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2017年4月10日 (月)

「現代のクリストファー」への成長を祈念して

 

 この度、大学学長に就任いたしました 大城昌平 です。この学長歳時記は、大学の時々の様子や、学長としての大学運営、学生教育などへの考えについて紹介させていただきます。お楽しみにいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 

本学は、建学の精神であるキリスト教に基づく「生命の尊厳と隣人愛」の遵守・継承を基本に、保健医療福祉の専門職業人を育成することを通して、人々の健康と幸福、そして地域と世界の福祉に貢献します。2017年度は、看護学部・社会福祉学部・リハビリテーション学部・助産学専攻科の学生367名(うち3名編入学)と、高度専門職業人並びに研究者を目指す博士前期・後期の大学院生34名の新入生を迎えました。聖隷クリストファー大学・大学院入学式における学長式辞「現代のクリストファーへ」を学長歳時記第1号として掲載します。

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1926年、「聖隷」の歴史は、始まりました。そして、90年を経た本日、聖隷の精神、歴史、伝統をつなぐ、新入生の皆さんを、私たち聖隷クリストファー大学に迎えることができ、喜びと感謝の念に堪えません。401名の新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。教職員・在学生並びに卒業生を代表して、心よりお祝いと歓迎を申し上げます。また、これまで皆さんを支え、この晴れの日をお迎えになった、ご家族の皆様にも、お祝いと感謝の気持ちをお伝えします。そして、本日ご多用のなか、ご臨席くださいました、ご来賓の方々に、心よりお礼を申し上げます。今後とも、保健医療福祉の未来を担う、学生の成長を見守り、ご支援くださいますようお願いいたします。

 

戦後1949年、創立者である長谷川保は、我が国の戦後復興には、保健医療福祉を担う人材養成が欠かせないと考え、今日の教育事業の出発点となる「遠州基督学園」を設立いたしました。以来、本学は、建学の精神であるキリスト教精神に基づく「生命の尊厳と隣人愛」を教育・研究・諸活動の中心に置き、今日まで発展してきました。今日では、創設以来、約12,000名の卒業生を輩出し、また大学院博士後期課程をも有する、我が国有数の保健医療福祉の総合かつ先端大学に進展しています。皆さん、今日から、聖隷クリストファー大学の一員として、これまで先人が築いてきた聖隷の精神、歴史、伝統を継承し、新たな歴史を一緒に作っていきましょう。

 

さて、本日の入学式にあたって、皆さんには、私たちの3つの使命について考えていただきたいと願います。

 

1つ目は、本学の使命についてです。

本学は、キリスト教に基づくミッション・スクールです。ミッションとは「使命」という意味のほか、「伝道する」「道を伝える」という意味があります。聖書のなかの福音に、イエス・キリストが最後の晩餐の場面で弟子に語った言葉があります。『あなたがたが、わたしを選んだのではない。わたしが、あなたがたを選んだのである。それは、あなたがたが行って実を結び、その実がいつまでも残るためである』という言葉です。私たちは、選ばれしものとして、建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」の「道を伝える」という使命があります。

1930年、創立者である長谷川保らは、当時まだ不治の病で、感染の恐怖から家族からも見捨てられ、住むところもなく、食べることもできなくなった結核患者の療養施設を始めました。しかし、その運営は、筆舌に尽くせない迫害と困窮を極めるに至ります。そのような中にあっても、長谷川保らは、自らの命をかけ生活のすべてを犠牲にして、患者さんの苦しみや悲しみを背負いながら、療養と命の尊厳を守り、そして死に向かう患者さんの手を握って祈りを捧げました。まさに、聖なる神様の奴隷として、「隣人愛」に生きた、生き方でありました。私たちは、この実践に基づく「生命の尊厳と隣人愛」を精神の支柱として、苦しみや悲しみの中にあって、私たちを必要としている人々と共にあらねばなりません。皆さんには、日々の学修の中で、「生命の尊厳と隣人愛」を常に座右に置き、人生における、その尊い意義を覚えられることを願います。「自分のように、あなたの隣人を愛しなさい(聖書)」。

 

2つ目は、保健医療福祉の専門職業人としての使命についてです。

少子高齢化、疾病の多様化、社会システムの構造変化が進展する現在において、保健医療福祉に携わる私たちへの期待は大きく、また複雑多様化しています。そのような中にあって、人々の生命、生活、尊厳を守り支える私たちの使命は、大変意義深く献身に値するものであります。その使命を果たすため、私たちは、建学の精神に裏付けられた人間観の上に、教養と専門分野の知識・技術を修得しなければなりません。その学びの過程は、決して平坦ではないでしょう。しかし、その道のりは、対象者を希望に導くとともに、あなた方自身の喜び、生きがい、幸せを見出す、自分だけのかけがえのない道であると信じます。皆さん、私たちに与えられた、この尊い使命を自覚し、生涯にわたる自己研鑚の旅路を一緒に歩んでいきましょう。私たち教職員も、皆さん一人ひとりに尽くす教育を行なうことを誓います。

 

大学院生の皆さんは、より高いレベルの専門性を極めるため、現在の課題を研究し、より高度の知識・技術の修得を目指されます。それは、「philosophia」、すなわち「知を愛し求めること」にほかなりません。ソクラテスは、『「知を愛し求める者」というのは、まだ知識をもっていない。もっていないからこそ、ひたすらそれを愛し求めるのだ』といいます。知識を得ることは、同時に、無知を自覚することでもあります。そして、知識を得たいという基本的な人間欲求が、科学革命、文化の発展を導きました。大学院生の皆さん、高度専門職業人、研究者として、倫理性、科学性、そして奥深い学識を身につけ、また知の探求者として、新たな知を創造されますことを期待いたします。

 

3つ目の使命は、自己成長に対する責任についてです。

自己の成長は、自らに、その責任があることを自覚しなければなりません。今日ここに、真に志を立てましょう。そして、失敗を恐れず、あきらめない心で、果断に挑戦する勇気をもってください。未来ある皆さんにとって、最大の失敗は「失敗を恐れて、ただの傍観者になる」ことです。皆さんの未来は、皆さん自身の手中にあります。

 聖隷の歴史も、人々の助け、社会の必要に果敢に挑戦する、改革の歴史でもありました。本学はこれから、保健医療福祉の先端大学として、アジアを中心とした国々と人々に、積極的に国際貢献することにチャレンジしていきます。本年度は、ベトナムから大学院生を迎えました。短いメッセージを送ります。

 

I’d like to express our special and warm welcome to Ms. Vu Van Thanh. I am sincerely looking forward to you and your country's success. I hope you’ll become a bridge between our two countries: Japan and Vietnam.

 

皆さんにも、この地域を基盤にして、世界とのつながりをも視野に入れた、高き夢をもって欲しいと願います。

 

最後に、皆さんの学びが実り多く、そして隣人愛と知の技で、人々の生命の尊厳、安寧と幸福を導く「現代のクリストファー」へ成長されますことを祈念いたします。

 

私たち教職員は、いつも皆さんと共にあります。「安心して、行きなさい」

 

2017年4月5日

聖隷クリストファー大学 学長

大城昌平