗を恐れず、果断に挑戦する勇気をもってほしいと願いします。挑戦することは、必ずそこに苦しさや辛さ、悔恨の思いに打ちひしがれることもありましょう。しかし、その苦い経験の中から、成長を汲み出すことができると思います。私は、人間の弱さの中にこそ、真の人間の強さを見いだすことができると信じます。皆さんが試行錯誤を楽しみ、日々悩み、今日は昨日でない自分に、明日は今日でない自分に、自己成長されることを期待いたします。

本学は今、アジアを中心とした大学や研究機関との交流を促進し、グローバル化の発展に挑戦をしています。本年度も、中国とベトナムからお二人の留学生を迎えました。お二人の勇気ある挑戦を讃えたいと思います。

Ms. Nguyen Thi(グェン・ティ)and Ms.Yang(ヤン), welcome to Seirei Christopher University. I'd like to express my great pleasure and honor for your decision and courage to try overseas study at our university. I sincerely hope for your success and your country's success through these studies and experiences. Also, I hope you'll become a bridge between our countries.

さて大学院入学の皆さん、皆さんには、より高度の専門的知識と技術の修得を目指されます。ソクラテスは、「真の賢者は、己の愚(おろかさ)を知る者なり」と言います。皆さんは、自らの無知を自覚する謙虚さと、知を探求する真摯さを持った「philosophia(知を愛する人)」であると言えましょう。また、トマス・アクイナスは、「知識があっても、その用い方を知らなければ、不十分な知識をもっているに過ぎない」と言います。大学院生の皆さんが、新たな知の創造と技術の開発を目指し、また高い倫理性を備えた高度専門職業人、研究者・教育者に成長されることを願います。

結びに、イエス・キリストが最後の晩餐で、弟子に語った言葉を引用いたします。

『あなた方が、わたしを選んだのではない。わたしが、あなた方を選んだのである。それは、あなたがたが行って実を結び、その実がいつまでも残るためである』。

新入生の皆さんが、選ばれし者として、「隣人愛と知の技」を磨き、人々を安寧と幸福に導く「現代のクリストファー」に成長されますことを祈念いたします。

皆さんの挑戦する勇気と、困難に立ち向かう力を祝します。

2018年4月5日

聖隷クリストファー大学 学長

大城昌平